「ガリレオだけど、ガリレオじゃない…」沈黙のパレード おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
ガリレオだけど、ガリレオじゃない…
テレビドラマで人気を博した「ガリレオ」の劇場版第3作。過去2作は未鑑賞、原作も未読ですが、テレビドラマは以前に何話か観たことがあり、天才物理学者・湯川学の鮮やかな推理と個性的なキャラが魅力の大好きな作品の一つです。そんな「ガリレオ」の久々の新作ということで、期待を高めて鑑賞してきましたが、正直言って思ったほどではなかったです。というか、イメージとちょっと違いました。
ストーリーは、数年前に菊野市で行方不明となった女子高生の白骨死体が発見され、かつて少女殺害事件の容疑者で無罪となった蓮沼が捜査線上に浮かぶものの、彼もまた菊野市で死体となって発見され、内海刑事の捜査協力要請を受けた湯川教授が事件解明に挑むというもの。
冒頭、女子高生の並木佐織が圧巻の歌声を披露し、彼女を取り巻く人々が紹介されたところで時間が現在に戻り、捜査会議のシーンで今回の事件のあらましが語られます。主要人物と舞台背景の紹介をコンパクトにまとめた、上々の立ち上がりです。特に、佐織役の川床明日香さんの歌声のインパクトが絶大で、一気に引き込まれました。
その後、捜査協力を求める内海刑事の前に、満を持して湯川教授登場!柴咲コウさんや北村一輝さんが相応に歳を重ねてきたことが窺える中、福山雅治さんの昔と変わらぬ容貌に驚かされます。一方で、昔と変わらぬめんどくさい性格が垣間見え、そうそうこれこれといった感じでホッとします。(とはいえ、エンドロールで流れた昔の映像を観ると、福山さんもけっこう変わっていましたね。)
そして、容疑をかけられながらも証拠がなく釈放された蓮沼が、佐織の実家の料理店に現れ、ふてぶてしく絡んでから殺されます。このあたりの村上淳さんの演技はさすがです。舞台も温まり、さあここからガリレオの本領発揮…といきたいところなのに、なぜかテンポが上がりません。今回の事件を考えればしかたないのかもしれませんが、終始鬱屈とした雰囲気が流れ、今ひとつノリきれませんでした。加えて、見どころの科学的検証も何だかなーといった感じで、「まさかそんな方法で!」という気持ちになれませんでした。
本作は、被害者である佐織を想う人々が織りなすヒューマンドラマといった感じで、その点においては重厚な仕上がりになっていたと思います。ただ、自分のようにミスリードやどんでん返しや巧妙なトリック等を期待して観ると、やや物足りなさを感じてしまうかもしれません。次作は、人間よりも事件そのものに興味を抱き、物理学の知識と鋭い洞察力を駆使して、鮮やかに謎を解く湯川教授の活躍を期待します。