「追記。批判はあれどシリーズとして良いと思う。直感的に楽しむべし。裏のテーマはエグイ。」ジュラシック・ワールド 新たなる支配者 ヨヨ23さんの映画レビュー(感想・評価)
追記。批判はあれどシリーズとして良いと思う。直感的に楽しむべし。裏のテーマはエグイ。
観るアトラクションこと、ジュラシックシリーズの最終章です。
楽しみ方も過去作と全く同じで、「ティラノサウルス!トリケラトプス!プテラノドン!」と素直に恐竜を楽しめる方なら見て損はありません。
序中盤のホームドラマ的な説明はやや退屈ですが、数々の恐竜の迫力が娯楽として分かりやすく、思わぬ生態・予想外の行動・登場人物たちの対処法などなど興味をそそられ釣られつつ、一気に最後まで見せられたような映画でした。
難点は、科学的考察や現実的な辻褄を重要視される方には向かない映画かと……
本作に限らず、ジュラシックシリーズのテクノロジーは映画的です。
「シリーズお約束」としてメタ的に割り切れないとツッコミどころが多すぎて冷めます。
映画単品として観るならツッコミ所で星3.5ぐらいの評価になってしまうと思います。
逆に、アトラクションとして直感的に楽しめるなら文句なしの出来上がりです。
私は一応全シリーズ観てはいるものの、登場人物までははっきりとは覚えていませんでした。
ストーリーは追えてはいるものの細部は忘れているという、半分初見のような状態での視聴でしたが、各々の前作が何となく推測できるような作りになっていましたし、予想もちゃんと出来ながらも物語を楽しめるいい塩梅の分かりやすさになっていたと思います。
あ、中盤の街中カーチェイスはまさかの軽トラでした。しかも右ハンドルの日本車仕様という。
そしてラストシーンのバトル前には、作品を象徴するにくい演出も……!!!
そこそこ複雑ですが直感的にわかりやすい映画なので、近年まれにみる子供から大人まで楽しめる映画ではないでしょうか。
むしろ「恐竜に興味があってちょっとマセている小学校高学年くらいのお子様」ならぶっ刺さるくらいに楽しめそうな気もします。
時期的にも夏休みですし、制作側もそれを狙ってる気がしないでもない。
大人の方々でも、これを切っ掛けに夏の自由研究として恐竜考察してみるのもいいかもしれません。
8/2追記
共存のテーマはどこ行った!?的な感想が多くて思ったことを少々。
本作を観て、昨日今日とシリーズ前作を見直しました。
そして改めて今作を考え直して思ったのですが、やっぱり単純な面としてやってることはシリーズ通して同じだと思います。
テーマ云々は別にして、単純なエンタメとして「恐竜を楽しむ」「映画館で映像体験を楽しむ」ことに関してはシリーズに連ねる名作(or良作)の部類だと思っています。
少なくとも映画料金分は楽しめますし、映画が終わった後に単純に「恐竜凄かったねー!」と感想を交し合うにも問題ありません。
「単純な面は」です。
対して、副題にリンクしてくる裏の複雑なテーマですが、あえて言うなれば「破壊」でしょうか。
良くも悪くも本作は前作「炎の王国」の後の世界を描いている一方で、人間の生活圏に恐竜が出現した、以上のことは描かれていません。
野生動物が野生恐竜に置き換わったとか、保護動物に保護恐竜が加わったとかその程度です。
ただ考えてみれば当たり前で、自動車に電車に飛行機にと機械があふれている現代において、恐竜と人間が共生する社会といっても共生の隙など無いのが現状でしょう。野生動物との共生にも苦労しているというのに。
どう足掻いても食物連鎖の混乱となり、環境破壊となってしまうのがオチです。
本作の問題ともなっている「イナゴ」は、環境を破壊する恐竜たちのメタファーとなっているのではないでしょうか?
作中では恐竜を売買する闇ブローカーも登場しますが、恐竜を調教して生物兵器として売ろうとした武器商人としてのバイオシン社も登場します。
どこまでも悪どいバイオシン社ですが、こうして「恐竜を調教して生物兵器としようとしたこと」と「イナゴを操り食糧事情を支配しようとしたこと」は重なるものがあります。
恐竜とイナゴ。主人公(視聴者私たち)とバイオシン社のルイス氏。
共生の為に恐竜の保護区を決め、なんとかコントロールしようとする作中社会ですが、イナゴをコントロールしよとして自滅したルイス氏の様な末路にならないと断言することができるでしょうか?
しかもルイス氏は最後、恐竜に喰われるのではく、毒(?)の様なものによって死んでいます。
破壊者に喰われるのではなく、破壊者の毒によって死ぬ。
これが意味するものは、果たして何でしょうか?
映画視聴後、様々な感想レビューを拝見していますが、それでも私の評価は変わりありません。
劇中は頭を空っぽにして「見るアトラクション」として楽しむことができ、視聴後は様々な考察がとっても楽しい本作ジュラシックワールド。
私は大満足の一本でした。
ただ唯一の不満点を挙げるとするならば……
「ブルーの活躍ももっと見たかった」というのが本音です。