リング・ワンダリングのレビュー・感想・評価
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神秘的、幻想的漫画家物語
かつて生息したニホンオオカミを題材しながらも、東京大空襲で亡くなった人たちへの鎮魂歌となっている作品。季節外れの花火の意味するものは何だろうと考えながら物語は進み、草介の描くオオカミの姿、劇中劇ともなる戦前のマタギ(?)の姿、そして工事現場から誘われるようにして一夜を過ごした川内写真館。 幽霊じゃないかと思った~などとタイムパラドクスの逆転現象的発言がまたいい。想像はたやすいのに、メッセージ性があることに終盤まで気づかなかった。神秘的な大木、古来より秘めたる力が漫画家のペンに乗り移る。後世に語り継がねばならない本質まで描かれていたのだ。 そうしてラストのシュールなオオカミの姿。まるでジブリの世界観。絶滅した動物たちへの哀悼の意味もあったのだろうか、同じように人間の命の大切さも控えめであるが訴えてくる。なかなかの作品。
漫画家を目指しながら工事現場でアルバイトをする青年の不思議な体験。...
漫画家を目指しながら工事現場でアルバイトをする青年の不思議な体験。 なぜ彼だけが一時的にタイムスリップしたのかは謎だが、川内家での出来事はノスタルジックでよかった。 また、彼が描く漫画が実写化された世界も出てきて、何とも不思議な雰囲気になる。 それにしてもラストの描写は一体何だったのだろう。 巨大なオオカミの体の上で眠る青年、シュールだ。
土地の記憶をめぐる日本的な奇譚
タイトルと題材から、ニホンオオカミの幻影に導かれるように彷徨する話かと思っていたが、東京下町で空襲で亡くなった女性に導かれる話だったとは、ちょっと意外。しかし、土地の近過去の記憶を掘り起こし、現在とのつながりを再認識することがねらいだとわかると、納得。 笠松将、阿部純子ともに和風な顔立ちで、日本的な奇譚と言えるこの作品の雰囲気にぴったり。阿部純子の初登場カットには、ゾクッときた。漫画パートでは、冬山のロケーションが素晴らしく、劇画チックな演出も許せる。安田顕と片岡礼子は、特別出演の感じで、あまりハマってはいなかった。 ニホンオオカミは結局最後まで出てこないのか、と思った中でのラスト。賛否両論あるだろうが、テーマがくっきりと浮かび上がってきて、良かったと思う。この感じは何かに似ているなと考えて、スケールは全然違うが、「惑星ソラリス」を思い出した。 全体として掘り下げは少なく、物足りなさは残るが、こういう作品はこれからももっと観たい。
頭骨リングでワンダリング。
公開時に見れず、下北沢で再演にすべりこむ。 ニホンオオカミの漫画描いてる男の子が、バイト先の工事現場でオオカミ?犬?の頭骨を拾う現実世界と、逃げた犬を探す女子の戦中の写真館、そして彼が描いてる漫画の実写パート。 なかなか複雑な3つの世界をオオカミ?犬?の頭骨を軸に上手く整理しスムーズにリングをワンダリングできた絵も美しく上質なファンタジーであります。 気になったのは会話の台詞。 役者がみな達者な方達なので台詞、脚本の問題ではないかと思う。三つの世界を上手く纏められてたので惜しかった。 しかしあの骨、犬だったのか? ニホンオオカミだったのか? まあいいや。 下北沢のK2はコロナ禍に出来た新しい箱なので、現金が一切使えず年寄りに厳しい映画館であった。 偶然知り合いがいたから見れたものの、パンフもサントラも買えなかった。 強く改善を求める。
ニホンオオカミはあまり出てきません
