流浪の月のレビュー・感想・評価
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作為感のある不幸の寄せ集め
作為感のある不幸が寄せ集めになっていて、どの登場人物にも感情移入できない。ショットも演技も申し分ないんだけど、色々と違和感を感じることが多い。
最大の違和感は、ラストで明かされる文の秘密だけれども、この秘密によって、兄弟的愛情と解釈していた僕の気持ちは大混乱に陥った。そこが狙いなんだろうけど、なんだかなぁ。
家出少女を自宅の住まわせる輩が実際にいることを考えると、文の行動を肯定したくない。娘を持つ父親としては、やりきれない物語と感じてしまう。
事件の裏、心の叫び
何て書いたら良いのだろう…男の人は偶然連れて帰った女の子に癒されて良かったね。女の子もその人の前では自由奔放に振る舞えて良かったね。でも、それは世間では犯罪って言うんだよ。誰にも分かってもらえない。切ないなぁ…
7月13日
小説完読後、2度目の鑑賞。
この作品は映画→小説→映画で完結する。小説を読んで臨むことで視点や視野が広がったり変わったりする。
李監督映画の泣きどころ
「悪人」深津絵里がクリスマスケーキの残りを食べている場面。
「怒り」広瀬すずがボコボコにされ、ラストで呻いているところ
「流浪の月」更紗がボコボコにされて街中を文を求めて彷徨う場面。
「怒り」以外は2回見て同じ場面で泣かされた。
番外編「JOKER」主人公が逮捕されパトカーの上に担ぎ出される場面。
開始5分で演出・脚本がダメだと分かる
冒頭、ファミレスで男子高校生グループが事件映像を動画サイトで観ながら「やばい!」だの「洗脳されてるじゃん!」だの盛り上がっている横を当事者であるバイトの広瀬すずが通り過ぎる。
どうやったら大昔の事件映像にあそこまで熱いテンションになれるのか。それもタイミング良く。
ありがちすぎる演出に嫌な予感がしつつ幕が上がるのだが、その後も登場人物はやたらと泣き叫び、悲しい場面では悲しい音楽が大層に流れる、といった説明くさいうえに陳腐な演出が続き、終始イライラさせられる。
せめて2時間に収めるべきだし、収められる内容だろう。
ストーリーはとても惹かれるもので、未読ながら原作は面白いのだろうと思う。
撮影も良く、映像には引き込まれるところがあった。
そのおかげで本作は映画として「良作」に見える仕上がりにはなっている。
特にサラサがフミの現在を知って嬉し泣きしながらひとり夜道を歩くシーンは屈指の名場面と言える。
良いところはいくつもあり、画力に引っ張られて退屈せずに観られるものの、先述のダメ要素が映画の格を著しく下げており、傑作とは到底言えない出来になっている。
極上の素材を平凡にしか料理出来なかった残念な作品でした。
自由をくれた人
雨の公園で行き場のな10歳の少女を家に連れて帰ったことで誘拐犯となった19歳の男とその少女の15年後話。
大人になり俺様系束縛男と同棲している更紗が、偶然訪れた深夜のカフェで文と再会し巻き起こって行くストーリー。
真実なんかどうでも良くて、勝手に決めつけ面白おかしく騒ぎ立てる世間の目の胸クソ悪さと、トラウマやコンプレックスに縛られながら共依存の様に陥っていく2人の様が悲しさがとても良かった。
全裸描写は良くわからなかったけれど、半陰陽とかだったのかな…?
広瀬すずと白鳥玉季、最高傑作
とって良かった!
