TITANE チタンのレビュー・感想・評価
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寄る辺ない魂のたどり着くところ
かなりぶっ飛んだ設定だけど、描かれているのは、人間の弱さや醜さ。それらと対をなす強さや美しさ。
肉体を持って生きることの、違和感や苦しさが、昇華される過程は生々しく、荘厳ですらある。
ラストシーンの神々しい表情に光が溢れていた。感動しました。
純粋なる情動と執着がたどり着くハッピーエンドに泣いた。
帰郷道中第2弾(第1弾「アネット」)
この作品を観たのは、確かライブイベントが終わって夜間バスで帰ってきた時に偶々公開中だったのを知ったってのがきっかけでした。
存在自体は、私が敬愛してやまないポール・トーマス・アンダーソン監督とエドガー・ライト監督が絶賛していたので知っていた、にもかかわらず公開日とか上映劇場を何も調べてなかったという杜撰さ。本当に観れて良かったと心から思います。
この作品に関しては何の事前情報もなく、「R指定か、へぇー」程度な感じで臨みました。
いやぁ、もうね。始まってすぐに震え上がりましたね。とにかくバイオレンス描写が生々しく気持ちが悪い。どれ一つとっても痛々しい。しかし、同時に痛快でもある。何故かというと、画面内で行われる主人公アレクシアの暴力はどれも自身の本能とリビドーが根底にあるからだと思う。全ての行為は彼女の自己責任のもと行われ、自身の欲求を満たすためのものになっている。しかし、それ故に彼女はどこにも留まることができない。彼女の常に変化し不安定な情動についていける人間がいないのだ。
その流浪の旅の末に現れるのが消防署の署長ヴァンサン。彼は行方不明の息子に執着している。さらには老化を誤魔化すためのステロイド注射をしている。つまり、彼は過去に今日まで囚われ変化を拒み続けている人間なのだ。
これが驚くべきことなのだが、この映画の真の主人公は実はこのヴァンサンなのだ。上映時間に出続けてるという意味ではアレクシアは主人公と言えるのだが、彼女は人物というよりも、ヴァンサン含め周りに影響を及ぼす現象に近いと思う。
ネタバレ回避として、具体的には記述しないが、アレクシアと対峙することで、ヴァンサンは「今」を生きる力をアレクシアから受け取ったのだ。そしてそれは同時に、アレクシアがようやく受け入れられた瞬間でもあるのだ。
絵としては、全然そうは思えないかもしれないが、これは紛れもなくハッピーエンドなのだ。非常に痛々しい旅路の果てに迎えたこの幕引きに、涙が溢れました。
本当に映画館で観れて良かったと思います。
暴力描写に関しては好みが分かれる所なので、誰にでもオススメという事はないのですが、今年のベストに入ってくるぐらい、私にとっては大傑作でした。
では、また。
過激に人間の根源的テーマに迫る怪作
【鑑賞のきっかけ】
カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞したことも理由のひとつですが、予告編を観て、その妖しげな魅力に引き込まれてしまったのが、大きな鑑賞のきっかけとなりました。
【率直な感想】
重く、暗いトーンが全体に行き渡り、かなり過激なシーンも頻発し、さすが、R15+だけのことはあるな、という感じでした。
しかしながら、この作品は、人間の根源的なテーマが巧みに取り入れられていると感じ、いろいろと深読みが出来る作品ではないかという気もしています。
<機械とのシンクロ>
本作品の主人公の女性、アレクシアは、子どもの頃、交通事故に遭い、治療のため、頭蓋骨にチタンプレートを埋め込まれていた、という設定。
ここで、私は、1980年代に、SF小説で流行した「サイバーパンク」というサブ・ジャンルを思い出しました。
そこで描かれる未来社会では、人々は、脳内に、様々な機械を埋め込んでいた。
それは、主にパソコンのマイクロチップのようなもので、そうした機械と同期(シンクロ)することで、すぐにネット空間に入り込むことが出来るというものでした。
本作品でアレクシアは、機械(チタンプレート)を頭に埋め込まれている。
そして、同期(シンクロ)するのは、<車>という機械。