ニホンオオカミが見たいのと、 ちょうど監督の舞台挨拶もあるとのことで、 思い立って観にきてみました。 これ、自分のコンプレックスでもあるんですが、 必要のない情報が多すぎて、必要な情報は欠けている。 これ、どうにかしたいやつなんです。 この作品にもそれを感じてしまい…えらい長文になってしまいました(笑) えーと、えーと、、 なんで主人公はニホンオオカミにあんなに思い入れがあったんでしょうか? なんで猟師とニホンオオカミを題材に作品を描いているのでしょうか? ハッと描き始めてからも、ニホンオオカミの画は出てこないのですね。 序盤から、あ…こういうテンポで進む感じですか? と、不安がよぎり… 間伸び感がすごい。みんな大根役者に見えてしまいます。 ヒロイン役の阿部さんもせっかくおキレイなのに、 舞台用のような演技にモヤモヤ。 主人公の笠松くんも、雰囲気良いのに、セリフも動きも心情も共感できず、モヤモヤ。 セリフが悪いのかな… 2倍速で願いたい… 終始気が散っていました。 そこにきて長谷川初範さんや田中要次さんの安定感よ。安田顕さんもなんとなく勿体ない…どぜうは良かったけれど。 浅草なら今でも食べられますね。 遺跡発掘の仕事をしてたことあるもんで、ちょっとワクワクしてたんですが、頭蓋骨の発見もなんだか違和感でした。土木の仕事もナメずにちゃんとやりなさい… そのルーズさも最近の若者感を出すためかしら。 あと、大事な原稿に消しゴムのカス飛ばすのに息をフーッてやるんですかね?製図を書くときは絶対ハケを使うんですけど、漫画はそうでもないんでしょうか。インクで描いてるし、残念な原稿にならないか心配でした。 あと、そっちを削ったら葉っぱが完全に邪魔でしょ… それか葉っぱを取るとか… で、部屋中にオオカミの資料があるほどの情熱はどっから来てるんだーー あぁーーいろいろ気になって集中できない。。 いいとこはですね、 長谷川初範さんのアイヌの衣装みたいなマタギ姿はカッコよかったです。(マタギは東北三県の猟師さんだけって聞いたこともありますから、マタギではないのかな)。 雪駄で川入った後の雪ってめっちゃ冷たそう。 田中さんの衣装もいい感じでした。 山のシーンはキレイでした。 阿部さん、途中から松山ケンイチさんに見えました。+ミムラさん?いや、別嬪さんですよ。 演技もうまいですよ。今回はイライラしっぱなしでしたが、他の作品だときっといいはず。 あとはフォトアルバムの柄がかわいいとか、 森泉岳土さんが描くイラストも素敵です。 スカイツリー、隅田川、向島あたり?の雰囲気も好きです。 ところで、いきなりあんな風に頭蓋骨もらって嬉しいもんです?お嬢さんもどんな気持ちなのか、微妙でした。 全体的にみなさんのリアクションが不自然に感じるのは、私の感性と合わないだけかもしれません。 リング・ワンダリングは、山道を歩いていると迷って同じところを歩いてしまうことを言うそうです。 主人公の人生の迷いや、ニホンオオカミを掴めない心の葛藤も表しているそう。 個人的には、ニホンオオカミがどう描かれるのかと期待値が高すぎました。 ニホンオオカミ目的でなく、自主制作的な雰囲気もお好きでしたら、いい作品だと思います。 あ、国立博物館にニホンオオカミいますよね。
三つの時間軸が絶妙に連動する
三つの時間軸 1.工事現場の表示から令和元年(2019年)と推測した 2.1945年 3.行商人の話から1904年と推測した とそれぞれに登場する人々が絶妙に連動して、良い脚本だと思います。 撮影が丁寧なので画像が美しく、画面がブレたりしていないので気持ちよく見ることができます。 最後のシーンのCGはちょっと驚きましたが、あれは無かった方が良かったのではと思います。 やはり、ニホンオオカミは絶滅したで良いのではないでしょうか。
