「男と女の強い絆を描いた異色のラブストーリー」流浪の月 みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)
男と女の強い絆を描いた異色のラブストーリー
李相日監督作品ということで娯楽作品ではなく超シリアス作品だと覚悟していたが、過酷な運命に翻弄されながらも、求め合い続ける男と女の強い絆を描いた異色のラブストーリーだった。主役の松坂桃李と広瀬すずの抑制の効いた巧演が際立つ秀作だった。
大学生・佐伯文(松坂桃李)は、両親と離別し叔母の家で暮らしている10歳の更紗と偶然知り合い、叔母の家に帰りたくないと言う更紗と同居生活を始めるが、2ヶ月後に誘拐犯として逮捕される。15年後、大人になった更紗(広瀬すず)は偶然文と再会したことによって二人の運命は大きく変化していく・・・。
二人の同居生活は、長閑であり、両親との離別後、癒されることが無かった更紗の心に安らぎを与える。大学生の文は、そんな更紗を優しさで包み込む。2ヶ月という時間の中で二人は強い絆で結ばれていく。台詞が洗練されているので僅かな台詞のやり取りのなかで二人の関係性が深まっていくのが分かる。穏やかだが心に悩みを抱えた文を松坂桃李が生気のない物静かな佇まいで好演している。やがて、文は誘拐犯として逮捕される。逮捕直前に二人は手を握りしめる。それは二人の絆の強さを確認した行為だと推察できる。
15年後、二人は偶然の再会を果たす。二人には恋人がいたが、再会によって、二人は自分が本当は誰を求めているかに気付き急接近していく。次第に恋人との関係はギクシャクし始め破綻していく。
ラストシーン。流れるという更紗の台詞が意味深である。二人が他に居場所を求めて流離うという意味だけではないと感じた。流離うことは、生き続けることである。
愛する人がいれば人は生きていける。母親への愛に見放され絶望していた二人は、偶然の出会いによって愛する人を見つける。絶望から救われる。
これから先の人生がどんなに辛いものであっても、愛する人がいる限り二人は生き続けるだろう。生き続ければ二人の人生に希望の光が灯る日は必ず来ると信じたい。
こんにちわ。コメントありがとうございました。こちらこそよろしくお願いします。
みかずきさんのレビュー、綺麗で素敵でいつも感心しています。
私は自分という人間がダダ漏れるので、レビュー書くの苦手ですが、なるほどこういう風に書けばいいんだなぁと。
横浜から山梨に引っ越してきて思うように観たい映画が観れず残念です
コメントありがとうございました。
> 廣瀬すずは自分の地元出身なので
みかずきさんも静岡県ご出身なのですね。自分もそうです。自分は東部地方ですが。
「いやあ、静岡出身の有名人っっても、長澤まさみと広瀬すずくらいしか思い当たらないですわ」というのが、秘かな地元自慢です。
> 李相日監督作品ということで娯楽作品ではなく超シリアス作品だと覚悟していたが
そっか。覚悟して観るべきだったんですね。自分は、静かな静かな、それでいて強大な怒りが水面下に渦巻いているような映画だなあ、と感じました。
みかずきさん、コメントありがとうございました。私も二人に未来は無いと思っているわけではないんです。でも、山奥で生活するのでもない限り、理解しようとする人まで拒絶して、二人だけで生きていくことは出来ないと思います。
みかずきさんのレビュー、深いですね。そして新たな発見がありました。
二人とも母親に見放され絶望していた中での邂逅、強い絆があるんですね。
“流れていく”とは、生きていくことという部分にも新たな気付きが!
ありがとうございます😊