流浪の月のレビュー・感想・評価
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逃避行
映像がとても美しく、空、水、窓の外の光が素晴らしいです。カフェもおしゃれです。ただ、ちょっと雰囲気で押し通している感じがしました。リアリティには欠けています。
いたずらをされて、それを言い出せないのはよく分かります。一方で、知らない大人の男(20歳未満でも)に付いて行ってしまったり、ずっと一緒に暮らしたいと言うのはかなり大胆な行動です。
大好きなお兄さんが逮捕されたなら、大人びた10歳の子は釈放されるように証言しないのかな。
ラストは、そういう生き方もあるかもしれませんが、決断したというより、現実から逃げていると感じました。大切な人を守りたいなら、周囲に理解してもらう努力はすべきです。(わかってもらえないとしても)
社会と完全に関係を遮断して生きては行けません。店長の言葉に耳を傾けて。
内田也哉子さんは浮いていました。
――――5/25追記――――
もう少し書こうと思うので、ネタバレにします。
本作には、誘拐事件の加害者と被害者との間に恋愛感情、一般的には歪んだ関係、はあり得るか、というテーマがあります。
私は文と更紗のような愛もアリだとは思います。
ただ、そもそもなぜ二人が加害者と被害者の関係になってしまったのかというと、どうせ周囲は分かってくれない、という考えで、説明して助けを求めなかったからです。
文も更紗も不器用で、誤解されてしまいますが、自分は誤解されても良いとしても、相手まで世間から白い目で見られることになっても良いのでしょうか。
また、二人とも愚かではないのに、キャラクターと行動が結びつかないように思いました。
タイトルなし
私はキャスティングを知ってから原作を読んだ。
そこで文をすごく愛おしく思ったから
松坂桃李演じる文が好きだと思っていたけど
そうではなく、原作の文が好きなんだなと思った。
映画を最初にみてたら
どんな写りだっただろう。
原作を読んでいなければ
知らない設定は多かったように思う。
けれどちゃんと伝わったのだろうか。
私はどうしても幸せ。
幸せだと感じているし
幸せだと思って生きてきた、いる。
それにより理解できない人がいること。
理解しようとすると幸せといえなくなるかもしれないこと。
ただ、
そうやって
知れること、知ったことが寄り添ったと感じること。
覚悟。役。
嘲笑いバカ笑いなんて大嫌い消えろ
誰にも言えないものを抱えた人間を抱えきれるだろうか、その人として生きられるだろうか。
類は友を呼ぶ。
相手も自分と同じだと思う。
相手も自分と同じであってほしい、
共感。してほしい、
仲間意識。
だから
自分と似たような人と関わる。
ふみとさらさのような関係の相手がほしい
というのは
男女ではない、その人がいるだけで落ち着く存在が。
けれど思った以上に残酷な感情なのかもしれない。
羨ましいのだすずちゃんが
横浜くんだとわかったときからトプ画にしていたと言っていたけど
私も?松坂桃李の声を聴くと反応してしまうようだ
今のところ今年1番
文を軸とした物語も観てみたいと思った。それほど松坂桃李の演技が光る。ほとんど表情に変化のない役であるためか、控えめで抑えに抑えた無駄のない演技。それでも惹きつける魅力を出せるのは凄い。
相手役として存在感を出してはいるが、主役の広瀬すずを食ってもいない。そこが松坂桃李の演技の上手さが光る所以だろうか。
広瀬すずもよかった。体当たり演技と言えばよく聞く言葉選びである。あるシーンでの、感情の変化が一瞬で目に出た瞬間がとても印象的だった。彼女にああいう一瞬を創れる実力があるとは。若く清潔感ある女優として世に知られる彼女がこんな表現ができるのかと驚き、甘く見ていた自分の見る目のなさを実感。
映画の題名のみでこの映画を選び、原作を知らず空っぽの状態で鑑賞。それもこの映画を観るにあたって新鮮な感情を持つことが出来たのも後になってみればよかったと思う。
色んな角度から観ることが出来る内容である。みんな間違ってないけれど間違ってもいる。あって当然だが無くても当然。鑑賞中主役の感情にどっぷり浸かる時もあれば他の役の感情に同調したり、客観的にもさせてくれる。立場の違う人間の感情のスイッチングもなかなか楽しいものであった。
素人のおこがましい感想だが、演出やカメラワークもよかった。普段あまりカメラワークに気を取られることは少ないが、この映画は上手いなと感じた場面がよくあった。
少し、話を掘り下げて欲しかった部分もあるにはあるが、原作を読みたくなる魅力の一つとして前向きに捉えたい。
内容が内容なだけに、そして松坂桃李の演技によって今年1番の映画になりそうな予感。
美味しい珈琲店の光と影
