「沈黙の中の真実とは」沈黙のパレード bunmei21さんの映画レビュー(感想・評価)
沈黙の中の真実とは
東野圭吾原作のガリレオ・シリーズ『容疑者Xの献身』『真夏の方程式』に続く、映画化第3弾。原作は単行本発刊当時に既読。原作では、アメリカ帰りの湯川先生という設定だったが、本作ではそこは省略。久しぶりに今回の殺人事件をきっかけに、内海と草薙との再会、復活という設定でスタート。
本作は、我が郷土静岡県の牧之原市が舞台ということで、近くにもエキストラとしてたくさんの人たちが参加したようだ。このところ牧之原市は、いい意味でも、悪い意味でも全国ネットになっている…。但し、本作の前半部でのフェスティバルのシーンは、後半の謎解きに必要とされるシーンではあったが、あまりに尺を取り過ぎていたし、わざとらしい演出に、正直、ウザさも感じた。
物語は、15年前に遡り、幼女殺人容疑者として逮捕した男が、黙秘を続けた結果、無罪となって社会に放たれた。それを担当した刑事が草薙。そして今また、高校生の少女が、放火されたその男の実家の中から白骨遺体で発見された。当然、警察はその男の逮捕に出るが、またしても、証拠不十分で釈放となる。しかし、その男はその後、死体となって発見される。殺された高校生の少女への無念さが募る家族、彼女をよく近所の知人、恋人、そして彼女の歌のレッスンの先生等を巻き込んで、少女殺害の真相と、容疑者の男を殺した犯人を、湯川先生が炙り出していくサスペンス・ミステリーとして仕上げている。
湯川先生も准教授から教授となり、エンドロールに流れた、これまでのシリーズの映像に比べても、確かに年月の経過を感じるし、湯川先生も歳は取った。それと同時に、物理バカだった湯川先生が、人の揺れ動く心情に寄り添えるような、人間味が増した推理で、二転三転していく真相に迫っていくのが、本作の面白さとも言える。それは、草薙が担当した15年前の事件へのジレンマや苦悩を知る湯川が、友として草薙を救おうとする気持ちを、背景に描いているからなのだろう。
とは言え、相変わらず、湯川役の福山雅治は、冷静に状況を分析し、何度も覆される真相に、あくまでもクールにメスを入れていく。内海役の柴崎コウとは名コンビも復活し、草薙役の北村一輝とも息の合った安定感のある演技を見せている。また、檀れい、椎名桔平、戸田菜穂、吉田羊となかなかの豪華メンバーが脇を固めているのも、本シリーズの重みを感じさせる。
そんな中でも、異彩を放ったのが、ずんの飯尾和樹。普段は、「忍法、メガネ残し」で、思わず苦笑してしまうギャグに、ホッコリさせてくれる芸風の彼だが、本作では、殺された少女の父親役として、終始眉間に皺を寄せ、苛立ち、怒りを内に秘めた演技で、そのギャップに驚かされた。なかなか渋い演技で役者・飯尾和樹の新たな一面を魅せてくれた。
原作を読んでない方には、意外性のある真相へと流れるだろう。しかし、今ひとつ個人的には感情移入ができなかった。それは、被害者となった人々が抱いた、犯人に対する殺意や執念、そして草薙の想いが、真相が二転三転し過ぎるあまり、最後には、やや分散してしまう展開であったからなのだろうと感じた。