「最後にタングと健が心を通わすところにじんわり感動してくるのは、やはり三木監督ならではの手腕だ」TANG タング 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
最後にタングと健が心を通わすところにじんわり感動してくるのは、やはり三木監督ならではの手腕だ
医師を目指していたものの現在は無職の健(二宮和也)は、毎日だらだらと過ごしていました。ついに妻の絵美(満島ひかり)に家から追い出された彼は、庭で見つけた古いロボット、自称「タング」と遭遇。
タングを製造元に持ち込めば最新型と交換してもらえると知り、福岡へと向かいます。 そこでタングがただの旧式ロボットではないことがわかり、ポンコツな2人の長い旅が始まるのでした。
魅力はなんといってもタングのかわいらしさです。ガクガクした形や動きには懐かしさも感じさせてくれます。そんなタングと心を通わせるのが無垢な少年ではなくダメ男なためか、夏休みにぴったりの冒険ファンタジー的な内容ながらも、大人も違和感なく入り込める作品になっています。
舞台は少し未来のようだが、進化したものと今も昔も変わらないものがほどよく混在した空間も心地が良かったです。
但し闇が深そうなタングの過去の掘り下げ方や未来の描き方、それに悪役の頼りなさに、物足りなさやご都合主義だと感じてしまうかもしれません。あくまでもおとぎ話としてのんびりまったり楽しみたいところです。夏休みに家族で揃って気軽に楽しむにはちょうど良い作品といえるでしょう。
本作は腐っても鯛というか三木浩孝監督作品です(^^ゞ本来なら山崎貴監督あたりがやるべき作品なんでしょうけれど、それでも三木監督らしさが溢れていました。
例えば、健が住む家の裏庭などちょっとした映像が鮮やかで美しく、三木監督ならではのファンタジーの世界へ引き込んでくれます。
また三木監督は、耳に聞こえることをとても大切にしている監督です。『今夜、世界からこの恋が消えても』でもそうでしたが、主人公の台詞回しが、とても丁寧で、タングと健の気持がよく伝わってくることです。突っ込み処満載のストーリーでも、最後にタングと健が心を通わすところにじんわり感動してくるのは、やはり三木監督ならではの手腕だと思います。