劇場公開日 2022年12月23日

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「偽札犯の娘(=原作者)の心情に寄り過ぎたか」フラッグ・デイ 父を想う日 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5偽札犯の娘(=原作者)の心情に寄り過ぎたか

2022年12月26日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

1992年、約2000万ドル相当の偽札事件(米史上4番目の額だとか)を起こした犯人ジョン・ボーゲルの娘、ジェニファー・ボーゲルが書いた回顧録が原作。企画が発表された2012年にはアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ(「21グラム」でショーン・ペンを起用していた)が監督する予定だったようだが、何らかの事情でイニャリトゥが降板し、ショーン・ペンが出演だけでなく監督も兼ねることになった。

ペンは過去の監督作6作では自身は出演しておらず、本来ならば兼任するより、演技であれ演出であれ専念したいタイプなのだろう。だが今作では自身のみならず娘ディラン・ペン、息子ホッパー・ジャック・ペンも家族の役で出演させ、私的なプロジェクトのような趣も感じさせる。

16ミリフィルムで撮影された映像のノスタルジックな質感が味わい深い。ただなんだろう、いわば社会不適合者で真っ当に働き家族を養うことができなかったが、本人なりの愛情で接してくれた父親に対する原作者の心情に寄り過ぎた気がする。ジョン・ボーゲルという人物にもっと客観的に迫り、偽札事件の経緯や影響などもより社会的な視点で伝えてくれたなら、映画自体もより興味深いものになったのではなかろうか。

高森 郁哉