アネットのレビュー・感想・評価
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ベイビーとドライバー
かつてのフランスの“新しい波”三羽烏、ジャン=ジャック・ベネックス、レオス・カラックス、リュック・ベッソンのうち、一番ぴんと来なかったのが、このカラックス。それでもまだアレックス三部作の頃は良かったけど、その後は作品数も少なく、印象が薄い。
この新作に関して言えば、一体何を見せられているんだろうとずっと我慢との戦いだった。(ミュージカルでは往々にしてありがちだが)ちょっとした台詞をいちいち歌にするので、間延びして仕方がない。主役二人の愛憎劇は陳腐で、人形とのやりとりも含めてうたたねを誘う。偽悪的なスタンダップジョークもただ痛々しいだけだ。
監督に謝らないといけないのは、上映中二千回ほど呼吸をしてしまったこと。お約束を破って申し訳ない。
「スパークス、メイル兄弟」
今年46本目。
冒頭でスパークスの登場。スパークスは1970年にロンとラッセルのメイル兄弟によって結成されたアメリカのバンド。
ここで街を歩きながら歌い出す事によって、この映画はこう言う映画ですよと言わば所信表明。
全編歌でしたね。ミュージカル映画が非常に好きだが今作はロックオペラ。
アダム・ドライバーのコメディオペラが秀逸だったが、マリオン・コティヤールの歌声も素晴らし過ぎて、映画で傑作オペラ2つ見た感じ。
アネットちゃんが可愛い!スパークス登場カッコいい!OK!
帰郷の道中、暇だなぁとなり、いつか観たなと思い出し、久々にレビュー。
最初に本映画とは全く関係ないのですが。
伏見ミリオン座様。「リコリスピザ」をかけてくださりありがとうございます。公開日に必ず行きます。
そして、その他「リコリスピザ」をかけなかった大劇場様。一生忘れないからな。w
さて、では「アネット」について。
この映画は、正直ネタバレもクソもないとは思うし、ネタバレと言われるであろう箇所をレビュー内で触れる必要があるかというとないと思うので、「ネタバレあり」にはしないで、多分ネタバレもそんなしない感じになるかなぁと思います。
と言いつつ、映画始まってすぐですが。これはYouTubeとか予告とかでも出てるからネタバレと言われたくないんですが、本作の監督であるレオス・カラックスが登場。どこかのレコーディング室で、後ろのソファにはレオスの娘さんがおり、レオスが娘を側に呼びレコーディングのスタートをかける。するとレコーディング室には本作の原案・音楽を担当するスパークスがおり、彼らの楽曲「So May We Start」の歌唱が始まると同時に、本作「アネット」がスタートする。
このメタ的オープニングは、近年観た映画の中では最高と言っていいほどの高揚感がありました。特に本作はミュージカル映画という事もあり、そもそも現実的なリアリティを考えて観ると違和感を持ってしまう人が多くなりがちなジャンルである所に、メタを入れて鼻から違和感を正当化して舞台建てをしてくるというのは、非常に効果的なものだなぁと感心させられました。
ただ、そういう所でいうと、そこからの本編というのはかなり普通に物語になってしまうので、個人的にはもっとぐちゃぐちゃにして違和感ユニバースを構築する方に振った方が映画体験としてはもっと楽しくなったのかなぁと感じました。
勿論、映像体験という点で言えば、ポスタービジュアルにもなってる荒波のシーンやつまらないアダムドライバーのコント舞台でのミュージカルシーンなど、良い所もあるにはあるんですが、全体として観た時はどうしても食い足りなさと単調さを、特に後半感じる作品になってしまったなぁという印象を受けました。
あと、本作は、冒頭にも出てくる娘さんに捧げられており、冒頭に監督が出ていることから察するに、監督自身の話という色が強いんだろうなぁと感じました。そのせいか、スパークスの音楽は勿論良かったのですけど、「ディスタウン」や「時は流れ、気分は変わる」などを聞いた時に感じた「こんな曲をつくる人たちから生まれる映画って、どんなエキセントリックな映画になるんだ!?」といったところへの回答を貰えるほどのものにはならなかったなぁという感想を持ちました。
寧ろ、そういうところでいくと、エドガー・ライト監督の「スパークスブラザーズ」の方がその回答は貰えそうな感じだったので、機会があれば、できれば見に行きたいですね。
なんか、いつにも増してフワフワした事しか言ってなくて申し訳ないですが、行って損はしない映画だとは思います。ミュージカル映画なんで、是非劇場で!これはそう!
