「エッグ・コーヒー」アリスとテレスのまぼろし工場 いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
エッグ・コーヒー
ミルクセーキみたいなもんかと思ったら、ベトナムコーヒーのコンデンスミルクに卵黄を入れて攪拌したものを上に乗せるという飲み物らしい コーヒーに直接生卵をぶち込むイメージを始めに想像していたので、何にせよ"ネーミング"って大事だなと思った次第
さて、本作題名だが、アリスやテレスなんて名前の対象物や者は出てこない これが、上段のエッグコーヒーの件と関連付けた 題名だけみて映画の内容を想像するなということ 勿論、アリストテレスというギリシャ哲学者の格言が台詞であるが、自分はその方面が全く無見識なので、その影響も感想に取り入れられない あくまでストーリーと作画の感想のみである
プロットとしては時間固定(1日が繰り返されるが季節や身体の成長・変化は進まない)中での閉塞感をベースにした青春ストーリーといったところだろう 『あの花』からの一連の私小説的作劇の監督なのだからその辺りは又新たなアイデアを織込んだ構成になっている
但し、物語展開が困難を極める流れになっているのが腑に落ちないのである 多分、この順序は、テレビアニメで10話程分ならば順当な進め方であろう それを映画で、しかも実世界と勘違いさせる構成にしたのかが、中々のクセモノである チャレンジングなことは大いに評価したいのだが、観客への信頼感が過度なのではと疑ってしまうのだ 登場人物の秘密位のレベルならば引っ張っても世界観は揺るがないが、そもそもの設定自体が後ろに押してしまうと、物語に感情移入する時間を削がれるのではと思うのだが・・・ そして後回しになった分、監督御得意のクライマックスの高揚感も、上手に演出できていないのかなと感じてしまうのである
オオカミ少女、失神ごっこ、高いところの飛び降り、等々伏線の回収とクライマックスの混ぜ込みは、かなりの理解力速度を要求されてしまう
核心的ではなく、メタファー的な湾曲表現で語られるが、父親と娘の恋愛要素、それに伴う母親の嫉妬 又は狭い世界での恋慕とかのやや倫理観を揺さぶるストーリーは、監督独自の谷崎史観に基づいた設定でそれ自体は面白い挑戦的内容であるので、そこは応援したいし共感を大いに持つ 特に、キスシーンの歯がぶつかる音はアニメではなかなか描かれない希有なシーンであろう
監督が試してみたいという強い意志を伝える作劇として、大いに称賛したいのだが、今回は自分の読解力の無さ故、申し訳ない批評になってしまった事を恥じる
コメントありがとうございました!
こちらこそ、素晴らしい映画評を読ませていただきました。
おっしゃる違和感、とてもよくわかります。
なんか最後盛り上がってるんだけど、勢いにのせられてるだけで、今一つ現実との境界線の話がよくわかってないっていう……(笑)。