映画らしい映画で、とても間が良い。セリフの無い所がとても良い味がある。「ながら」視聴では伝わらない。とても好き。
ストーリーも良かった。こういう話かな、、と思ってはいましたが、それでもどうなるのか最後まで分からなかった。最後に、そういうことかー、切ない。
ストーリー上でも重要なロリコン描画があります。日本の映画でR指定なしではこれが限界かもしれないけど、なんともセクシーなシーンがあり、とても絶妙だと思います。
広瀬すずは相変わらず良い。
今作はとても難しい役柄で、表と裏の表情が良かった。可愛らしい清楚な無邪気な役も良いけれど、こういう影のある役も出来る素晴らしい女優さんです。
白鳥玉季もとっても良かった。演技が上手いというより自然だった。小学生役ですが、無邪気とセクシーな表現もあり、なんとも微妙な役でした。
2人の魅力を引き出す監督もさすがだなと。
カーテンが揺れると別シーン別時間軸になったりとても惹き込まれた。
また、人間の嫌な部分が滲み出ていて良かった。
不快に思うとこもろあった。なんでそこでついて行くの?とか。ただ逆にリアルだと思います。
犯罪?の話だし、人間の嫌な部分が沢山出てきます。また、ロリコン描画があるので、嫌な人はとても不快に思うかもしれませんが、映画としてはとても良かったです。
心の深いところにある普段気にかけることもない「正しさ」をやさしく丁寧に揺さぶられる
社会からの見え方。当事者からの見え方は全く違う。そして真実を証明するということは困難な場合がある。
自分が普段生きていて触れている情報は果たしてどれくらい真実なのか?鵜呑みにしてはいけないと改めて考えさせられた。
心の深いところにあった普段気にかけることもない「正しさ」を丁寧な映像、音楽、そして役者の演技によって揺さぶってくる作品であった。
極めてデリケートな問題をここまで丁寧に描いた映画に触れることができて良かった。
松坂桃李の松坂桃李が見えるシーンだけは違和感
白鳥玉季ちゃんが広瀬すずになる説得力が凄かった。演技ができる女優だからなのか、演技プランの入念な打ち合わせから来ているのか…
時系列をいじっていることが凄く話を面白くさせている。
確かに誘拐=良くないことという先入観を持ってしまう。どんなに本人が大丈夫と言っても、信じないだろうな…自分は。こうしたその人たちだけが幸せだと思っていたらそれでも素敵じゃんと思えるかどうか。
コーヒーにミルクを混ぜるところをガッツリ移す演出とか、カーテンを使った演出とかのさり気なさがいい。
横浜流星さんなめてました。こんなクズ役できるとは…。
松坂桃李の松坂桃李が見えるシーンだけはいまいちよくわからなかった。すずもそういうの嫌いって言ってたけどな…
Q.疫病神とも相思相愛の関係になれるか? A.なれます。何故なら・・・
更紗(広瀬すず)は間違いなく文(松坂桃李)にとっての疫病神です。彼の人生を壊したから。
では、彼はその疫病神と相思相愛の関係になれるか。はい、なれます、何故なら・・・
と、まあ、ざっくりこんな感じの作品でしょうか。
ちなみに相思相愛になった場合に起こりうることが題名に暗喩として描かれています。
まあ、悪くはないと思うんですけどね、
ただ、2時間30分という長めの上映時間がそれ以上に長く感じられました。無駄な描写が多いような・・
後は、マスゴミとか警察とか典型的な悪者に描かれていますが、どうなんですかね。
たとえば、参考人として任意同行を求めることはできても連行は無理じゃないですかね。ほかにも当初事件の捜査が雑だしなんか作品が安っぽくなった感じがしました。
「更紗は更紗だけのものだ。誰にも好きにさせちゃいけない。」 この言...
「更紗は更紗だけのものだ。誰にも好きにさせちゃいけない。」
この言葉が更紗の中でとても大きな意味を持ってて、これだけを支えに生きてきたんだと思った。
文字通り、流浪。
あ。2人が、まさに流浪の人生を覚悟する、ってオチ?
タイトルは、まんまかいなw
「心の居場所」と「住処」。2人は「放浪」の末に心の居場所を見つけ、共に「住処」を求めて彷徨う事になるよ。って言う、薄暗くも浸透圧の高い幸福感は心地良いけどw
画はきれいなんですよ。風景も室内も。ため息が出るくらい、とまではいかないけれど。ただですね。致命的なのが、顔面アップ&バストアップが、あまりにも多い事でして。李監督らしい、って事なんですが、劇場用映画じゃないですよ、コレは。TV画面やPCモニター前提ですよね。この人物の撮り方が、とっても残念だった。
ものがたりの方は良かったです。
警察介入場面では、シベールを思う浮かべてしまいましたが、チョット緊迫感足りなくてイマイチ。
クライマックス、カフェ2階での2人のシーンも、見せ場ゆえの長回しと熱演に期待したんどすが、広瀬すずでは、アレが限界と思われ。
良かったけど、残念感もたくさん。
って事で。
原作のよいところが…
原作ファンで、行ってみました。キャスティング聞いた時はイメージと違うと感じましたが、映像化みたら松坂桃李くん広瀬すずちゃんは役に入り込んでいてよかったです!
