「シャマラン作品はとびきりの線香花火」オールド 徒然草枕さんの映画レビュー(感想・評価)
シャマラン作品はとびきりの線香花火
1 シャマラン作品のワクワク感
シャマランの新作ほどワクワクさせられる映画は他にない。見るのが待ち遠しく、放送時間までにほかの用事を片付けておかなきゃ、と思うのはシャマランだからだ。ちゃんと録画予約までしてあるのにw
この作品も心を躍らせながら画面の前で待機。出てくるのが可愛い姉弟で、シャマランらしくやはり演技が上手い。期待がますます高まる。
2 作品の見どころ
主人公一家はリゾートホテルの支配人からプライベートビーチに招待され、大喜びで出かけていくのだが、そこは時間の進み方が異常に早く、1日に数十年も経過してしまう異界だった。
可愛い姉弟はあっという間に大人になり、大人たちは持病が急速に進行して死んでいく中、異界から脱出しようと悪戦苦闘したり、隠れていた人間の異常性が現れてきたり等々のドラマが一つの見どころ、そしてそこからいかに脱出できるかが二つ目の見どころ。
とくに小学生の姉弟がすぐにハイティーンになり、声変わりして顔つきも体型も別人になってしまうところは、この作品のハイライトで、幼児体型の女の子が腰のくびれも見事な女性に変身するところは面白かった。欲を言えば、もうちょっと美人になってて欲しかったがw
3 シャマラン線香花火の法則
ところが、次の脱出の段階になると、徐々に興味が薄れてきて、残念ながら最後のあたりは、「ああ、今回はなかなか回収の仕方が上手いな」くらいな感じにしか思わない。
シャマランのいつもながらのクセなのだが、広げた風呂敷が大きすぎ、期待が膨らみすぎた割に、起承転結の結が弱く、本作もそのパターンから自由ではなかった。
いわばいつものよく出来た、とびきりの線香花火…それが本作である。「アンブレイカブル」のコミックの世界に収斂してしまうような出鱈目さではなく、比較的まともな終わり方ではあるが、突っ込みどころ満載感は否定できない。
4 オマケ……ブラッドベリのSF小説について
シャマランはSF好きらしいから、レイ・ブラッドベリにも目を通しているはずだ。そのブラッドベリ作品に『霜と炎』という中編SF小説がある。
昼は灼熱、夜は寒冷地獄の惑星で、人はわずか8日間で一生を終える。彼方に見える宇宙船までたどり着けば、寒暖の影響を受けず、ゆっくりと成長していけるのだが、その宇宙船まで行くには、灼熱、寒冷地獄の只中を突っ切っていかねばならず、今だ成功した者はない。
さて、そこで主人公の生後2,3日の少年が宇宙船を目指す旅に出るというお話で、シャマラン作品の原型は間違いなくこの小説だろう。
こちらの方は、シャマランと違って最後まで息もつかせない緊迫感と詩情に満ちており、口直しに読まれると面白いかと思う。