パリ13区のレビュー・感想・評価
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モノクローム映像が鮮烈に感情を伝える
過去を見つめる手法としてモノクロを選び取る作品はいくつもあるが、ジャック・オーディアール監督の映像力はそういった時代性を超越し、色を削ぎ落とすことによって逆に鮮烈化した芸術性や感情の塊が、観客の胸にダイナミックに飛び込んでくる。若者たちの艶かしいセックス描写。エクスタシーと共に高揚していくエレクトロな音楽。絶頂を迎えつつもどこか満たされない心の中の空洞ーーー。トンネルの暗闇のような毎日の中で、彼らが切実に求めているものは明快で単純だ。しかし答えがあまりに身近にあるがゆえに、本人たちにとっては気づきにくく、なおかつ素直になることができない。そのいじらしさや頑なさも登場人物の魅力を高める一因となっていて、映画が終わる頃には長所も欠点も全て理解した上で、彼らのことが好きになっているから不思議なものだ。丁寧な物語運びの中に破天荒な要素を併せ持ち、まるで現代の神話のような特殊な輝きを放つ作品である。
Artsy Film on the New Europe
A black and white episode film on Parisian young adults in the new normal of alternative lifestyles. It's erotic enough to make you want to stay young forever, but thorough in revealing the low points of the the urban 20's. More so the visuals drive the film in an updated stylish Transatlantic pairing to Francis Ha that looks directed by Gaspar Noe on a good day. The soundtrack by Rone is great.
オーディアールの味変
近年の映画でよく扱われるテーマの一つに希薄な人間関係がある。インターネットの普及による現象だと推測できる。 親密になれない関係性、ある時ふと気付く孤独、刹那的に生きていることへの絶望と気付き、ズレ、そんなものを扱った作品で、洋邦問わずよく見るようになった。 この作品もそんな新たなカテゴリの一作だ。 ジャック・オーディアール監督が好きで彼の作品は多く観ている。本作もまたオーディアール監督だから観たわけだが、過去の作品群と比べて少々内容に違いを感じた。演出面においてはオーディアール監督らしさは存在していて満足のいくものだったが。 着想を得た原作があるとはいえ「燃ゆる女の肖像」のセリーヌ・シアマが脚本に名を連ねている影響が大きかったのかなと思う。 オーディアール監督は割と普遍的な感情を扱うのに対して、セリーヌ・シアマは自身が女性の同性愛者であることもあってか、同性愛や女性の自立とか、虐げられている女性とか、フェミニズムよりの作風の人だ。 ある意味で、時代とオーディアールとシアマがうまく融合したのかもしれないし、オーディアール監督の味変としても良かったのかもしれない。 しかし、群像とまではいかなくとも、軸が多様で焦点がぼやけたように感じたのはマイナスか。 それでも、軸の多様さも含めて実に現代的で興味深い作品だったのも確かだ。 オーディアール監督が好きだからかもしれないが、面白かった。
率直な内容でおしゃれ。作られ方のうえでご苦労さま感は残る。
冒頭のエミリーに裸シーン…。赤裸々なセックスシーンが多い中身の予告と思えば意味がなくもないが…。でも必要かな。 メインキャラたちは、挫折をしつつも何とか踏ん張っている、出来すぎないタイプ。そこはとてもよかった。共感しやすい。セックスも含め本当のところどうなのかと関心が持てる。 観終わってみれば、この作品の最も重きを置かれた主人公はノラであり、映画のテーマは、主に同性愛へ移行するまでの自分探しへの旅、なのだろうと思えてくる。 最初の方の刺激的シーンで引き寄せられ、後半にノラに移行。いわば、おとり・カモフラージュ作戦? 最初から同性愛テーマで押したならば観る人は限られるから、これは仕方がないかな…。わたしはノラの部分も含め、最初から最後まで面白く観られたのだから、手口はなかなか上手いと言える。モノトーンのお洒落で意外に見やすい画面にも引き込まれた。 しかし、青春群像路線にしたいのなら、ノラ役はもう少し地味な女優のほうがよかったのでは?どうしても後の二人より、ノエミ・メルランがずば抜けて一番印象に残る。 それから、もうひとり、悩める男性キャラが欲しかった。チャラ男ひとりでは力不足。 白人、黄色人、黒人が一人ずつだったのは、バランスを意識したのか? 少々遠回りというか…何だかいろいろご苦労さまね〜と感じさせる映画ではあった。
