「原作未読。演技は素晴らしかった。」流浪の月 こまママさんの映画レビュー(感想・評価)
原作未読。演技は素晴らしかった。
私の斜め前方に座ってたおじさんが上映中に何度かケータイを観ていてその光でだいぶ気を散らされて。やめてと言いたかったけどすぐ声をかけられる距離ではないし私が動いたら他の人にまで迷惑がかかるしこの不条理はどうしたら良いの?と、映画のテーマと勝手にリンクさせながら観ていました。レベルが違うけど。
初見はちゃんと集中して観たかったな〜。
上映前の舞台挨拶中継付きの回を観ました。
その時のお話でそれぞれの役割りを知ったくらい、全く事前情報無しで行ったんですが、原作を読んだ人が観る前提で作られた映画なんですかね。いろいろと説明不足というか、納得できないこともありました。
更紗については、親戚の家に帰りたくなかったこととか、好きになってくれる人にすがってしまう気持ちはわかったけど、文については、お母さんとの関係が、文がそこまで傷ついてしまう理由が、イマイチ納得できなかったな。
文のお母さんは、文の病気を知らなかった?思春期にもなったらそういうこと母親に言えないのもわかるし、だとしたら、文とお母さんが分かり合えないのもわかるけど。映画を1回観ただけだと、お母さんはうまく育たなかった木を抜いただけで、それを目撃した文が勝手に傷ついたようにしか見えないから、お母さんがちょっと可哀想でした。
亮の過去も原作には描かれてるのかな?映画では亮はおばあちゃん思いで家族は仲が良くて、どうしてDV男になったのかわからなかった。
まぁ亮についてはぶっちゃけわからなくてもいいんだけど、あゆみのことがほとんどわからなかったのは拍子抜けだったな。
多部ちゃんが舞台挨拶に出てきたってことはだいぶ重要な役なんだろうなと思ってたのに、あれじゃ通りすがりと変わらない。職業を原作と変えて看護師にしたのも、旅行の思い出話の中で「血は見慣れてる」って言うためだけだったし。
普段のふたりやあゆみの思いがほとんど描かれてないから、あゆみの感情が爆発するシーンは良かったけど、だからこそ取ってつけた感じになっちゃった。
誘拐事件の最中だけが更紗と文にとって幸せな時間で、その思い出にすがって生きるだけだと思っていた中で再会したふたりが惹かれあうのは必然で、誰に何を言われてもまた流れていけばいいと覚悟できたなら、これはハッピーエンドということなのかな?
うん、少なくとも更紗と文は、一番良い選択ができたよね。
鑑賞後感は、全然ハッピーじゃなかったけど。
誰もが言えないことを抱えているし、そのせいで悲しみの連鎖がうまれてしまうことがある。
そう思って周りの人に接すれば、もう少し優しい世の中になるのかもしれないけど、気持ちを隠されたらもうわからないよね。
自分からもう少しオープンにできたら、自分も周りも楽になるしもっと幸せに近づけるのかもしれないと思った、言っちゃえば反面教師にしたいような映画でした。