2020年本屋大賞を受賞した凪良ゆうのベストセラー小説ということでしたが、途中までは主人公たちの最悪の状態に向かうだけの行動やSNSや週刊誌を通じた世間の反応にイライラさせられっぱなしでした。「なんだこの映画は!」というのが途中までの感想でした。ところが終盤になって松坂桃李の演じる主人公の心の傷が明らかにあると一転。見事な傑作でした。ある事件に巻き込まれた少女が成長した姿を広瀬すず演じますが、彼女の心の傷は観客の前に早くから提示されます。
一方の松坂桃李の終盤に明らかになる秘密は、深く彼を傷つけ、何日も眠れぬ夜を過ごさせ、人生に絶望させていたのだということに気がつきました。なぜなら松阪桃李や広瀬すずの心の傷は筆者自身の心の傷と同じなのだと気づかされたからです。これまで真剣に向き合ってこなかった劣等感。神様だけがご存知の誰にも知られたくない秘密。他人事ではなく自分自身を見つめ直すきっかけとなる映画でした。それだけでも傑作に値します。
松坂桃李は骨董屋の2階で雰囲気のあるカフェを営んでいます。自家焙煎の一杯ずつ丁寧に入れるネルドリップのコーヒーは1杯650円らしいです。食べ物やお酒は出さない店で10席ほどの小さなスペースです。これでは経営はかなり厳しいはずなんだけれど…。映画は光と影を巧みに用いていますが、広瀬すずが初めてそのカフェのコーヒーを飲んだ時に顔がパッと明るくなります。ああ、美味しいコーヒーなんだと何故か安心させられました。
主演、白鳥玉季。
白鳥玉季、どんどん良くなっていく、、、
右肩上がりがすぎる。
昔から彼女の演技は引き込まれるものがあったが、最近どんどんそのレベルが増している気がする。
ワンカットワンカット、伝わることが多すぎる。
李相日監督ということもあってか、技法のくどさやカット割りの多さは気にはなったけど、ロリコンという感覚、異常だと思わせるような演出には脱帽。
これみてしまうとみんな白鳥玉季が好きになる。ロリコンの感情が怖いくらいわかる。
1つの表情から得られる感情がいくつも湧き出てくる、、さすがとしか言えない。
広瀬すずも松坂桃李も良かった。広瀬すずは結構際どいシーンが多く、隣にいた家族はどういう感覚で見ていたのか気になった笑
柄本明のシーン、良かったんだけどあの意味は?アイスのカップがあれだったんだろうけど?あそこもう少し表現して欲しかったな。柄本明それ以降出てこないし。
ストーリーは結構無理があると思うのと、いらない部分が多かったかな。横浜流星のシーンはもう少し少なくてもいい気がした。長いので。
総じて、映像と間で感情を伝えるということのお手本のような作品でした。
涙なしには、、、
作為感のある不幸の寄せ集め
事件の裏、心の叫び
何て書いたら良いのだろう…男の人は偶然連れて帰った女の子に癒されて良かったね。女の子もその人の前では自由奔放に振る舞えて良かったね。でも、それは世間では犯罪って言うんだよ。誰にも分かってもらえない。切ないなぁ…
7月13日
小説完読後、2度目の鑑賞。
この作品は映画→小説→映画で完結する。小説を読んで臨むことで視点や視野が広がったり変わったりする。
李監督映画の泣きどころ
「悪人」深津絵里がクリスマスケーキの残りを食べている場面。
「怒り」広瀬すずがボコボコにされ、ラストで呻いているところ
「流浪の月」更紗がボコボコにされて街中を文を求めて彷徨う場面。
「怒り」以外は2回見て同じ場面で泣かされた。
番外編「JOKER」主人公が逮捕されパトカーの上に担ぎ出される場面。
開始5分で演出・脚本がダメだと分かる
冒頭、ファミレスで男子高校生グループが事件映像を動画サイトで観ながら「やばい!」だの「洗脳されてるじゃん!」だの盛り上がっている横を当事者であるバイトの広瀬すずが通り過ぎる。
どうやったら大昔の事件映像にあそこまで熱いテンションになれるのか。それもタイミング良く。
ありがちすぎる演出に嫌な予感がしつつ幕が上がるのだが、その後も登場人物はやたらと泣き叫び、悲しい場面では悲しい音楽が大層に流れる、といった説明くさいうえに陳腐な演出が続き、終始イライラさせられる。
せめて2時間に収めるべきだし、収められる内容だろう。
ストーリーはとても惹かれるもので、未読ながら原作は面白いのだろうと思う。
撮影も良く、映像には引き込まれるところがあった。
そのおかげで本作は映画として「良作」に見える仕上がりにはなっている。
特にサラサがフミの現在を知って嬉し泣きしながらひとり夜道を歩くシーンは屈指の名場面と言える。
良いところはいくつもあり、画力に引っ張られて退屈せずに観られるものの、先述のダメ要素が映画の格を著しく下げており、傑作とは到底言えない出来になっている。
極上の素材を平凡にしか料理出来なかった残念な作品でした。
自由をくれた人
広瀬すずと白鳥玉季、最高傑作
とって良かった!
