「組織の中での人間的な成長の物語」異動辞令は音楽隊! talkieさんの映画レビュー(感想・評価)
組織の中での人間的な成長の物語
<映画のことば>
セッションって、知っているか。
俺は音楽隊で、お前は刑事だ。
おんなじ警察官だ。
違うパート同士でセッションする、それでいいじゃないか。
最初は不本意ながらも、異動することで新境地が拓けたのなら、成瀬刑事にとっても得たものは、大きかったと言えるのではないでしょうか。
大きな組織で働く限り、本人にとっては本意でないポストに例え就くことがあってすも、そこに根を下ろして、そこで本領を発揮する。自分なりに。
組織人としては、それ以下も、それ以上もないのが宿命とも思います。
また、映画作品としても、主演が阿部寛というのも「映えていた」と思います。
ことに楽団はパートごとの「チームプレイ」が不可避的に要求される世界。
「のめり込み」というほど、同僚や部下どころか、上司まで「そこ退け」と言わんばかりの「個人プレイ」で仕事(特詐欺事案)に執心していた成瀬刑事が、音楽隊に異動したことで、周囲や家族との絆を深めたり、職場でも自分自身の立ち位置を見直したり―。
組織の中で働く者の一員としては、「人事の妙」っていうのは、こういうことを指すのかとも思います。
(ちなみに、成瀬刑事の「警部補」という階級は、一般の官公庁に引き直せば係長級=仕事の上では、いわば最前線の「斬込み隊長」という位置づけで、彼の強引な捜査手法も、けっして肯定できるものではありませんが、反面、立場としては、そういう設定も宜(むべ)なるかと思わないわけでもありません。)
冒頭の「映画のことば」は、そういう成瀬刑事の人間的・人格的なな成長を象徴するものとして、外せないと思います。
総じて、充分に佳作の評価が可能と思います。評論子は。
(追記)
子どもの頃に和太鼓をやっていたという設定ですから、もともと素養はあったという設定なのかも知れませんが…。
確かに成瀬刑事が音楽にハマるきっかけは手薄いかなぁとは思います。評論も。
ただ、結局は身を引いてしまうのですが、シングルマザーの春子が、本務・家庭との両立に苦労しながらも、音楽隊の仕事にも頑張っている姿が、少なからぬ影響を成瀬刑事に与えたと、評論子は考えます。
また、市民にも、音楽隊の演奏を楽しみにしているコアなファン(実は評論子もその例に洩れない)がいることを知ったことも、見逃せないと思います。
(追々記)
本作で、少しだけ気になることがあるとすれば、それは時々「音楽隊は左遷ポスト」という趣旨のセリフが出てくることです。
「これで失敗したら、音楽隊じゃあ済まないぞ。」
もちろん、評論子自身も警察組織で働いたことはないのですが、本当にそういう意識なのでしょうか。現実に。
映画製作上の脚色と信じたいところではありますけれども。
メンタル的にも厳しいと言われる司法警察・行政警察の中にあって、「市民と警察との音の架け橋」(評論子か住む都道府県の警察音楽隊のキャッチフレーズ)として、音楽隊のパートで日々努力を惜しまない方々に、失礼に当たらなければ良いと、評論子は思います。
(追々々記)
いくら検視官が目こぼししてくれたとは言っても…。
霊安室から音楽♪アメイジング・グレイス♪なんか流れて来たりしたら、誰かが気づいて、大騒ぎになるんじゃあないですかねぇ、ふつうは。
笑いましたが…。ま、映画ですから。その点は、片眼(両眼?)をつぶることにしましょう。
満塁本塁打さん、コメントありがとうございました。(レビューも、いつも参考にさせてもらっています。)
そうですね。警察官も公務員ですから競争試験での採用が原則ですが、音楽隊の楽長(隊長)みたいな特殊な職は、選考職(民間と同じように面接で採用してよい)となっているようです。経歴を拝見すると、音大で作曲や指揮法を専攻してきた方が多いようです。
評論子の地元の音楽隊もそうですが、プロの演奏家とのコラボも多いので、やっぱりそれなりの(失礼?)実力を備えた楽団なのだと思います。
私も知り合いに警官👮♀️いますが、特殊なので それなりの素養があってそれ前提で採用された方が多いと聞きました。楽器、大人から習得は難しいかなと 聞く限り左遷では無いですね。成長物語としては佳作でした。😊
りかさん、こちらにもコメントありがとうございました。
そうですね。評論子の住む都道府県の警察音楽隊も専務隊と聞きます(ちなみに、毎年の全国大会でも優勝候補の常連と聞き及びます)。
音楽隊の隊長は、その職名とは別に「楽長」と呼ばれているそうで、警察も、自衛隊も、音大出身者を招いていると聞きました。
共感が抜けていましたでしょうか。大変失礼いたしました。
他の方のレビューで目にしましたが、大都会の警察音楽隊は、プロ楽団だそうです。大体の自治体のは本務と兼務らしいとか。
音楽隊が左遷というのは、ストーリー上だと捉えておりました。
あまりに失礼ですから。
自衛隊の歌姫もソロで歌えるところとして自衛隊に志望されていますし、どこもプロ並みかと。