「真面目なシャマランは鑑賞者を放ったらかしになんかしないのだ!」オールド カツベン二郎さんの映画レビュー(感想・評価)
真面目なシャマランは鑑賞者を放ったらかしになんかしないのだ!
言わずと知れたMナイト・シャマラン監督の作品だが、インド出身という偏見からではないが、恐らく理系脳のこの監督は観ているものへ決して投げっぱなしにはせず、張った伏線はしっかりと回収し、最後には無理矢理にでも辻褄を合わせないとどこか収まりが悪く感じるタイプではなかろうか。
メディア等の宣伝で、あのビーチへ行くと急速に老化するという事を事前に周知させた上で、原因は何かという大オチ1点のみで勝負する(し続ける)この監督の潔さは毎度ながら感心させられる。
ただしこれがビッグバジェットの映画でやられると物足りなさからか「それだけかよ!」とツッコみたくなるが、今回のようなそこそこの予算で作る映画なら十分楽しめてしまうから不思議である。
ホテルの従業員の秘密ありげな態度やビーチへ連れて行かれた面々が醸し出す強烈な違和感みたいなところはしっかりと伝わり、終始感じる気持ち悪さがラストへの期待感を後押しする。
もちろんツッコミどころも満載で、腫瘍摘出手術や出産についてはいろいろ言いたい事もあるが、直ぐに傷が塞がってしまうのなら出血も最小限だし、あんなふうに簡単に成功してしまうのだろうと自分自身を納得させることにした。
※骨折が変な形で直ぐ治ってしまうくだりも同じ。
子どもを使う事が多い監督だが、姉、弟という組合せはヴィジットと同じ。
弟役のアレックス・ウルフはヘレディティ以来自分の中では今の時代に稀有なスリラー俳優という位置付けで、今回も良い意味で抗えない不条理な運命や迫りくる恐怖を受け入れざるを得ない絶望感みたいなものを元々の恐怖顔で上手に表現していた。
因みに弟役(トレント)は全部で4人が演じたが、よくぞあの位置にホクロがある人達を見つけてくれたと思っていたのだが、調べたらアレックス・ウルフ以外は皆付けボクロだった。
成長しても同じ人間であるという事がわかり易い便利な特徴ではあるが、少数派に多数が合わせている事に何となく可笑しさを感じてしまった。
どうしてもアレックス・ウルフにこの役を演じてさせたいという監督の強い意志をを感じた。(やっぱりこの人を使いたいもんね)
シャマラン作品は好き嫌いがはっきりと別れるが、個人的には評価が高かったヴィジットよりも楽しめたので、迷っている人はラストのオチを人から聞いてしまう前に劇場で鑑賞される事を勧める。