「静謐な叫びと微かな救いを示す月の光」流浪の月 かとしさんの映画レビュー(感想・評価)
静謐な叫びと微かな救いを示す月の光
それぞれが深い痛みを抱えていて、だからこそ人生がうまくいかず、苦しみもがきながらかすかな愛をつかみ取ろうと苦闘する。そんな人々の姿を丁寧にそして静かに描いている。
饒舌な叫びではなく、ひとり密かに、誰にも悟られることなく、苦しみは暗闇や水の中で吐露され、それを月は物言うことなく見つめている。
原作が素晴らしいのだろうけど脚色も良い。役者も良くて松坂桃李をはじめ子役の白鳥玉季、横浜流星など物語に説得力を加えている。
監督の演出のうまさと、それを引き立てるホン・ギョンピョのカメラ。美しい静物画のようなシーンに目を奪われる。
そして原摩利彦の硬質なピアノ。前作の「怒り」の坂本龍一のような印象。とても良い。今後チェックしたい音楽家になった。
重く困難な問題だけど多くの人に普遍的なテーマを扱っている。
結末に微かな希望が見えたのが救いだった。
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