映画らしい映画で、とても間が良い。セリフの無い所がとても良い味がある。「ながら」視聴では伝わらない。とても好き。
ストーリーも良かった。こういう話かな、、と思ってはいましたが、それでもどうなるのか最後まで分からなかった。最後に、そういうことかー、切ない。
ストーリー上でも重要なロリコン描画があります。日本の映画でR指定なしではこれが限界かもしれないけど、なんともセクシーなシーンがあり、とても絶妙だと思います。
広瀬すずは相変わらず良い。
今作はとても難しい役柄で、表と裏の表情が良かった。可愛らしい清楚な無邪気な役も良いけれど、こういう影のある役も出来る素晴らしい女優さんです。
白鳥玉季もとっても良かった。演技が上手いというより自然だった。小学生役ですが、無邪気とセクシーな表現もあり、なんとも微妙な役でした。
2人の魅力を引き出す監督もさすがだなと。
カーテンが揺れると別シーン別時間軸になったりとても惹き込まれた。
また、人間の嫌な部分が滲み出ていて良かった。
不快に思うとこもろあった。なんでそこでついて行くの?とか。ただ逆にリアルだと思います。
犯罪?の話だし、人間の嫌な部分が沢山出てきます。また、ロリコン描画があるので、嫌な人はとても不快に思うかもしれませんが、映画としてはとても良かったです。
心の深いところにある普段気にかけることもない「正しさ」をやさしく丁寧に揺さぶられる
松坂桃李の松坂桃李が見えるシーンだけは違和感
白鳥玉季ちゃんが広瀬すずになる説得力が凄かった。演技ができる女優だからなのか、演技プランの入念な打ち合わせから来ているのか…
時系列をいじっていることが凄く話を面白くさせている。
確かに誘拐=良くないことという先入観を持ってしまう。どんなに本人が大丈夫と言っても、信じないだろうな…自分は。こうしたその人たちだけが幸せだと思っていたらそれでも素敵じゃんと思えるかどうか。
コーヒーにミルクを混ぜるところをガッツリ移す演出とか、カーテンを使った演出とかのさり気なさがいい。
横浜流星さんなめてました。こんなクズ役できるとは…。
松坂桃李の松坂桃李が見えるシーンだけはいまいちよくわからなかった。すずもそういうの嫌いって言ってたけどな…
Q.疫病神とも相思相愛の関係になれるか? A.なれます。何故なら・・・
更紗(広瀬すず)は間違いなく文(松坂桃李)にとっての疫病神です。彼の人生を壊したから。
では、彼はその疫病神と相思相愛の関係になれるか。はい、なれます、何故なら・・・
と、まあ、ざっくりこんな感じの作品でしょうか。
ちなみに相思相愛になった場合に起こりうることが題名に暗喩として描かれています。
まあ、悪くはないと思うんですけどね、
ただ、2時間30分という長めの上映時間がそれ以上に長く感じられました。無駄な描写が多いような・・
後は、マスゴミとか警察とか典型的な悪者に描かれていますが、どうなんですかね。
たとえば、参考人として任意同行を求めることはできても連行は無理じゃないですかね。ほかにも当初事件の捜査が雑だしなんか作品が安っぽくなった感じがしました。
文字通り、流浪。
あ。2人が、まさに流浪の人生を覚悟する、ってオチ?
