劇場公開日 2022年5月13日

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「今、この時の松坂桃李でしか撮れなかった一作。」流浪の月 yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0今、この時の松坂桃李でしか撮れなかった一作。

2022年8月4日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

『孤狼の血 LEVEL2』(2021)で強面の刑事を演じた松坂桃李が、今回は打って変わって線が細く内向的な青年役で主演。劇中の時間軸に数年間の幅があるので、彼は若者からやや年を経た青年までを演じています。そこはさすがの演技力で、どの年代の彼であっても、全く自然だけどある程度の経年変化をきっちり感じさせてくれます。

広瀬すず演じる更紗が白鳥玉季と二役で演じていることを考えると(少女時代と成人後の役なんで当然なんだけど)、この対応可能幅は驚異的です。そして結末に明かされるある真相も、他にどんな演技巧者が演じていたら、松坂桃李以上に説得力を持たせることができるのか、と考えましたが、ちょっと思いつきませんでした。

いくつか大きな事件は起きるものの、映像、演出、音楽のいずれも、それほど煽情的ではなく、むしろ静謐ですらあります。雨や湖面など、「水」が印象的な映像は、撮影監督ホン・ギョンピョの手によるものとのことで、やはりそこかしこで『パラサイト』(2020)を連想させる映像が見られました。

原作は未読なんだけど、もしかしたら多部未華子演じる看護師・谷とかもうちょっと出番があったのではー?と思う所もあったり、150分とやや長めの映画なんだけど、もっと細部が見たいなー、と思わせてくれる作品でした。

yui