モノクロのパリの青春
ノエミメルランの話は好き。
アジア系の女の子の話はよくわからなかった。
ラストが性急な気がする(けど具体的にどこがかは忘れた)
見てよかったとは思ってる。
モノクロームに観るもの
モノクロの情報量を押さえた映像から、語られる心の動きが素晴らしい。 観ているものの、感性感覚に委ねられている作品でわ無いだろうか? 映っているものだけの理解では、絡み合うシーンの多い作品。 各々のルーツである民族性にに関わらず人と人の心が、近づく事の難しさを、先行きが気になりたまらない演出。 中盤に驚きを覚える程のカットが有る、此より登場人物等の成り行きが、気になりラストへと私の気持ちは雪崩込んだ❗
恋愛下手の床上手
歴史遺産が多いパリにあって、チャイナタウンを内包する「パリ13区」は、つねに新しい動きのある渋谷のような街らしい。セリーヌ・シアマそしてレア・ミシウスという若き女流作家と初めてタッグを組んだジャック・オーディアール曰く、本作は今までの男臭いノワール作家としてのイメージを払拭する(ロメールの『モード家の一夜』を意識した)軽妙なコメディだという。 ちょっとずつ自分に嘘をついている3人の男女が主人公。施設に入所した婆ちゃんの部屋を譲り受け、コールセンターのアルバイトをしている台湾系のエミリー(ルーシー・チャン)。国語高校教師をしながら資格取得を目指しているアフリカ系のカミーユ(男)、叔父の経営する不動産会社をやめて大学に復学したノラ(ノエミ・メルラン)。脱ぎっプリの良さはすでに『燃ゆる女の肖像』で証明済みのメルランに負けじと、アジア系のルーシー・チャンが大胆な裸体を見せてくれているのにはちょっとビックリ。 パーソナリティー障害の気があるエミリーはセックス依存性で、そんなエミリーのルームメイトになったカミーユは新しい相手と肉体関係を結ぶがすぐに飽きてしまう浮気男、大学でネット専門のセックスワーカーと勘違いされたノラは叔父との近親姦が原因で不感症に悩んでいる。要するに3人とも自分が“病気”であることに気づいていないのだ。映画冒頭のギザギザ屋根や映画ラストの壁掛電話は、すでにふさわしい相手とめぐり合っているのにもかかわらず、おさまるべき“サヤ”になかなかおさまりきれなかった3人の関係を表現したメタファーだったのかもしれない。 そこで重要な役割をはたすのが、SEXチャットやスカイプなどのアプリ。カミーユが部屋を出ていった後ぽっかり空いた心の穴を埋めようと、マッチングアプリで見つけた男と狂ったようにSEXを繰り返すエミリーだが、本当の愛は見つからない。SEXチャットのせいで大学にいられなくなったノラは逆に、自分に顔つきが似ているルイーズとスカイプしているうちに、クイアとしての自分の本性に気がつくのである。 すでに住むべき家を持っているエミリーは大卒なのにアルバイト生活、資格試験の勉強しているカミーユはお金のために慣れない不動産家のお手伝い、そこに雇われた休学中のノラは手慣れた不動産の仕事に力を発揮するが....家と仕事、そして学歴のバランスがどこかチグハグでうまく整合がとれていない3人なのだ。この3人、もしかしたらオーディアール、シアマ、ミシウスの関係をそのまま投影しているのかもしれない。なぜなら3人とも本来のテリトリーではない、男女のラブストーリーに果敢にもチャレンジしているのですから。
凄くオシャレでまた、収まる相手に納まったスッキリしたエンディングで...
凄くオシャレでまた、収まる相手に納まったスッキリしたエンディングでした。 パリに住んでみたいと思わせる描写が随所にありました。 ただ…モノクロである必要が判りませんでした。
現実がうまく行かないことの満たされなさ、どうしようもなさ、不甲斐な...
