「嘘喰い原作未読者入門映画。視聴を悩んでる人は観てください。」嘘喰い 原作を読んでくださいさんの映画レビュー(感想・評価)
嘘喰い原作未読者入門映画。視聴を悩んでる人は観てください。
主演俳優のファンや若年層をターゲットに大衆向けにアレンジされた嘘喰い原作未読者入門映画。原作ファンにも配慮された努力作。
※原作完読済ファンが書いています。
まず初めに、これだけは言わせていただきたい。自分は実写映画に完全な原作再現はこれっぽっちも期待していない。何故なら、全く同じなら原作を読めば良いからだ。原作との違いを楽しむのも実写映画の醍醐味であると自分は思う。
原作ファンと言ってしまうと主語が大きいが、一読者の自分が実写映画に望んでいることは、この映画を間口にして原作を読み始める人間が増えること、その一点だけだ。
今作の最も特筆すべき点は横浜流星さんの演技の作り込みだ。キャラクター性はもちろん、様になる演技が素晴らしかった。原作とは設定が違う部分もあるが、徹底的に“斑目貘”を演じようとする様に好感がもてた。横浜流星さんの良さも兼ね備えた実写版“斑目貘”として完成されていると感じた。彼のファンは見に行って後悔することはまずないだろう。
問題とされていた漁村でのシーンでは映画オリジナル展開のギャンブルが行われていた。しかしギャンブルシーンの雰囲気は原作と近く(プロトポロス編頼母子講の辺り)、自身の好感度は高かった。
第一話のルーレットゲームや廃ビルの悪魔(ロデム編)等の他のゲームもスタイリッシュかつ今風に仕上げられており、映像だからこそ分かりやすくなっている。過度なグロシーンもないため幅広い層が視聴できるよう配慮されていると感じた。
この映画は斑目貘のギャンブルが好きな人は概ね満足できる仕上がりであると感じる。嘘喰いという漫画の主軸は“斑目貘”がギャンブルで勝ち続けていく様を見せてくれるというものなので、主演がかっこいいと思えた人は原作もハマることが出来ると思う。読んでください。
斑目貘以外のキャラクターの雰囲気も概ね満足であった。梶隆臣についても一般人としての役の描かれ方も演技も大変良いと感じた。だが、彼が斑目貘について行こうとする動機の描かれ方は個人的に少々残念であった。映画の描写だと1度ギャンブルに勝った刺激的で美味しい経験が忘れられなかったために斑目貘に着いていき、死にかけたから離れようとする自分勝手なやつと思われかねない。
これは過激ファンの戯言だが、原作での梶隆臣は借金返済を手伝ってもらった後、何も無い所からギャンブルで全てを手に入れる、そのための術を知っている斑目貘という男に強く憧れ、持たざる者である彼は自分も貘の様になりたいと思い貘との同行を決める。時には自身と斑目貘との能力の差に悩み、時には凄惨なギャンブルで精神を壊し離別しそうになるタイミングもあるが、苦難を乗り越え自分らしさを保ちながらも同じギャンブラーとして斑目貘と並び立とうとする、そんな人物だ。決して恩人に工面してもらったお金を遊びに使う男ではないと自分は思いたい。(豪遊シーンが駄目な訳では無い。あれはあれで観客の共感を呼び、映画に緩急を与える良いシーンだと思う)
そして原作で貘さんの事を嘘喰いと呼ぶこともないです。(これは未登場キャラの役割を兼ねている部分があると思う)未熟ながらも邁進し成長していく男、梶隆臣の事も原作で見届けてください。ファラリスの雄牛、矛盾遊戯面白いです。
彼を始めとし、マルコ、蘭子等のキャラクター性を深掘りしきれていない印象であるが、120分で全てをだしきるのは無理がある。自分と同伴した未読者も「折角マルコに改名したのにあれで終わり?」と不満を漏らしていた。同感であるが、尺の都合上致し方なしと涙を飲むこととする。原作ではハングマン編でも大活躍するので読んでください。そしてマルコは本名です。
蘭子のキャラクターの違いは公開前から批判を呼んでいたが、原作と同一人物と思わなければ特に気になりません。自身とギャップのあるキャラクターとわかっていながらも懸命に演じる白石麻衣さんの姿は自分にとっては好印象でした。衣装も必見です。自分は彼女に詳しくないが、可愛らしい彼女の姿はファンは見て損はないと思った。
今作の気になる点はいくつかあるが、これ以上は割愛する。前情報のみで本作を酷評し、よく知らないけど原作通りじゃないとかどうせゴミ映画じゃんwwwと見る予定がない人は騙されたと思って劇場に足を運んで欲しい。そして原作を読んで欲しい。今なら書店に並んでいます。
説明不足や登場人物の行動に違和感を感じる部分もあるだろう。目の肥えた方にはゲームに物足りなさを感じる箇所やオチが急じゃね?と思う所もあるかもしれない。それは全部原作を読めば解決します。今作は入門編にすぎません。この映画を見て少しでも嘘喰いという作品に興味を持てたなら、斑目貘が仲間達とどの様にして再度屋形越えに至ったのかを是非原作で見届けて欲しい。本当に面白い漫画です。あと貘さんの名前は斑目貘。班目でもないし、漠でも獏でもありません。彼の名前は斑目貘だ。原作ファンと名乗る人で間違える人は悔い改めてください。
くどいようだが、自分の願いはこの映画を見て原作を読んでみたい、漫画を買おうと思う人が1人でも増えて欲しいと言うことだけだ。某ラブコメ作家が言っていたことには、実写映画のメリットは普段自身の作品に触れることの無いような人々に作品を知ってもらえることだそうだ。たまたまチケット購入で隣合った若者は「嘘喰いって原作漫画あったの?全然しらね〜」と友達同士でぼやいていた。そう、悲しいことにメディア化されていない漫画に対しての一般人の認知度なんてものはその程度なのである。公開前に既に検索予測で“ひどい”のワードがでている状況を見て、このままではいけないと思い筆を取った。映画化を機に購読者が増え、嘘喰いの今後の展開が広がって行くことを切に願う。映画製作者様には厚く御礼申し上げます。
自分にとっては視聴後すぐに原作を読み返したくなる、そんな映画であった。DVD化された時は原作を片手に再度視聴したいと思う。