「【”お母さん、僕は矢張り外れですか・・。”心に刻まれてしまった様々な傷と再生を描く作品。人間の真の善性と、僅かな悪性。そして意図せぬ悪意と誤解。今作はずっしりと重みのある見応えある作品でもある。】」流浪の月 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”お母さん、僕は矢張り外れですか・・。”心に刻まれてしまった様々な傷と再生を描く作品。人間の真の善性と、僅かな悪性。そして意図せぬ悪意と誤解。今作はずっしりと重みのある見応えある作品でもある。】
ー 上弦の月や下弦の月、満月を会社帰りにたまに見ると、人間の心の様だな・・、と思うことがある。今作はその様な、人間の複雑な心模様を、描いている。そして、観る側は気づく。”もしかしたら、心の一部が欠損したまま生きている人もいるのではないかな・・”と・・。-
◆感想
■今作は印象的なシーンが多数あるが、私は劇中唐突に描かれる幼き佐伯文(長じてからは、松坂桃李)が帰宅した際に、彼の母親(内田也哉子)が、枯れかけた樹を無表情に、庭の地面から間引きのように、引き抜いているシーンである。
このシーンは、今作の”軸”であると、私は思った。
・文が家に帰りたくない小学生の更紗(白鳥玉季。抜群である。長じてからは、広瀬すず)が公園で読書中に雨が降り出した時に、差し出した傘のシーンは、劇中、複数回描かれる。そして、文は更紗に”家に来る?”と問いかけ、更紗は嬉しそうに付いてくる。
- 文の真の善性故の行為である。彼の心の傷による行為でもある事が後半描かれる。上手い構成である。ー
・小学生の更紗が、文の家で自由奔放に振舞う、安心しきった姿の数々。そして、文が”死んでいるのではないか”と思った程、熟睡する姿。
- 徐々に明かされる、更紗の父が病で他界し、母親は男を作って家を出て叔母の家に住んでいる事。そして、叔母の子タカフミが夜中に更紗の身体を頻繁に触りに来ること。
後半明かされる文の母親に抱いた気持ちと、更紗の母親に密かに抱いている哀しき思いがシンクロしていく。ー
・更紗を”誘拐した”事で少年院に入った文。だが、それを”自分を助けてくれたのに文の人生を台無しにしてしまった”と責める気持ちを抱きながら、誰にも愛されずに過ごして来た更紗。
- 彼女が自分を愛してくれたりょうちゃん(横浜流星:良くあの役を受けたなあ。けれども、自己中心的で、自信家でありながら更紗に捨てられた途端に脆さを露呈する男を好演している。)に惹かれ、同棲した理由が良く分かる。-
・更紗が、久しぶりに会った珈琲しか出さない喫茶店を営んでいる姿を見た時の安堵した表情。
- 彼女が抱えていたトラウマが僅かに解けるシーンであり、広瀬すずがその心持を絶妙に演じている。-
・更紗がりょうちゃんから文と会っている事を理由に暴行を受け、(女性に対し、殴る蹴るとは言語同断であるが、その程度の男である事は上記の通りである。)血だらけで町を彷徨い、行きついた先は文の喫茶店の前。
- そして、再び文に”家に来る?”と言われる・・。文が善性の塊である事が良く分かるし、更紗も文への距離を再び近づけるきっかけにもなるシーンである。-
・二人の関係性が、下衆な週刊誌に取り上げられ、再び文は追い詰められていく。そして、閉店した喫茶店で、文は更紗に対し、自分の真実の姿を見せる・・。
- 文という中性的な名前の所以が分かるシーンである。それにしても、文を演じた松坂桃李は矢張り凄い。肉体を激変させ、男のオーラを消し中性的な人物を自然に演じている。-
<今作品は、観ていて辛いシーンも多いが、ラストの文と更紗が全ての周囲からの好奇の目を気にせず、一緒に生きて行くと決めた橋の上でのシーンは、僅かな希望を感じさせる。
心の欠損を、二人は一緒に生きる事で埋め合い、新しい人生を歩んでいくのだろうと私は思ったのである。
劇中で流れる、悲し気なピアノの旋律も、この作品の趣を高めていると思った作品でもある。>
NOBUさんこんばんは!NOBUさんのレビューを読んで、思い出して再度みたくなりました😊
音楽も美しかったですね🥺
文が帰宅後、文のお母さんが木を引っこ抜いていたシーン、初めはなんのことか全く分からなかったんですが、ラストの文の秘密を知って全てつながりました!
今晩は。
あの松坂桃李さんのラストは、監督が始めからあそこまで要請していたのか、松坂さん本人が望んだのか。
いずれにしても凄いチーム力を感じる映画でした。
映画は公開初日に見ました。
下書きは、『トゥルー・ロマンス』を少しでも多くの人に観ていただきたかったので、早目に投稿しました。