「なにを撮っても映画になりますよという天才監督の確信。」レット・ゼム・オール・トーク 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
なにを撮っても映画になりますよという天才監督の確信。
主演はメリル・ストリープ、キャンディス・バーゲン、ダイアン・ウィーストの大ベテラン三人と、中堅ジェンマ・チャンに若手のルーカス・ヘッジズ。ほかにも出演者はいるが、ほぼこの5人の物語であり、大筋は5人が豪華客船に乗って大西洋を横断する、というだけ。撮影隊はなるべく小規模にして、実際の旅客たちに混じってほとんどクルーズ旅行をしているように映画も撮ってしまったのだという。
船内の移動撮影は撮影監督でもあるソダーバーグ自身がカメラを持って(クレジットの名義はピーター・アンドリュース)、車いすに乗ってやったらしい。そんなミニマムな撮り方が似合う会話劇だが、ひとつひとつのショットが小憎たらしいくらいにキマっていて、センスの塊ですなあとシャッポを脱ぐしかない。
無駄を省いて効率よく映画を撮る名人であるソダーバーグが、もはやどんな実験的なやり方でも格調のある作品が作れてしまうという証明であり、デッドパンなブラックコメディとしても秀逸。
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