劇場公開日 2023年4月21日

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「元ポルノ俳優が演じる元ポルノ俳優のトホホな人生」レッド・ロケット 清藤秀人さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0元ポルノ俳優が演じる元ポルノ俳優のトホホな人生

2023年4月16日
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鑑賞方法:試写会

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『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』ではディズニーワールドに隣接するモーテルを住まいにしているシングルマザーとその娘の、ホームレス&ホープレスな日常を描いたショーン・ベイカー監督。アメリカ・インデペンデント界の俊英と呼ばれるベイカーは、あの時、夢の国を謳う遊園地のすぐ側で繰り広げられる夢とは程遠いアメリカの現実を浮き彫りにして、世界中に衝撃を与えたものだった。

そして、続く『レッド・ロケット』では、落ち目の元ポルノ俳優が故郷のテキサスに帰って人生を再生しようと試みるものの、結局、ポルノ絡みのビジネスに逆戻りするしかないという、まさにトホホな現実を描いて、前作に勝るとも劣らない苦い後味を残す。

主人公のマイキーが長らく疎遠だった妻のベッドに転がり込み、すぐに安易なドラッグビジネスに着手したり、ドーナツ屋の娘をポルノ業界にスカウトしようとしたりと、『そんなのダメに決まってる』ことを何の迷いもなくやってしまう。やがて訪れる悲しくて痛烈な結末は、『フロリダ~』のエンディングを思い起こさせもする。

ペイントアートのような背景に人物を配置する独特のロングショットや、周囲の雑音で度々セリフがかき消される演出は、居ながらにしてアメリカの田舎町へと観客を誘ってくれる。時代はヒラリーとトランプが大統領の座を奪い合っていた2016年。しかし、テキサスの田舎では選挙の行方とは関係なく生々しくも愛おしい人間の生活が営まれていたという視点が、ポリコレ時代には新鮮に感じる。マイキーを演じるサイモン・レックス自身も元ポルノ俳優だったとか。その憎めないお色気が映画の感触を複雑なものにしている。

清藤秀人