劇場公開日 2021年12月10日

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「親が退場したあとの その世界。 三人の兄妹の物語。」ローラとふたりの兄 きりんさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0親が退場したあとの その世界。 三人の兄妹の物語。

2024年2月4日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

親が死んだあとには、
残った兄妹たちは こんなふうに生きていくんだねと
僕は笑ったり、ちょっと泣いたりしながら、
しみじみと三人の光景を見ていました。

105分。
軽妙洒脱な会話劇。
屋外撮影のごちゃごちゃしたカメラが綺麗。
フランスのラブコメです。

でも単に妹ローラの恋をラブラブで終始追うというよりも、いい中年になった兄妹三人が、
離婚したり、
失業をしたり、
反目やプライドでお互い素直になれなかったり、
元嫁や息子の幸せを祈っていたり
と、
この映画は、ミドルエイジの三人ならではの、実に具体的で、観る者たちの共感がひしひし湧き上がるような、現代の我々のストーリーなのでした。
つまり僕らみんなも全て体験し、思い当たることばかりの、そんな人生の春夏秋冬が良いのです。

(しかし、
突如「日本人」がマイナスな例として登場するのには、あれは苦笑でしたね )。

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毎月第1木曜日には、お父さんお母さんのお墓の前で、子供たちが近況報告するなんて、とてもいいんじゃないかな。

うちの子たちも「兄•兄•妹」です。
ローラの家と同じ構成なんです。
それでこのタイトルにつられて手に取ったレンタルDVDでした。

30代、40代となり、それぞれ別の道を選び、親と別れ、そのうち親と死別し、
それでも三人が想いを掛けあって、試行錯誤で助け合っていってくれれば ―
先に死ぬ僕たち=墓の下の親たちも、それで万事安心すると言うものです。

どんなにたくさん否定しようとも、この三人兄妹はその親たちの性格を引き継いでいるはず。
・長男の甚六で、ボーっとして気が利かないけれど、それでも足りないながらも弟と妹のために頑張ろうとはしている長兄。
・真ん中に挟まれてずっと我慢と努力を続けてきたからなかなか素直にはなれないけど、責任感と優しさは兄妹内でもこんなに ずば抜けている次男坊。
そして
・末っ子で抜けていて、自由気ままに育ったかのように見えるけれど、いろいろ悩んでいる兄たちを母親のようにじっと見守っている繊細なハートの末娘ローラ。
彼女、図太いところも実はある。
ローラは三人のかすがい役だったのでした。

バラバラのようでいてとっさに同じセリフや口癖。そして似たような失敗を繰り出してくれて「ははーん、何だかんだ言ってもやっぱり こいつ等兄妹なんだよなァ」と思わせる。
これ脚本家の小技。

本作は、文芸物の小難しいフランス映画ではないです。でもフランスの若者文化にもちゃんと、このようにして《家族の絆》《家族の情》が残っているのが
何となく嬉しいですね。

僕は男兄弟だったので、自分に妹がいればどんな気分だったろうかと思います・・

そんなこんなで
我が子《三人兄妹》の幸せを、遠くから毎日祈っている僕です。

きりん