「魅惑の顔合わせで描く西部劇&サイコスリラーの妙味」すべてが変わった日 清藤秀人さんの映画レビュー(感想・評価)
魅惑の顔合わせで描く西部劇&サイコスリラーの妙味
不慮の事故によって最愛の息子を亡くした老夫婦が、嫁の再婚相手が暴力夫だと知って、親の手元から可愛い孫を連れ戻そうとする。夫婦を待ち受けていたのは、狂気じみた母親に支配されたならず者一家だった、なんて、設定はまるで西部劇のよう。まして、父親は元保安官である。時代は西部劇の人気がすでに下降していた1961年。そんな時代の転換期に、もしも、善人と無法者の対決が場所と形を変えて存在したとしたら?と語りかける本作。同時に、息子の尊厳のため、孫の命を守るため、危険を冒して州境を越える老夫婦に件のヤバい一家が襲いかかるサイコパス・スリラーの要素が加わる。感傷的な前半と凄まじいバイオレンスにシフトする後半の対比が予想外で面白いし、何よりも、ケビン・コスナーとダイアン・レインというかつての青春スター同士が、理不尽に立ち向かう老夫婦を演じる姿が愛おしい。それは、多くの映画ファンがそれぞれの映画体験を振り返る時間でもある。ハリウッドスターには珍しく、いい塩梅に歳を重ねた2人の今後が一層楽しみになってきた。
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