ただ、内容がダラダラ冗長で時系列わかりにくいし、
最初に広瀬すずちゃんと横浜流星くんの濡れ場をあんな長く、見せられたのがびっくりしました!
そこ、重要じゃない…代わりに必要なシーンや描写が足らなくて多分映画だけみたら意味が分からないと思う。
原作のラストには幸せな余韻が残るのに、この映画はほぼ鬱々として長く感じました。せっかく主演二人がよかったからなんだかもったいなかったと思う。
主演二人に星2つ。
ある意味結果オーライの物語。巡り会えて良かったね、と、表面は不幸で悲しい話の様でその実一緒に流れてくれる運命の人と繋がれたね、というお話。
(原作未読)①亮くんは“たかがバイトだろ”という台詞を吐いた時点で「あっ、こいつダメ」と思った。下手くそなセックスシーンは必要なのか?と思ったが、亮という人間を描くには必要だったのかも(更紗がセックスに対して積極的になれないトラウマがあることの伏線にもなっていたことが後に分かる)。同棲相手が料理を作って待っているのは当たり前、って思ってるところや、更紗に暴行を加えるシーンとか「ホントに、ホントにダメなやつ」であるけれども、土地持ちの家に生まれた(自分には逃げ場所がある)反面母親は居ないようで(死んだか逃げたかはわからないけれど)その辺りが人格形成に影響しているのかも知れず、まあ弱い人間だということですね。更紗はこんなやつと結婚しないで良かった。②少女時代の更紗が家に帰ると従兄弟にイタズラされるので帰りたくないという気持ちは十分分かるけれども、公園で目の前に立つお兄ちゃんが同じことをするとは思わなかったのかしら。その辺り、ちょっと不自然さを感じるが結果として変なことしないお兄ちゃんで良かったね、です。肌感覚でこのお兄ちゃんはそういう人じゃない、と分かったのかな。同居するようになってホントに楽しそうだったし。確かにそういう波長の合う人に時たま巡り合うことは私もこれまでの人生で確かにあったし。③広瀬すずは前から上手い子だなとは思っていたけれど本作でも好演。特に亮と関係が上手く行かなくなってから対峙するときの目の演技が良い。更紗の少女時代を演じた女の子も上手。④松坂桃李は大学生には見えなかったが、“死んでも知られたくない”秘密を抱えて生きている男の影の様なものは良く表現していた、と思う。ここにも毒親の被害者が一人いた訳だが、子供のない私には自分の子供に“自分の異常を私のせいだと言うの?”とか“生育の悪い木を出来損ないだから捨てるのよ”(と文を見る目も言っていた)とか言う母親がいることが信じられない。そういう女を“母はとても正しい人だから”という文の心の折れ曲がり具合が痛ましい。母親役の女優さんは知らない人だが少ない出番ながら中々の存在感。⑤あと、帰りたくないという更紗を家に連れ帰ろうとした時はどういう気持ちだったのだろう。もう大学生だから自分のしていること(誘拐と見なされることは分かっていただろうし。)同じ子供の体だから繋がれると思ったのか、やはり少しはロリコンの気はあったのか。更紗の口からケチャップを拭い取って上げた後、唇を撫でるところはビミョー。⑥多部未華子は彼女でないとだめな役だったのか疑問。柄本明は、あの台詞“人も物も出逢って別れてまた出逢う”(だったかな?)を言う為だけのゲスト出演か?⑦観る前は、吉田修一の『さよなら渓谷』的な映画なのかな、と思ったがずっと分かりやすい映画であった。⑧ラスト、二人が共に流れていくことを確認し合うまでは、二人の心の中には様々な感情(葛藤・悩み・苦しみ・悲しみ・絶望・希望・自由・解放感等々)があったと思うが、静謐な映像はその心象風景をよく表していた、と思う。
【”お母さん、僕は矢張り外れですか・・。”心に刻まれてしまった様々な傷と再生を描く作品。人間の真の善性と、僅かな悪性。そして意図せぬ悪意と誤解。今作はずっしりと重みのある見応えある作品でもある。】