共依存への優しい共感
男女や家族間の共依存で苦しんでいる人に懇切丁寧な共感をあの手この手で与えてくれます。
育児で家にずっといると、配偶者に殺意生まれがちなところわかってくれてうれしかった〜
偽物の愛ばかりの救い難い共依存状態、
そこからの小さな出口を教えてくれる映画です。
ではその出口を出たあと、どうすればいいのか?
自我を取り戻し自立し生きていくとはどういうことなのか。
こちらはスパークスブラザーズのドキュメンタリーで繰り返し描かれていきます。早起きと貯金とか。もっと根本的なこともたくさん。ぜひ2本立て続けに見ることをおすすめします。
サルの神様
バンド経験のある人ならばオープニングにドキドキするはず。特にエレキギターにケーブル差し込んだ時のノイズとか、アナログなエフェクター群、懐かしくてしょうがない♪まぁ、ここだけは息を止めて観ていても苦にならないかも・・・
プロットそのものは単純構造でしたけど、アネットが賞賛され、ステージで歌いまくるところはアル・パチーノ主演の映画『シモーヌ』(2002)を思い出しました。話は全然違うんだけど、人々の熱狂ぶりが似ていたような・・・もしくは初音ミクのステージとか。
結局のところ、スパークスの音楽が好きかどうかで評価が決まってしまいそうな映画でした。いきなりの#Me Too映像や日本人俳優(特に古舘寛治)の登場に驚いたりしたし、マリオン・コティヤールの大胆な演技など、面白いところはあった。ただ、ちょっと眠気が・・・
毒舌スタンダップ・コメディアンのヘンリー・マクヘンリー。観客も一体となって文句を言ったり、ヤジを飛ばしたりで、こんな芸風もあるんですね。好きじゃないけど。そんなアダム・ドライバーの怖さも発揮されたし、高身長のせいで後ろ姿がブルー・ザ・ブロディに見えたよ・・・
フランス語は全然知らないけど、アネットという名前が小さいアンとかって意味なのかな。まぁ、ヘンリー・マクヘンリーというのも変わった名前。ヘンリー家の息子ってところだろうか。
変わったミュージカル
コメディアンのヘンリーとオペラ歌手のアンの2人の間に生まれたアネットに関するダークな話
ロンとラッセルのスパークスが音楽を担当してて、そこは良かったが、ストーリーとしてはどうかと思うような話。
あまり良さがわからず眠くなった。
アネット役のデビン・マクドウェルは可愛かった。
映像体験が面白い
つくりが独特で面白いね。オープニングの長回し観てて楽しい。
アダム・ドライバーのステージのシーンで、めちゃくちゃ笑いをとってるってことになってるけど、あれ、面白いかな。
そこからも映像は面白くて、観ていられるんだけど、話は単調だったな。
でも映像体験楽しいから良かったよ。
古舘さんと水原希子も出てたね。
愛なんてどこにもない
スタンダップコメディアンのヘンリー(アダム・ドライバー)とオペラ歌手のアン(マリオン・コティヤール)は恋に落ち、やがて結婚して娘のアネットが生まれる。
こう書けば、これは愛の物語かと思うが、本作はそうではない。
ゆえに観るものは、終始、落ち着かない。
舞台でヘンリーは繰り返し「殺し」、アンは「死ぬ」。
そう、この映画は2人の恋愛が順調そうに見えるあいだも不穏だ。
ヘンリーは身勝手な男である。
落ち目になると家庭を乱し、アンを死なせる(過失致死と言ってもいい状況)。
アンは死んでも幽霊になってヘンリーにつきまとう。この執念は愛なのかと思うと、彼女にはヘンリーの前に男がいたこと(その男は、その当時は地位も実力もなく、人気者のヘンリーに乗り換えたことが示唆される)、そして、彼との子を“ヘンリーとの子”と偽っていたことが明らかになる(アンにとってもアネットが人形として描かれていることに注意)。
そう、アンのほうにも誠実さはない。
このミュージカル、愛なんてどこにもないのだ。
その2人の子が、人ではない存在(人形)として描かれるのは納得である。
ミュージカルという不自然さと、作為的な画面作りがマッチしている。
ダークな大人のファンタジーというべき作品。
アダム・ドライバー、マリオン・コーティヤールの演技、歌も見事。
カラックス作品としては物足りない
嗚呼、レオス・カラックス様💙
2010年台のベストの一本となる『ホーリー・モーターズ』から9年ぶりに拝見した今作。残念ながら大傑作ではありませんでした。
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ダーク・ファンタジー・ミュージカルとでも言うのか。アダム・ドライバーとマリオン・コティヤールは流石の存在感だし、スパークスの音楽も👍なのだが、カラックスの作品としては物足りない。圧倒的でない。
何か悔しいなぁ。
大きな期待を抱きつつ次作を待ちます。
カラックスの集大成
前代未聞のロックオペラとミュージカルの融合を見事な演出で映像化したレオス・カラックスに脱帽。
子供の人形を使っているあたりも、これは寓話だというカラックスからの戦線布告のようで、しかも人形でなければ成立しなかった、カラックスにしか描けない世界だと確信。
これはホーリーモーターズから続くカラックスの集大成であり、ただのミュージカル映画の枠におさまらない新ジャンル映画を確立させたと言って良いのではないだろうか。
アダム・ドライバーの演技は他の作品に劣らず素晴らしく、彼の凄みを堪能できる。
We love each other so much.....