いいお話
漫画家を志しながら建築現場で働く青年。その題材としたのがニホンオオカミ。実物もなく資料も稀薄でどーしても上手く書けない...。 その時、建築現場で出てきた骨が...。 主人公の現実と、主人公の書く漫画と、主人公が出会う不思議な体験とを、上手く搦めて収めた先品。 素直に面白かった。 ただ主人公が最初と最後があまり変わらず、体験したこと、直面した現実、そこから導き出された結果に対する自信というか一皮むけた感が演技の中であんまり感じられなかった。 最後の最後に オォー♪そうなる♪ って感じがスキです♪ とても面白かったです。
ありそうな話
工事現場でバイトしてる草介は漫画家を目指し、オオカミを題材に漫画を描いていたが、肝心なオオカミがうまく描けなかった。そんなある日、彼は工事現場で、犬を探す女性と出会った。転倒して怪我した彼女を家までおぶって送り届けるが、そこはいつもの風景とは違っていた。草介はタイムトラベルし、過去に起きたことを知ることになったという話。 戦前に物を拠出し食べ物も少ない中で命の重みを知ることになるというのはわかったし、当時はオオカミもいたのだろうとは思うが、中途半端な感じが残った。 ネタバレ的な写真の事も、観客に何を見せたかったのかよくわからない作品だった。
草原と少年とニホンオオカミと。
幻のニホンオオカミを追い求めた結果、思いがけず時空を馳せることになる漫画家志望の青年草介。ノスタルジックな世界観で3つの物語が展開します。予告の印象と違ってかなりファンタジー色強めです。 淡々としてる上に漫画が具現化するシーンが長くて、映像は壮大で見応えあったものの途中でちょっとダレてしまった。ただ、ラストの着地点が秀逸。再びの超絶ファンタジー全開で私はめちゃめちゃ好みの終わり方でした。俯瞰になった時鳥肌立たった。 冬の空に舞う花火に込められた祈り。その一夜に草介をあの写真館に呼び寄せたのはシロだったのか。それともミドリか。はたまたニホンオオカミか。和の雰囲気漂う笠松将と阿部純子の組み合わせも良かったです。この世の中には言葉では到底説明できない不思議な出来事がある。そんな1本でした。
良くできたシナリオ🎵
大林信彦とタルコフスキーを意識してるとしか思えぬ作品で、特にカットの美しさとシナリオの特異性は群を抜いている。劇中主人公の漫画も魅力的でしかも映画の雰囲気に良くマッチしていると感心してたところ、そのマンガを描いていた漫画家、森泉岳土の奥様は何と大林監督の長女だと言う。この因縁とこの映画の独特の雰囲気がまさに不思議なリングである。
絵がうまく描けなくて。オオカミなんですよねえ。
いつの間にか過去の世界に迷い込むが、そのことにさえ主人公は気付かない。気付かないほどに、ニホンオオカミを描くことに執着している。そんな笠松将がいい味出している。囚われている、ともいえるし、取り憑かれている、ともいえる。そう、監督の過去作「アルビノの木」に近い。 まるで定点観測のような、現在と過去。それは現実と異界でもあって、その境目として神社の存在があるのだろうな。さらには、漫画を描く側とその漫画の中の世界も交差して、表と裏が行ったり来たりと巡りながら彷徨う感覚で物語が進んでいく。まさに、リング、ワンダリング。 ただ、話がだるい。映像美で惹きつけることで、物語への集中力は保たれるのだけど、セリフの間が悪くて緊張がゆるむ。とくに、片岡礼子の演技の下手さはどうしたものか。いらだってしまった。 すべては、主人公が"最後に現れた二ホンオオカミ"に包まれたがゆえの幻想(つまり夢オチ)なのだとしたら、それはそれでおもしろい。
前半はスローテンポ、後半は予想外の冬山ロケ!
