「音楽隊は地域住民との架け橋」異動辞令は音楽隊! 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
音楽隊は地域住民との架け橋
とても良かったです。
音楽のチカラは殺伐した成瀬の心ををよみがえらせた。
ワーグナーの「ワルキューレ」を聴くと、異様に興奮しますし、
「威風堂々」「第九」を聴くと、なんとも説明できない幸福感に
満たされます。
ワーグナーはヒトラーが軍人を鼓舞するために重用したことで
知られてきますが、
音楽には心を動かすチカラがあります。
成瀬警部補(阿部寛)は、それまでのコンプライアンスに反する行動から
音楽隊へ異動を命じられ不平不満いっぱいでしたけれど、
昔、幼い頃に打ち込んだ和太鼓。
それは夏祭り、若い母親の笑顔、綿菓子の甘さ、などなど
思い出深いものだったと想像します。
楽器がドラムに変わって、持ち前の負けず嫌いもあり、
ドラムに打ち込む成瀬。
春子(清野菜名)のトランペット
北村(高杉真宙)のサックス
国沢のチューバなどのメンバーとのセッションに次第に
喜びを感じて行く。
心も穏やかになり、
犯罪者と向き合う刑事の顔が、普通のサラリーマン的に
視線さえ穏やかになります。
この変化を阿部寛は自然に演じていてさすがです。
後半で、時間不足からちょっと強引な展開もがありましたが、
それを補ってあまりある人間ドラマ。
人の心を思いやれなかった無骨な男の、再生の物語でした。
ストーリー
成瀬警部補(阿部寛)は刑事畑一筋で、殺人・強盗・窃盗など、
自分の正義感が強いあまり、犯人逮捕以外は見えていない。
家庭生活より事件解決に心を砕いてきた。
そのため妻は去り、娘の心を傷つけることも多かった。
母親は認知症の症状を見せて、ストレスの多い日常です。
ファーストシーンの本部長(光石研)への尊大な態度は、傍若無人で、
面目をつぶされた本部長の頭に血が昇り、それ以後、
成瀬を目の敵にするのもある意味で当たり前。
阿部寛の怒鳴り声はビビリの自分が震え上がるほどで、
ペアを組む磯村勇斗にとってパワハラ上司そのもの。
そして遂に栄転の名目で、送られ、田舎町の音楽隊の練習場へ
向かいます。
成瀬の心には現場を外された怒りと虚しさが・・・
音楽隊で成瀬はどう気持ちと折り合いをつけて行くか、
そういうストーリーです。
冒頭の「アポ電強盗」シーンから夢中で観ました。
『ミッドナイト・スワン』とは180度転換の刑事物+人間ドラマ。
内田英治監督の原案のオリジナル脚本。
アポ電強盗の逮捕!
警察音楽隊の存続危機!
娘との和解!
ラストは音楽隊の定期演奏会で締めくくる。
(流行りのマーチングバンドも取り入れて、)
最高に楽しい仕上がりでした。
レビューを拝読させていただきました。
褒めてられるのに。阿部寛さんの魅力満載だと思います。
多分、普通ああいう配置転換は無いと思いました。磯村勇斗の投書だけで異動しないと思います。
忘れていた人間の当たり前の感情を取り戻したのですね💕
共感コメントしていただきましてありがとうございました😊
自衛隊の歌姫の方、独唱で歌えるところを探して自衛隊を見つけられたとか。阿部寛さんは、映画の中でも指導していた方だったと思いますが、その方に猛特訓を受けられたとか。阿部寛さんの魅力ある作品、ということで、他はあまり無しで。
ワルキューレの騎行といえば『地獄の黙示録』、威風堂々なら『時計仕掛けのオレンジ』と、オーケストラのスケール感ある曲の数々は、忘れられないシーンにさせてくれるパワーがあります。