「素晴らしい作品です 一人でも多くの人が観て、その中から次の世代の特撮の担い手が増えて欲しいと心から願います」ジュラシック・ワールド 新たなる支配者 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
素晴らしい作品です 一人でも多くの人が観て、その中から次の世代の特撮の担い手が増えて欲しいと心から願います
言わずと知れた人気シリーズ
1993年の第1作から数えて第6作
完結編だそうです(本当に?)
1993年の第1作は本当に画期的でした
恐竜という「怪獣」がまるで本当に生きているかのような映像は、誰も今まで観たこともない迫真性がありました
それまでは怪獣の映像は、日本の円谷特撮の着ぐるみ怪獣か、米国のハリーハウゼンのダイナメーションという人形コマ撮りの怪獣しか存在しなかったのです
フルCG による恐竜の映像は、世界の怪獣映画の一大革新だったのです
エポック・メーキング
イノベーション
幾ら讃辞を並べても足りません
それを観たならば圧倒されてしまい、今までの怪獣は、そのどちらももはや古臭い陳腐なものに見えてしまう程のものでした
それが突然出てきたのです
古くからの特撮ファン、怪獣映画ファンには頭を殴られた程の衝撃でした
日本の特撮に取っては、第一の黒船「2001年宇宙の旅」、第二の黒船「スターウォーズ」に続く、第三の黒船であったのです
しかも第三の黒船は、日本の特撮の本丸、怪獣映画の特撮だったのです
言わば黒船が江戸湾の奥深くそれこそ江戸城の真ん前、日比谷の入江まで入ってきたようなものだったのです
正に江戸時代の侍が蒸気船を見る思いだったのです
どうやってこのような映像を作り出しているのか!
その理屈は解る
どのようなソフトウェアで、どういう作業をすればよいのかも、だいたいのことは分かる
なのに同じような映画を日本で撮れるかというと出来ない
近いような映像の真似すらできもしない
手も足も出ないとはこのことだったのです
1993年は、「ゴジラvsメカゴジラ」が12月に公開された年でした
この作品はとても良い作品と思います
平成ゴジラシリーズの中で一番好きです
しかし本作のシリーズ第1作の「ジュラシックパーク」を観てしまうと何とも言えない気持ちになります
それからは日本の特撮はこのジュラシック・シリーズに追いつくために努力してきた30年と言えると思います
その努力が平成ガメラを生み、あるいはハリウッドのエメリッヒ版ゴジラとなり、その落胆がミレニアムゴジラシリーズとなり、そして再度のハリウッドのギャレス版ゴジラになり、最終的に「シン・ゴジラ」へと連なる動きになっていったのです
2016年の「シン・ゴジラ」でようやく日本人の手でフルCGの怪獣を遜色ないレベルの映像にできるようになったのです
そして2022年の本作
ようやく米国の特撮に日本も追いついたように思っていたのですが、しかし本作は米国のVFXのケタ違いの凄さを思い知らされました
まだまだ彼我の差は大きいのです
単なる予算規模の違いだけと言い切れるでしょうか?
まるで本作の特撮はVFX の凄さを見せびらかしているかのように自分には感じられました
特にアクションシーンでそれを強く感じます
例えばバイクとラプトルとのチェイスシーンに既視感がありました
2007年の「ボーン・アルティメイタム」です
その作品でのモロッコでのチェイスシーンや、屋上から隣の建物の窓に飛び込むシーンなどは、そっくりです
追手をラプトルに置き換えたに過ぎません
これきっとわざとそうしたのだと思います
派手なアクションシーンの優秀なテンプレートとしてわかるように流用したのだと思います
自分には、「こんな風に何だってやれるんだぜ、日本でできるかい?」そんな声が聞こえる思いがしました
悔しいけれどできません
まだまだ彼我のVFX 技術には歴然とした差があるようです
予算規模は最初から勝負にはなりません
しかしそれがなんだという思いもします
VFX の技術はある一定水準を超えれば必要十分であって、それよりも見せ方のセンスが大事なのだと思うのです
とはいえ、このような技術のさらに先にはどのようなブレイクスルーがあって特撮映像のイノベーションがあるかもわからないのです
日本には日本の特撮、日本の怪獣があると言っていたら、第四の黒船が来るかも知れないのです
常に国内外の新技術にアンテナをはり導入もして、海外の特撮部隊との人材交流して行かなけばならないのだと思います
本作には恐竜に対する愛が感じられます
色々とケチをつけたり、突っ込みを入れたいことは山ほどあっても、そんなこともうどうでも良いことです
素晴らしい作品です
一人でも多くの人が観て、その中から次の世代の特撮の担い手が増えて欲しいと心から願います
その中にきっと21世紀の円谷英二、レイ・ハリーハウゼン、庵野秀明、樋口真嗣がいるはずです
蛇足
初めてDolby Atmosの劇場で鑑賞しました
その効果を満点に発揮している作品と思います
従来のサラウンド効果とは雲泥の差を感じました