自主製作映画ぐらいの規模を予想していたら、ロケ地も素晴らしく、それなりに予算をかけて撮っている映画であることに驚いた。 そして、後半の冬山ロケのシーンは、前半のスローなテンポからは想像できないほどの展開を見せているといえる。 なんとも表現しにくいタイムリープものともいえるが、かなり観る側の予想を裏切る点が印象的な作品だ。 前半は間を持たせたいのだと思うが、展開はスローで、かなりもたつく。ただし、そのもたつきが後半の展開を印象付ける結果となっている点がユニークだ。 主人公・草介がミドリと出会ったのはなぜだろうか?偶然だろうか?必然だろうか? もし、そこが描かれていたら、この作品は大傑作になっていたかもしれない。 金子雅和監督の次回作に期待したいと思う。
同じ場所に過去と現在が同居しているイメージ
上映後のトークで、金子雅和監督は「同じ場所に過去と現在が同居しているイメージ」という意味のことを言っていた。まさに本作品が示す世界観そのものである。歴史は常に土地に紐付いているのだ。 これは素晴らしい世界観である。ともすれば我々は世界を意識するときに現在の空間の広がりだけを思い浮かべてしまうが、同じ空間に時の流れもイメージする必要がある。我々の世界は四次元時空間なのだ。 役者陣は揃って好演。ミドリを演じた阿部純子の寄り目がちの視線は、こちらの心の奥まで覗かれているようである。この女優さんはもっと活躍していい。猟師役の長谷川初範は久しぶりに見たが、相変わらず線が細い割に存在感がある。安田顕はそれなりの役をそれなりに演じている。達者なこの人にとっては本作品の役は朝飯前だっただろう。 主演の笠松将は、テレビドラマ「君と世界が終わる日に」の演技は一本調子で疑問だったが、本作品は打って変わって表情豊かに演じている。特に「川内寫眞館」が「川内写真館」に変わった後、写真館を出て神社の御神木付近で佇む演技は、同じ場所で70年以上の時間を飛び越えてしまった不思議な体験を整理できないまま、様々な感情が胸に去来している様子を、とても上手に表現できていたと思う。このシーンが本作品の白眉であり、笠松将の渾身の演技だったと思う。 映画の世界観の話に戻るが、土地に歴史がある、時空間として繋がっているという金子監督のテーゼを敷衍すると、当方がこのレビューを入力している足元でも、かつては誰かが殺されたかもしれないし、誰かの恋が成就したかもしれないし、今生の別れに涙したかもしれない。そう考えると、世界中の過去と現在の人々との不思議な共生感を覚える。その共生感は時間の連続として未来に繋がる。 本作品は、空間の広がりだけではなく時間の広がりも想像することで、過去に同じ場所で生きた人々の感情や苦悩までも共有するような、そんな飛躍がある。想像力の躍動と言ってもいい。当方にとってエポックメイキングな作品となった。
「で?」が多くって、、、。
何事にも何故?や理由、根拠を求めてしまう、僕には合わなかった作品でした、残念ながら。 正直、退屈でした。「で?」の連続。なんだろなー、久しぶりに監督の自己満全開みたいな作品でした。ま、表現者ですからそれでよいのですが、僕は監督の描きたい「何か」をつかむことはできずに終わりました。まだまだ映画を理解する力量が足りないのでしょう。 作品の雰囲気は好きなんですよね。静かで寓話っぽくて。何を語るんだろ?って考察しながら観るの好きなんですけどねー。題名の「リング・ワンダリング」は、<人が方向感覚を失い、無意識のうちに円を描くように同一地点を彷徨い(さまよい)歩くことをいう。>だそうなんですが、なんとなーく彷徨ってる方々を出会わせてるのはわかるんですが、、、「で?」なんですよね。何を言いたいの?と。 3軸の物語は全部薄味で中途半端に絡まって、収集つかずになんとなーく「よい雰囲気」ラストシーンで終わらせた感じ。ニホンオオカミ、そんな包括してる位置かなー?なんか安易な香りが。やはり最後も「で?」。 色々言いたいことあるんですが、本当に山盛りすぎて。まぁ、いいや。
繰り返し観たい映画
この物語はどこから始まりなのだろう。 最近はその事ばかり考えている。 映画を観て、作品が頭の中から離れないのは久しぶり。 また映像も美しく、登場人物たちは派手ではないのに、とても印象に残るし佇まいがすごい。 テーマの中に秘められたものは、忘れてはいけないことだったり、大切にしなくてはいけない事 それを優しくそっと残してくれる作品だと感じた。 また観る度に新たな思いも生まれてくるので、何度も観たくなる作品。
何度観ても又観たくなる映画
時空を超越したスケールの大きな映画でした。 脚本が素晴らしく、主演の笠松将さんの繊細な演技にも引き込まれました。 点と点が繋がり線になって、最後は鳥肌が立ちました。 草介に教えてあげたい。 6回観ました。 まだまだ映画館のスクリーンで大自然を浴びたいです。
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