タイトルは、まんまかいなw
「心の居場所」と「住処」。2人は「放浪」の末に心の居場所を見つけ、共に「住処」を求めて彷徨う事になるよ。って言う、薄暗くも浸透圧の高い幸福感は心地良いけどw
画はきれいなんですよ。風景も室内も。ため息が出るくらい、とまではいかないけれど。ただですね。致命的なのが、顔面アップ&バストアップが、あまりにも多い事でして。李監督らしい、って事なんですが、劇場用映画じゃないですよ、コレは。TV画面やPCモニター前提ですよね。この人物の撮り方が、とっても残念だった。
ものがたりの方は良かったです。
警察介入場面では、シベールを思う浮かべてしまいましたが、チョット緊迫感足りなくてイマイチ。
クライマックス、カフェ2階での2人のシーンも、見せ場ゆえの長回しと熱演に期待したんどすが、広瀬すずでは、アレが限界と思われ。
良かったけど、残念感もたくさん。
って事で。
原作のよいところが…
原作ファンで、行ってみました。キャスティング聞いた時はイメージと違うと感じましたが、映像化みたら松坂桃李くん広瀬すずちゃんは役に入り込んでいてよかったです!
ただ、内容がダラダラ冗長で時系列わかりにくいし、
最初に広瀬すずちゃんと横浜流星くんの濡れ場をあんな長く、見せられたのがびっくりしました!
そこ、重要じゃない…代わりに必要なシーンや描写が足らなくて多分映画だけみたら意味が分からないと思う。
原作のラストには幸せな余韻が残るのに、この映画はほぼ鬱々として長く感じました。せっかく主演二人がよかったからなんだかもったいなかったと思う。
主演二人に星2つ。
ある意味結果オーライの物語。巡り会えて良かったね、と、表面は不幸で悲しい話の様でその実一緒に流れてくれる運命の人と繋がれたね、というお話。
(原作未読)①亮くんは“たかがバイトだろ”という台詞を吐いた時点で「あっ、こいつダメ」と思った。下手くそなセックスシーンは必要なのか?と思ったが、亮という人間を描くには必要だったのかも(更紗がセックスに対して積極的になれないトラウマがあることの伏線にもなっていたことが後に分かる)。同棲相手が料理を作って待っているのは当たり前、って思ってるところや、更紗に暴行を加えるシーンとか「ホントに、ホントにダメなやつ」であるけれども、土地持ちの家に生まれた(自分には逃げ場所がある)反面母親は居ないようで(死んだか逃げたかはわからないけれど)その辺りが人格形成に影響しているのかも知れず、まあ弱い人間だということですね。更紗はこんなやつと結婚しないで良かった。②少女時代の更紗が家に帰ると従兄弟にイタズラされるので帰りたくないという気持ちは十分分かるけれども、公園で目の前に立つお兄ちゃんが同じことをするとは思わなかったのかしら。その辺り、ちょっと不自然さを感じるが結果として変なことしないお兄ちゃんで良かったね、です。肌感覚でこのお兄ちゃんはそういう人じゃない、と分かったのかな。同居するようになってホントに楽しそうだったし。確かにそういう波長の合う人に時たま巡り合うことは私もこれまでの人生で確かにあったし。③広瀬すずは前から上手い子だなとは思っていたけれど本作でも好演。特に亮と関係が上手く行かなくなってから対峙するときの目の演技が良い。更紗の少女時代を演じた女の子も上手。④松坂桃李は大学生には見えなかったが、“死んでも知られたくない”秘密を抱えて生きている男の影の様なものは良く表現していた、と思う。ここにも毒親の被害者が一人いた訳だが、子供のない私には自分の子供に“自分の異常を私のせいだと言うの?”とか“生育の悪い木を出来損ないだから捨てるのよ”(と文を見る目も言っていた)とか言う母親がいることが信じられない。そういう女を“母はとても正しい人だから”という文の心の折れ曲がり具合が痛ましい。母親役の女優さんは知らない人だが少ない出番ながら中々の存在感。⑤あと、帰りたくないという更紗を家に連れ帰ろうとした時はどういう気持ちだったのだろう。もう大学生だから自分のしていること(誘拐と見なされることは分かっていただろうし。)同じ子供の体だから繋がれると思ったのか、やはり少しはロリコンの気はあったのか。更紗の口からケチャップを拭い取って上げた後、唇を撫でるところはビミョー。⑥多部未華子は彼女でないとだめな役だったのか疑問。柄本明は、あの台詞“人も物も出逢って別れてまた出逢う”(だったかな?)を言う為だけのゲスト出演か?⑦観る前は、吉田修一の『さよなら渓谷』的な映画なのかな、と思ったがずっと分かりやすい映画であった。⑧ラスト、二人が共に流れていくことを確認し合うまでは、二人の心の中には様々な感情(葛藤・悩み・苦しみ・悲しみ・絶望・希望・自由・解放感等々)があったと思うが、静謐な映像はその心象風景をよく表していた、と思う。
