劇場公開日 2022年4月1日

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「攻めの姿勢は大いに買い!なのだが…」TITANE チタン osmtさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5攻めの姿勢は大いに買い!なのだが…

2022年5月23日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

う〜ん… テーマも大枠の展開も、とてもチャレンジングなのだが…
ちょっと脚本の詰めが甘いというか…
振り切り具合がイマイチ弱かったというべきか…
特に一番の肝となるキャデラックとのセックスシーン、アレはもっと出来たと思うけどなあ。
アレだけじゃ、女を孕ませるほどの性的な濃密さに欠けるし、オルガズムの演技や演出も全く物足りない。
伏線として、オープニングでのマシーンとしての車(だよなアレ)をもっと官能的に描くとかしないとアカンよ。
そもそも前フリとして「キャデラックが女を妊娠させる映画」なんていう前情報が無かったら、激しい自慰行為の最中、脳内が異常な世界へトリップしてるだけにしか見えなかったと思う。
というか殆どエロいコントだった。
いっそのこと、殆ど有り得ないコメディとして振りきって、あのラストで突如としてシリアスに昇華させた方が良かった気もする。

性衝動と殺人衝動がリンクする根拠付けが無いのも物足りなかった。
これにより、衝動的な行動の必然が見えにくく(埋め込まれたチタンの影響かもしれないが、それを匂わす描写が無い)リアル感は薄れ、どこか与太話のようで(どこかコメディ的ですらある)逃走後も無理筋な展開が続いていく。
ならば、これはある種の寓話として観るべきか?と思ったりもしたが、それならそれで、もっと寓話らしい演出(作品の核の部分の心象風景を各所の要所でインサートするとか)して欲しかった。

あと嘘の家族生活が始まってから冗長なテンポになってしまったのも失敗だったと思う。
出来れば、消防署の隊長も、もう最初の夜の段階で息子の裸体を見てしまって、普通なら騙された!となるところ、無理筋と分かりつつも、長期の誘拐中に強制的に性転換させられたのか?と無理矢理にでも強引に思い込むとか…
そんな自分自信を騙し騙し、異常な妄想の中に生き続ける男として、もう最初の方から描いてしまった方が、それ以降のプロットの類推も広がりが出て、色々と面白くなったと思う。

まあラストは、ああなるんだろうなと思っていたら、本当にそうなって、そのままクローズを迎えてしまった。
愛の力によって、最後の最後で主人公は自由に解放されたと言えなくもないが…
あのストレートな終わり方も、ちょっと物足りなかったかな。

尚、この作品は、監督のインタビューによるとクローネンバーグやヒッチコック『めまい』の影響により、作られているらしい。よって、どちらも苦手な人には正直お勧めできない。
が、しかし、
この作品がエポックメーキングになったのは間違いないだろう。
好き嫌いは別として、まさに同時代感覚をリアルタイムで味わいたい人は、一度は劇場へ観に行った方が良いかもしれない。

osmt