ー 上弦の月や下弦の月、満月を会社帰りにたまに見ると、人間の心の様だな・・、と思うことがある。今作はその様な、人間の複雑な心模様を、描いている。そして、観る側は気づく。”もしかしたら、心の一部が欠損したまま生きている人もいるのではないかな・・”と・・。-
◆感想
■今作は印象的なシーンが多数あるが、私は劇中唐突に描かれる幼き佐伯文(長じてからは、松坂桃李)が帰宅した際に、彼の母親(内田也哉子)が、枯れかけた樹を無表情に、庭の地面から間引きのように、引き抜いているシーンである。
このシーンは、今作の”軸”であると、私は思った。
・文が家に帰りたくない小学生の更紗(白鳥玉季。抜群である。長じてからは、広瀬すず)が公園で読書中に雨が降り出した時に、差し出した傘のシーンは、劇中、複数回描かれる。そして、文は更紗に”家に来る?”と問いかけ、更紗は嬉しそうに付いてくる。
- 文の真の善性故の行為である。彼の心の傷による行為でもある事が後半描かれる。上手い構成である。ー
・小学生の更紗が、文の家で自由奔放に振舞う、安心しきった姿の数々。そして、文が”死んでいるのではないか”と思った程、熟睡する姿。
- 徐々に明かされる、更紗の父が病で他界し、母親は男を作って家を出て叔母の家に住んでいる事。そして、叔母の子タカフミが夜中に更紗の身体を頻繁に触りに来ること。
後半明かされる文の母親に抱いた気持ちと、更紗の母親に密かに抱いている哀しき思いがシンクロしていく。ー
・更紗を”誘拐した”事で少年院に入った文。だが、それを”自分を助けてくれたのに文の人生を台無しにしてしまった”と責める気持ちを抱きながら、誰にも愛されずに過ごして来た更紗。
- 彼女が自分を愛してくれたりょうちゃん(横浜流星:良くあの役を受けたなあ。けれども、自己中心的で、自信家でありながら更紗に捨てられた途端に脆さを露呈する男を好演している。)に惹かれ、同棲した理由が良く分かる。-
・更紗が、久しぶりに会った珈琲しか出さない喫茶店を営んでいる姿を見た時の安堵した表情。
- 彼女が抱えていたトラウマが僅かに解けるシーンであり、広瀬すずがその心持を絶妙に演じている。-
・更紗がりょうちゃんから文と会っている事を理由に暴行を受け、(女性に対し、殴る蹴るとは言語同断であるが、その程度の男である事は上記の通りである。)血だらけで町を彷徨い、行きついた先は文の喫茶店の前。
- そして、再び文に”家に来る?”と言われる・・。文が善性の塊である事が良く分かるし、更紗も文への距離を再び近づけるきっかけにもなるシーンである。-
・二人の関係性が、下衆な週刊誌に取り上げられ、再び文は追い詰められていく。そして、閉店した喫茶店で、文は更紗に対し、自分の真実の姿を見せる・・。
- 文という中性的な名前の所以が分かるシーンである。それにしても、文を演じた松坂桃李は矢張り凄い。肉体を激変させ、男のオーラを消し中性的な人物を自然に演じている。-
<今作品は、観ていて辛いシーンも多いが、ラストの文と更紗が全ての周囲からの好奇の目を気にせず、一緒に生きて行くと決めた橋の上でのシーンは、僅かな希望を感じさせる。
心の欠損を、二人は一緒に生きる事で埋め合い、新しい人生を歩んでいくのだろうと私は思ったのである。
劇中で流れる、悲し気なピアノの旋律も、この作品の趣を高めていると思った作品でもある。>
映像が美しく、役者さんの目の演技に引き込まれる
原作本を読んでから鑑賞しました。
カット割りがうまく、光の使い方も美しく、映像美が溢れていました。また役者さん達の繊細な瞳の表現が素晴らしく、細やかな心情を感じる取ることができました。
原作の内容が少しカットされているため、少々話の内容の解釈に違いが出てしまうかとは思いますが、それでも十二分に感動できる内容でした。
