「スーツケース・ピンプ」レッド・ロケット いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
スーツケース・ピンプ
『他人の夢につけ込んで、彼らの希望や労働を食い物にする男』と定義した監督の造語らしいが、いわゆる"ポン引き"の広域版(国中を廻ってデリヘル嬢をスカウト&斡旋)を描く作品であろうと推察する
構成、ストーリー展開は現在の邦画のような作りになっているが、そこはやはりアメリカ、広大なロケを背景にできるので、こじんまりさは一切感じない テキサスの精油工場のダイナミックスさと、主人公の置かれている状況の対比が比較的分りやすく描かれている
編集もカット割りが細かくスピーディーに運ばれるのだが、その分叙情的な部分は深味がない
まぁ、今作は何と言っても"ストロベリー"役、スザンナ・サンの魅力一択だと信じる程、彼女の一挙手一投足に心を奪われる 役柄の未成年という事も相俟って、まるで男のゲスな理想像に作られた、歪んだ女性を体現させたことで、主人公をより滑稽で未熟な人間像に印象づけた構図に仕上げている それは現在のセクシズム、若しくは幼稚な女性願望といった表現を取り扱った、ハッキリ言えば"同人誌的"表現を色濃く落としている内容であろう 勿論、歪んだ唾棄すべき前時代的な人間としての主人公の描き方なのだが、対を成す様に、強かな現実としての女性を散りばめる事で、一気にリアリティというか、冷や水を浴びせる効果を演出させている。それは幻想である"ストロベリー"、そして転がり込んだ元?妻と義母、そして麻薬元締の若き娘といった一筋縄では行かない面々達との対比を、政治的にもオーバーラップさせた分りやすい構図に描いているのである
幻想と現実、この前時代的な発想そのものが変化したとき、次の時代が訪れる、今は過渡期なのかも知れない・・・
唯、今作は唯一主人公の言うことを訊く(ストロベリーは幻想という仮定として)、隣人の男のしでかした重大事故が、単なる物語の為のテンションとしか機能していないことが悔やまれる 起伏の為のサブテキストにしてはかなり大ごとだったし、収束も淡白だった事が否めない・・・
結論すれば、正直に言えば、早く古い人間(自分含)は、とっとと消えればいいんだろうな・・・