「【”もう大丈夫だから・・”とさっちゃんは微笑んで言った。静謐で、空白の余韻に浸れ、観る側に様々な類推を自然にさせてくれる映画。さっちゃんの日々を淡々と映し出す中で、人間の善性を描いた作品でもある。】」春原さんのうた NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”もう大丈夫だから・・”とさっちゃんは微笑んで言った。静謐で、空白の余韻に浸れ、観る側に様々な類推を自然にさせてくれる映画。さっちゃんの日々を淡々と映し出す中で、人間の善性を描いた作品でもある。】
ー 東直子さんの詩「転居先不明の判を見つめつつ春原さんの吹くリコーダー」にインスピレーションを与えられた杉田監督が奏でた、静謐で哀しみを湛えた若き女性の生きる日々を綴った映画。-
◆感想 <Caution! 内容に触れています。>
■さっちゃん(荒木知佳)は、いつも口角を上げて、微笑んでいるように見える。
・さっちゃんに宮崎に帰る事になった日高さんが、自分の住んでいたアパートを”住みやすいし、安いから・・”と家具と共に引き渡すシーンから物語は始まる。
・そして、様々な人がさっちゃんの周りに集まってくる。
それは、さっちゃんが働く喫茶店で、賄いのスパゲティを食べている所を撮影しても良いですか、とお願いする大学生の男性であったり、
葬式帰りの夫婦に大きな筆で、風林火山と書いてあげたり・・。
きっと、さっちゃんの人柄であろう。
彼女はそんな無理なお願いにキチンと応えてあげる。
・伯父さんは、さっちゃんの様子をアパートまで見に来る。
- 突然、泣き出す伯父さんの姿・・。
観る側は、さっちゃんの過去に何かあったのだろうと推測する。-
・叔母さんも、さっちゃんのアパートにやって来て、伯父さんと鉢合わせるが、咄嗟に押し入れに隠れ、リコーダーを吹き始める。
- クスクス笑えるシーンであり、伯父さんと伯母さんがさっちゃんをさり気なく、心配している様も垣間見える。-
・日高さんの知り合いの女性が、さっちゃんのアパートに来た際に突然、涙を流すさっちゃん。
・夜、独り静かに筆を持ち、何かを書いているさっちゃんの姿。
- そして、その後一瞬映し出される”転居先不明の判”が押された葉書。宛先人は春原雪と記載されている・・。-
<一片の詩から、紡ぎ出された静謐な作品。
さっちゃんの身に起きた哀しき出来事をさりげなく暗示しつつも、詳細には触れず、さっちゃんの生活する日々を淡々と映し出す中で、人間の善性を描いた作品である。>
<2022年2月20日 刈谷日劇にて鑑賞>