2時間40分とかなり長い映画ですが、素晴らしい映像美と役者さんの完璧な演技に引き込まれ、あっという間に過ぎてしまいました。
今年観た映画の中で一番観ているのが辛い作品でした。
映画館だから最後まで観ることができたんじゃないかなと思います。
WOWOWで放送されるんでしょうけど、おそらく観返すことはしないでしょう。
正視に耐えません。
そのせいでしょうか、レビューはそんなに高くありません。
ただ、この作品、個人的には滲みました。
月は自分で輝くことはできません。
太陽光を反射させてぼんやり人知れず浮かんでいるだけでその存在を意識しない限り気にもされない。
そんな居場所のない人
誰にも言えない悩みに襲われている人
劣等感に苛まれてる人
そんな方は共感できる作品じゃないかと思います。映画を理屈ではなく感性で鑑賞される方は是非。
"わかりあえる" この絶望的な言葉
始終、涙目で鑑賞してしまった。これだけの悲しみを何故に人間は背負わなければならないのか。
そんな虚無感に苛まれる作品である。
本屋さん大賞受賞の原作(未読)であるので小説レビューも拝読したが、その中でも評価が二分されている、
好き嫌いのハッキリするストーリーであろう。それは今日の数多あるニュースサイトのコメント欄のそれと同様だ。
偏見、差別、嫉妬と蔑み・・・
興味本位とコマーシャリズム・・・
それはフィクションであるストーリー内容でさえも歯牙に懸ける。
矛盾点を必要に突くことで人は優越感に浸る。そこに上下関係が生まれ上と下は互いに憎悪の対象となる。
この二人に出来ることは"逃避"しかない。受容れる余裕のないこの社会で、それでも生きていくにはこの選択肢しかないのだ。
心ない人間はこういう。曰わく「努力しろ」「がんばれ」と・・・
それは誰の為の言葉なのだ。それは自分が単に楽になりたいだけなのだろう。
ラスト前のクライマックスでの裸での告白は、あのシーンだけではしっかり理解は困難である。それは観客自ら
考え、調べて欲しいという監督のメッセージだと思う。
でも、もう少しシルエット的な演出、若しくは大胆に文字や医学書等挿絵的な差込で演出しても良かったのではと・・・蛇足である。
【折紙つきの映画】
世間の偏見に翻弄されながら、真実の愛に向かう2人。明かされる彼らの秘密がインパクト極大で、俳優達の本気度が伺える演技には目を見張る。本格派の俳優達、監督、製作スタッフという折紙“つき”の一本。
◆トリビア
○横浜流星は、初共演の広瀬すずとの距離を縮めるため、ジャングルポケットのネタを完コピして披露した。
〇広瀬すずと横浜流星は役作りのため、お互いの写真を携帯電話の待ち受け画面にしていた。
○ 松坂桃李は役作りのため、8キロ減量、更紗と過ごした撮影用のアパートで2週間寝泊まりした。
〇松坂桃李は、『流浪の月』のハッシュタグをつけて感想を投稿したら全部見ると宣言した。
○松坂桃李と広瀬すずは本作を演じるにあたって、監督から勧められた『ムーンライト』『ブロークバック・マウンテン』『たかが世界の終わり』を鑑賞した。
○ロケ地は、長野県大町市北部の青木湖ほか、長野県松本市などで行われた。
〇撮影監督ホン・ギョンピョによる撮り下ろし写真展が全国10劇場で開催される。
〇本作は『パラサイト 半地下の家族』撮影監督のホン・ギョンピョや、『キル・ビル Vol.1』美術等で世界で活躍する種田陽平など、国を越えた才能が競演する。
◆関連作品
○「流浪の月 エピソード0」
監督や出演者たちのインタビューを交えたドキュメンタリータッチのメイキング。U-NEXTで登録なしで視聴可。
○「怒り」('16)
李相日監督、広瀬すず出演作品。広瀬すずの体当たり演技も。第40回日本アカデミー賞優秀作品賞、優秀監督賞、優秀助演女優賞受賞。プライムビデオ配信中。