【”お母さん、僕は矢張り外れですか・・。”心に刻まれてしまった様々な傷と再生を描く作品。人間の真の善性と、僅かな悪性。そして意図せぬ悪意と誤解。今作はずっしりと重みのある見応えある作品でもある。】
ー 上弦の月や下弦の月、満月を会社帰りにたまに見ると、人間の心の様だな・・、と思うことがある。今作はその様な、人間の複雑な心模様を、描いている。そして、観る側は気づく。”もしかしたら、心の一部が欠損したまま生きている人もいるのではないかな・・”と・・。-
◆感想
■今作は印象的なシーンが多数あるが、私は劇中唐突に描かれる幼き佐伯文(長じてからは、松坂桃李)が帰宅した際に、彼の母親(内田也哉子)が、枯れかけた樹を無表情に、庭の地面から間引きのように、引き抜いているシーンである。
このシーンは、今作の”軸”であると、私は思った。
・文が家に帰りたくない小学生の更紗(白鳥玉季。抜群である。長じてからは、広瀬すず)が公園で読書中に雨が降り出した時に、差し出した傘のシーンは、劇中、複数回描かれる。そして、文は更紗に”家に来る?”と問いかけ、更紗は嬉しそうに付いてくる。
- 文の真の善性故の行為である。彼の心の傷による行為でもある事が後半描かれる。上手い構成である。ー
・小学生の更紗が、文の家で自由奔放に振舞う、安心しきった姿の数々。そして、文が”死んでいるのではないか”と思った程、熟睡する姿。
- 徐々に明かされる、更紗の父が病で他界し、母親は男を作って家を出て叔母の家に住んでいる事。そして、叔母の子タカフミが夜中に更紗の身体を頻繁に触りに来ること。
後半明かされる文の母親に抱いた気持ちと、更紗の母親に密かに抱いている哀しき思いがシンクロしていく。ー
・更紗を”誘拐した”事で少年院に入った文。だが、それを”自分を助けてくれたのに文の人生を台無しにしてしまった”と責める気持ちを抱きながら、誰にも愛されずに過ごして来た更紗。
- 彼女が自分を愛してくれたりょうちゃん(横浜流星:良くあの役を受けたなあ。けれども、自己中心的で、自信家でありながら更紗に捨てられた途端に脆さを露呈する男を好演している。)に惹かれ、同棲した理由が良く分かる。-
・更紗が、久しぶりに会った珈琲しか出さない喫茶店を営んでいる姿を見た時の安堵した表情。
- 彼女が抱えていたトラウマが僅かに解けるシーンであり、広瀬すずがその心持を絶妙に演じている。-
・更紗がりょうちゃんから文と会っている事を理由に暴行を受け、(女性に対し、殴る蹴るとは言語同断であるが、その程度の男である事は上記の通りである。)血だらけで町を彷徨い、行きついた先は文の喫茶店の前。
- そして、再び文に”家に来る?”と言われる・・。文が善性の塊である事が良く分かるし、更紗も文への距離を再び近づけるきっかけにもなるシーンである。-
・二人の関係性が、下衆な週刊誌に取り上げられ、再び文は追い詰められていく。そして、閉店した喫茶店で、文は更紗に対し、自分の真実の姿を見せる・・。
- 文という中性的な名前の所以が分かるシーンである。それにしても、文を演じた松坂桃李は矢張り凄い。肉体を激変させ、男のオーラを消し中性的な人物を自然に演じている。-
<今作品は、観ていて辛いシーンも多いが、ラストの文と更紗が全ての周囲からの好奇の目を気にせず、一緒に生きて行くと決めた橋の上でのシーンは、僅かな希望を感じさせる。
心の欠損を、二人は一緒に生きる事で埋め合い、新しい人生を歩んでいくのだろうと私は思ったのである。
劇中で流れる、悲し気なピアノの旋律も、この作品の趣を高めていると思った作品でもある。>
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