現実がうまく行かないことの満たされなさ、どうしようもなさ、不甲斐なさをセックスで埋め合う若者たち。色々あって素直になりきれなかったり、屈折したり。自分を上手く乗りこなせないことを他人で補う孤独、やるせなさが優しい眼差しで描かれる。 モノクロだからこそ生々しさは中和されたり。 人は心に穴がないと求めない。それぞれの心の穴が静かなモノクロの闇に照らし出される。
びっくりした
オムニバスかと思ってたら違うのね、 そしてモノクロの映像はやはり 光と影の芸術で白と黒の芸術でもあるのか 本作、なんといってもルーシーチャンが素晴らしい マジで来るよ、この方 多角的な魅力を持っていて、ずっと見ていたくなる 内容はほんっとにフランス映画的で ほんとに納得できないんだが、 ラストシーンは良かったですな
楽しいセックスライフ
高校教師を休職中のカミーユとシェアハウスをすることによって体の関係を持ったら好きになってしまう台湾系のエミリー、32歳で大学に復学してパーティーに気合い入れて行ったらポルノ女優と間違われたノラ、そしてノラとカミーユが出会い、、という4人の愛とセックスまつわる話。 白黒でストーリーがあんまり分かりにくいけどオシャレな感じだけ伝わる予告から、The眠たくなりますフランス映画と思ったけど全然普通の恋愛映画だった。 体の関係は持ったけどお前は恋愛対象じゃない的なことを言う失礼なカミーユも、そんな男でも好きになったら負けで連絡くると嬉しくてしょうがないエミリーに、自分が恋愛対象の枠に入れてる相手には殻を被るノラとカミーユ。ちょっと性に開放的な普通のそこら辺にいる男女の話なのでめっちゃ共感しやすいのでは。白黒に惑わされずぜひ見に行って欲しい。 パンフレットで登場人物の中で1番しっかりしてるのはポルノ女優のアンバー・スウィートだと演じた女優さんが言っていて、確かにこういう水商売系の仕事してる女の子って見た目は可愛い感じなのに、やけに肝が座ってて体の中に1本太いパイプが通ってるのが透けて見える感じがいいなって思うんだよね。 一時的に勘違いによって性的な視線を一身に受けることになったノラが、それを常に受けているアンバー・スウィートがどんな人か知りたくなる気持ちはめちゃくちゃわかる。そして何かのフィルターを通してではなくクリアな視線で見つめ合えることがどんなに幸せで美しいことか。
予想しない方向に向かう花火
無駄がなくスピーディな展開で、飽きさせないし、ストーリーがどう転がっていくのか予想できなかった。 言ってしまえば大都市パリの多様性とはを描くドラマなのだが、描き方が自然でスタイリッシュでかっこいい。バランスが絶妙だった。 誤解を恐れない言い方をすると、いい意味で長編映画の長さのミュージックビデオを見ている感覚。こんないいミュージックビデオはないが。
エミリー
世間の悪意や好奇心に晒されるような関係を美しく軽やかに描いている作品。 私は、この作品の登場人物たちと同世代でエミリー、カミーユ、ノラの3人にそれぞれに共感し共鳴する部分があった。 パリ13区とゆう移民が多いエリアに集まった人種も性別も違う3人のツギハギの人生が収まるところに収まる、ロマンティックでもあってヒリヒリと痛いリアリティーのある絶妙なバランスがたまらない感じはセリーヌ・シアマとレア・ミシウスの2人の共同脚本によるものなのかなと思った。 監督と脚本家達、女性と男性、それぞれのセクシャリティーは、しっかり線引きされているようでグラデーションのような、舞台となるパリのパッチワークのような区画の地形と物語がリンクしているのを感じた。 大好きなのは、ルーシー・チャン演じるエミリーのイラつくような魅力的なような絶妙な振る舞い。 エミリーは問題のある人かもしれないが 人生において、あと先考えず辛辣な態度を取ってみたり、嬉しくって踊ってみたりしたくなることあるけれど、実際にはできない。 でもエミリーはやってくれる。だから映画の中のエミリーのことが好きになってしまう。 おばあちゃんのお見舞いに行きたくない気持ちも、めちゃくちゃ分かる。 好きとか嫌いでは割り切れない気持ちや、言語化できない不満や、先延ばしにして見ないことにしたいこと。それが、おばあちゃんの老人ホームの部屋に全部詰まっている感じで、これを描いてくれたことが 私は嬉しかった。 世間的には酷い孫だし、良い人であるためには行くべきだけど 行かなかったエミリーを否定も肯定もせず描いているのが良かった。 結局物語が動くのもおばあちゃんの問題が動くときなので、意外と物語の核でもあるのかもしれないと書いてて思った。 あと、ノラとアンバーの関係性は (の先の発展は原作にはなかった部分らしい )燃ゆる女のノエミ・メルランが演じているのもあってセリーヌ・シアマの筆致を感じてしまって、胸熱になってしまいました。好きすぎてここだけでもずっと語ってしまえるぐらい好き。 カミーユについて全然言及できてないが、あまりにも圧の強い2人の女性の物語に挟まれ、所在なさげにうつろう彼の物語もまたよい。 表向きは、教師をしていたし誠実で信頼できる雰囲気を醸し出してる彼が性へのだらしなさや、いわゆる男らしさの欠如などを抱えているのが良い。 私はこの3人の話の結末が好き。
フランス人は誰とでもセックスするのか?