○「悪人」('10)
李相日監督作品。モントリオール世界映画祭ワールド・コンベンション部門正式出品、深津絵里が最優秀女優賞を受賞。プライムビデオ配信中。
○「娼年」('18)
松坂桃李が、世の中の自分に対するイメージについて割り切れたと話す作品。体当たり演技連発します。プライムビデオ配信中。
◆概要
【原作】
凪良ゆう「流浪の月」(2020年本屋大賞受賞作品)
【監督】
「怒り」李相日(リ・サンイル)
【出演】
松坂桃李、広瀬すず、横浜流星、多部未華子、趣里、三浦貴大、白鳥玉季、増田光桜、内田也哉子、柄本明
【撮影監督】
「パラサイト 半地下の家族」ホン・ギョンピョ(本作で日本映画に初参加)
【公開】2022年5月13日
【上映時間】150分
◆ストーリー
ある日の夕方、雨の公園でびしょ濡れになっていた10歳の少女・家内更紗に、19歳の大学生・佐伯文が傘をさしかける。伯母に引き取られて暮らす更紗は家に帰りたがらず、文は彼女を自宅に連れて帰る。更紗はそのまま2カ月を文の部屋で過ごし、やがて文は更紗を誘拐した罪で逮捕される。“被害女児”とその“加害者”という烙印を背負って生きることとなった更紗と文は、事件から15年後に再会するが……。
◆
◆以下ネタバレ
◆
◆流浪の月
「人は物事を見たいようにしか見ない」劇中の台詞の通り、世間の偏見に苦しめられ続けた2人。それでも、“出会っては別れ、また出会う”あのバカラのグラスのように、引き寄せ合うように再会して寄り添い合う。「うち、来る?」「店、来る?」にどちらも「うん、行く」と繋がる絆が微笑ましくも儚かった。ニュースや記事に、ネットにも幾度も晒され、恋人や母にも及ぶ偏見にも翻弄されながら、次第に明かされる2人の秘密。親族からの虐待や、肉体のコンプレックスと、何一ついい事がなかった2人にこそ逆に生まれる愛だと合点がいった。それこそ2人にしか分からない真実の愛であり、それは流浪する月のように、世間からは儚く見えるのかもしれない。
◆演者
余りにも衝撃的すぎる文の全裸。下着を下ろす時の松坂桃李の震える演技はこちらも身震いするほど凄まじいものだったし、ネットに晒した亮に詰め寄る更紗(広瀬すず)の、あの怒りが溢れんばかりの鬼のような目も素晴らしかった。執拗に身体を求める、狂気と粘着質満載の横浜流星も凄い。李監督の作品は本当に感情爆発シーンの凄みが突出しているイメージで、本作は特に見応えあり。「悪人」の樹木希林(本作ではその娘の内田也哉子)、「怒り」の柄本明がそれぞれカメオ出演(にほぼ近い)していたのも、李監督ファンにはニヤリものだったし、幼少期の更紗(白鳥玉季)の広瀬すずとの激似具合も驚いた。
◆演出
更紗と文がそれぞれの秘密を語るシーン(どちらもカフェ)は共通して長めのワンカット、そして表情が読み取れないほど少し広めの画。それがとても印象的で、演者の“間”で、演者の演技力を信じて、逆に演出をつけずに撮った、こだわりのシーンのように思えた。また、空に見えた月は、映画を通して大きな月から半月になり、2人がラストで見上げたそれは、もう欠け終わるほどの細い三日月に。そんな月の姿は、揺るぎない絆と愛を得たものの、その先にある2人の行末の儚さを暗示しているような、そんな演出にも思えた。
すずちゃんの成長
原作未読
心に傷持つ人々の話。生まれ育った不遇が要因となっているので感情移入しづらい。どうしても傍観者的な感想になってしまいます。メインのアクターの皆さんの演技力によりストーリー展開には引き付けられましたが観終わった時点で残るものは何か疑問に思う作品でした。
俳優陣が好みなら観る価値は充分です。個人的には白鳥玉季ちゃんが注目です。
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