「これは未来の日本の姿」コレクティブ 国家の嘘 yoneさんの映画レビュー(感想・評価)
これは未来の日本の姿
ルーマニアの医療汚職事件を追ったドキュメンタリー。
主人公はタブロイド(スポーツ新聞)誌の記者。
医療用の薬剤を薄めて納品していた企業の不正・中抜きから始まり、その企業経営者の自殺(おそらく他殺)、大手病院の理事長の裏金問題など、本当にあちこち不正だらけ。保険相(大臣)が話していた通り、土台が腐っており腐臭を放っている。どこか1つを改善すれば問題が消える、という簡単な状況ではない。
ルーマニアと聞くと、チャウシェスクを思い出してしまう。
30年前、独裁者として君臨したチャウシェスク時代は旧共産圏だったので別の恐怖があったことは想像に難くないが、民主化したあとも皆が金の亡者となり不正の温床に。苗床とも言える。この映画で扱った状況は、30年経ったその末路、ということなのだろう。
今の日本はここまで酷くはない・・かな?
よくよく考えてみると、このコロナ禍で次々に明るみに出た、ほぼ一党独裁の政権の劣化度、政治家の無責任さ、国民の無関心さ、医系技官や医師会などの医療業界の闇は、ルーマニアと比較しても決して負けてないかもしれない。政治への絶望感も含めて。
むしろ、主人公のような記者が国民に認められる、ということが日本ではありえない。
そういう意味でメディア状況はルーマニアの方が良い。記者会見で大臣に厳しい質問をガンガンやってたし。大臣が執務室っぽいとこで議論してるとこにカメラが入ってるのも信じられないもんな。。。政権の広報と化した日本の大手メディアなど比較対象にもならない。主人公の新聞社は、日本で言えば週刊文春だろうか?まぁ、文春の記者にあそこまで気骨があるとは思えないけど。。
最後、保険相と父親の会話が聞いていて痛々しかった。
この国は30年経ってもどうせ変わらない。
まるで、日本のことを言われているようだった。
結局、ルーマニアも日本も、国民の政治への無関心さにより行き着いた末路でしかない。むしろ、ジャーナリズムという意味では、日本の方が状況は悪い。あれだけ、政権の大臣に切り込めるようなジャーナリストは、記者クラブに守られた大手には1人もいないので。
私は、日本は早く一度凋落した方が良い、と考えている。
その方がより早く回復できるので。
それくらい、今の日本の社会システムは、ルーマニア同様、腐臭を放っている。
その崩壊が進んだらどんな社会になるのか?
その一端を、この映画を観て、垣間見た気がした。
日本ではもうすぐ衆議院選挙があるが、日本人はどうせまた自民党を選ぶ、と私は思っている。選挙率が停滞したままで。緊急事態宣言も明けて、浮かれた日本人はコロナも忘れて選挙など行かないだろう。
その末路がどうなるか、この映画を観て、今のうちから予習しておいた方が良い。