パリ南部で、再開発による高層マンションやビルが並ぶ13区が舞台。コールセンターのオペレーターとして働く台湾系フランス人女性のエミリーが募集してたルームシェアに、アフリカ系フランス人男性の高校教師カミーユが訪ねてきた。最初は女性を希望してたエミリーだが、すぐにセックスする仲になったが、ルームメイト以上の関係にはならなかった。同じ頃、ソルボンヌ大学に復学した30歳過ぎの女性ノラは、年下のクラスメイトたちに溶け込めずにいた。金髪のウィッグをかぶり、学生が企画したパーティに参加した際、その姿がウェブのポルノスターに似てたため、本人と勘違いされてしまったノラは、学内で誹謗中傷の対象となってしまった。大学に居られなくなったノラは、教師を辞め不動産会社に勤めていたカミーユの仕事を手伝ううち、セックスし・・・てな話。 パリの都会で生きてる若者は愛は無くても誰とでもセックスするのかな?と思ってしまうような人間描写が続く。 ノラはアンバーも好きで、実はレズなのかとも思ったし、エミリーがなぜカミーユに執着してるのかはよくわからなかったが、自分なりに働き、食べて、セックスし、あまり向上心は感じなかったが、生きてるんだな、って思って観る作品なのかも。 レートがR18+だしセックスシーンが多いのだが、恋愛じゃないというのが自然体なのかも。 カミーユは何が良くてあんなにモテるのかはわからなかった。 女優はエミリーもノラもアンバーも体張って綺麗だった。
きっと誰にでもあるお話。
13区って、フランスではどーいう位置付けの街なんだろ?都会?それにしてもカッコいい絵ですねー。なぜか最近モノクロ作品が多いですよね。トレンドなのかな? さてさて本作。70歳の監督ってのが驚きです。男女関係の感覚には時代の隔たりはないってことなんでしょうかねぇ?性に関してはここまでは奔放ではないにせよ、日々満たされない、常にコレジャナイ感で悶々と彷徨い、さまざまな理由で自分の居場所が見えず、人が多いのに孤独を感じる・・・・そんな若かりし頃、肩肘張りながら焦るだけ・・・。そんな感覚は変わらないのかな? 人は一人では生きていけない・・・なんて使い古された言葉ですが、本質は変わらないですよねぇ。ミニマムの登場人物にもかかわらず、とても豊かな人間関係の色を見せてくれます。モノクロの淡白な映像が故に感情が浮だって見えるのかなぁ?少々、世間の狭さが気になりますが・・・。 中でもノラとポルノ女優のアンバーのエピソードが好きですね。本作はセリーヌ・シアマさんの脚本参加ってことでとても注目していまして、この二人の部分は大いに力を発揮されたのではなかろうか?と勝手に推測しています。(燃ゆる女の肖像に引っ張られすぎかなぁ?)この部分は大変満足しております。 ただ、ラストのエミリーとカミーユは・・・ちょっと受け入れ難いかなぁ。カミーユのことだから絶対に裏あると思う!奴が一番のクズキャラって思ってます(笑)
期待しすぎたかな…
と言うかあたしの年代とはマッチしなかったのかも(60over) この日は『ベルファスト』とこれと2本続けて観た、図らずもどちらもモノクロで テイストは違えど趣きある風で嫌いじゃない 『ROMA』は超えないけど ヒロインが意外と可愛かった、最後 あたしにとっては永遠に憧れのパリだけど 40年前に初めて訪れた時 人種の坩堝だな…と言うのが第一印象であった どんな人も気高く生きていくそんな感じのパリ
モノクロで浮かび上がる実像
通常スクリーンで鑑賞(字幕)。
ミレニアル世代と云うことは、私(1994年生まれ)と同世代。そんな男女が織り成す群像劇、気になっていました。
敢えてモノクロにしたことで映像が研ぎ澄まされ、登場人物たちの抱える孤独がストレートに伝わって来るようでした。
生々しいセックス描写は芸術的で、とても神々しい…。快楽の後に訪れる虚しさまでも赤裸々に映し出されていました。
快楽によって満たされたはずなのに、何故か心は空っぽのまま…。空洞を埋めるものを探してパリを彷徨う若者たち…
ひと括りに出来ない若者たちの特異な関係性を描きつつ、やはり愛に帰着してしまうのは、人間は常に愛に飢え、求め続けている生き物だからなのかも…。ミレニアル世代とは言え、心の揺れ動きは普遍的なのかもしれないなと思いました。
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