「イタリア・ローマの高級住宅街にあるアパートメント。 ある夜、裁判官...」3つの鍵 りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
イタリア・ローマの高級住宅街にあるアパートメント。 ある夜、裁判官...
イタリア・ローマの高級住宅街にあるアパートメント。
ある夜、裁判官シモンチーニ夫婦(ナンニ・モレッティ、マルゲリータ・ブイ)の息子がアパートメント近くで女性との自動車事故を起こし、1階の部屋に突っ込む事故を起こした。
息子は飲酒運転。
1階の住人ルチオ(リッカルド・スカマルチョ)とは顔見知り。
事故現場に居合わせた妊婦モニカ(アルバ・ロルヴァケル)も同じアパートメントの住人。
彼らの人生が不穏な雰囲気を抱えて交差していく・・・
といった物語。
で、見知らぬ人々の人生が交錯する物語は面白くなりそう。
なんだけれど、意外と面白くならない。
面白くならない原因は、映画で描かれる中心人物がルチオで、彼の人生の契機が「自動車事故でない」から。
これはストーリーテリングとしては致命的欠陥。
彼が思いめぐらすのは、彼の幼い娘を預けた先が同じアパートメントの老夫婦なのだが、老夫の方は認知症の傾向があり、預けられた娘とともに外出し、その際、ルチオの娘に何か間違いがあったのではないか、という疑念がルチオに湧きおこってくる。
その疑念が中心となって、結果、ルチオは老夫婦の孫娘とイケナイ関係になり、あとあと禍根を残す・・・と展開。
って、自動車事故、あまり関係ない。
事故現場に居合わせた妊婦モニカの話は、彼女の夫は北欧の油田か何かの作業で長期出張、彼女が出産・育児で不安になるというもので、たまたま知り合ったドーラ・シモンチーニ(事故を起こした息子の母親)援助を乞うというもので、息子依存のドーラと対比していけば面白くなったのに、と思わなくもないが、そこまでは至らない。
事故を起こしたシモンチーニの息子は、ゴネまくるのだけれど、結果、服役。
服役期間を終えた後も父母とは疎遠になり、郊外で出所後知り合った女性と養蜂生活を送る。
息子は、事故の遠因は両親の過干渉にあると思っており、厳格な父ははなから拒絶し、過保護な母親からも距離を置こうとしている。
この親と子の関係が後に少しばかり氷解するのがいいところなので、先のモニカの話とからめて映画の中心に置けばいいのに、と思った次第。
原作があるので難しいのかもしれないが、1階の住人ルチオは事故後あっさり転居して登場させないぐらいの方がよかったかもしれません。
ということで、やっぱり、シンネリムッツリ系な映画だったねぇ。