しかも、それは、「究極の」同期(シンクロ)だった…。
<描かれるテーマ>
公式ページで、あらすじを読むと、「自らの犯した罪により行き場を失った彼女はある日、消防士のヴァンサンと出会う。」とあります。
ところが、実際に鑑賞してみると、ヴァンサンと出会うまでが結構長くて、物語の半分とまではいかなくても、3分の1くらいの時間がかかっていたように思います。
私は、この物語は、「ヴァンサンとの出会い」を分岐点として、2つに構成されているように感じました。
出会いの前では何が描かれているか。
それをあらすじとして表現するとネタバレになるので、端的な言葉で表現すると、「性」と「暴力」と「死」だと思います。
それが、出会いをきっかけに、テーマが変容していく。
そこで描かれるようになるのは、「愛」と「生」です。
いずれも、人間にとって、重要なテーマであり、それを、かなりインパクトの強いシーンで描写していく本作品に、私は最後まで圧倒されたままでした。
そして、最初から最後まで根底に流れているのは、先述の<機械とのシンクロ>。
思えば、地球上の生物で、機械を作り、機械と共に暮らしているのは人間だけ。
時間があればスマホを見ている人は、スマホとシンクロしているようなもの。
<機械とのシンクロ>は、現代人にとって、重要なテーマになっているのかもしれません。
【全体評価】
本作品で、脚本とともに監督を務めたジュリア・デュクルノーは1983年11月生れで、2022年4月現在、38歳。
今後とも活躍が期待される監督さんです。
その期待も含め、本作品を高く評価します。
ギリシャ神話的な悪い夢
見る人を選ぶ作品
フランス映画らしい猟奇的な変態な世界
パルムドール?これ、理解しないといけません?
ふとよそ見をしたら現実を見失った
思ってたのと違った…
マカレナ♪
多様性の極致
刺激的な映像に隠れているが、暗喩的にダイバーシティの問題を描いていると感じた。表現はぶっ飛んでいながら、サスペンス、ホラー、ヒューマンドラマなど見応えのある映画的要素が十分にあってとてもよい。最後の最後まで、どんな子供が?と釘付けだった。
頭のチタンプレートはニューロダイバーシティ(あるいはダイバーシティを排除し矯正しようとするもの)の象徴だろう。さらにLGBTPZN を超える対物性愛(私は対物性愛はNの広義だと思っているのだが)の表現も多様性の極致でとても先進的だ。
ぶっ飛んだ要素を除いていくと、今のリアルな世界にあるマイノリティの抑圧と、それに対する悲しみと闘いが見える。そういったセンシティブなものを表現しながら映画としてセンセーショナルで面白い。それが素晴らしい。
吐き気を催すほどの不条理と狂気を超えた愛と
前提として
・予告は観てない
・ジュリア・デュクルノー監督の作品は未視聴
1シーン1シーンが絵になり、アレクシアはあまり言葉に出しませんが、感情がしっかりと伝わってきます。自分を大事にせず、他人を愛そうとすると殺人衝動に駆られてしまう。感情が伝わるのに、理解ができない気持ち悪さ。観ていて精神的に蝕まれていくような感覚があり、吐き気を覚えるほどでした。
自分を傷つけるシーンも色々あるのですが、非常に痛々しい。痛いのに最後までやり遂げようとする。それは強い意志などではなく、常人なら持っている何かが欠けているからだと感じました。
社会常識を持っているように見えて、所々頭のネジが外れている行動。アレクシアだけかと思いきや、ここにヴィンセントが現れます。彼も別の方向で狂っている。この二人の間に愛が生まれていくのか、愛なんてものが分からなくなるほどの狂気に満ちていくのか。
アレクシアの父親は、娘に対しての愛情がない描写がされるのですが、なぜか常人に見えてしまいました。
なんというか、「価値観をぶっ壊された映画」といった感じです。
全く詳しくないのですが、実はLGBTQ+や神話などがモチーフにあるのではないかと考えてます。
性別や常識を超えたものは神話になるのかもしれません。
サイコパスな展開
常識外の愛の形
今年最大級の衝撃作でした。
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