破滅型の男の愛と喪失の物語。
アダム・ドライバーがこんなにできるヤツとは、知らなかった。スター・ウォーズのどよーんとしたイメージしかなかった。スタンダップ・コメディの舞台、がんばったねー。イケイケの時の舞台と、そうじゃない舞台、演じ分けていた。笑いってやつは、なんと繊細なんだ。ヘンリーは観客が変わったと思っているけど、本当は自分が変わったんだと思う。でも、分析もしたくないし、方向転換する努力もしたくない。それじゃ落ちていくだけだな。顔のアザが最初は薄かったのに、だんだん濃くなっていく。心の闇が深まるのと共に。
アンは努力家だ。子供の頃から声を鍛え、常にのどを気にしている。どうしてヘンリーを好きになったのか、よくわからないが、きっと自分でもわからなかったかもねー。気づいたら沼にはまって、身動きできなくなってしまったパターン? ヒロインがラストで死ぬオペラ、主役を演じるアンは、舞台の上で何度も死ぬ。暗示的だ。ヘンリーの回想であっさり流されてしまったが、さまざまなオペラの衣装、もっときっちり見たかったー。
あと、アネット役の子は、なんですか、天才ですか!? 2014年生まれ、撮影時6才くらい? こりゃ参った。脱帽。
古舘寛治さんが意外な役で登場、水原希子、福島リラがちょい役で出た。みんな歌ってた。どんな縁でオファーが来たんだ?
指揮者のサイモン・ヘルバーグは、どこかで見たと思ったら、「マダムフローレンス」だった。こちらでも伴奏してたな。指揮者が独白しながら、音楽の盛り上がるところで話を中断し、律儀に「失礼」と言うのがおもしろかった。この人、良心の呵責を感じながらも、結局音楽の魔力に抗えなかったね。
スパークスの映画を観たばかりなので、メイル兄弟が出てきただけで、うれしくなってしまった。ロン兄さんがシャキシャキ歩いてるよ! 70後半だというのに! 2人で作詞作曲しているらしいが、「We love each other so much」のメロディは、完全に刷り込まれた。しばらく鼻歌で歌ってしまうわ。「私達はとても愛し合っている」という平凡な一文を、よくぞこれだけロマンティックにしたことよ。イントロとエンディングも多幸感に溢れて、とても良かった。いやー、ホントに映画ができて良かったー。
ちょっと失礼
伴奏者から指揮者になった男が語りながら指揮をしてるところをグルングルン回って、間に3回指揮に集中するんで「ちょっと失礼」。ここが一番かな。
ちょっと懐かしいメタ的なオープニングでめちゃめちゃ期待が盛り上がる。ここから二人が盛り上がってバイクで疾走するところまでが起なんだけど、ここまでは星4つ。
アネットがめちゃ自然なパペットからラストで子供になったところ、その子がまたうますぎるところ、演者が皆達者だったところ、バイクがトライアンフ、日本の資本が入ってるからか六本木も出るし日本人も3人も出てるとこ、良いとこもたくさんあるけど、全体では星3個マイナー。
アダム・ドライバーがスタンダップコメディアン役というのも知らなかったが、おいらにゃスタンダップコメディー鬼門なんで単に響かなかったのか本当につまらないのかわからない。クレジットに例のクリス・ロック。監修なのかな。
あとポスター以外に知識なく鑑賞したんだが、あのシーンをポスターにしてミュージカルと聞けば違う内容を想像する。絵柄が美しければそれで良いのか?俺は買えんデス。
異常な熱量だけど
あのレオス・カラックスの新作、ミュージカルでAドライバーとMコティヤールが共演?もはや事件でしょと観たら。あの子供役の件とかさぁやっぱ大御所は周りが止めないと。まさかのスパークスが音楽提供でしかも、オープニングに出てくるしびっくり。80年代後半から90年代前半は、間違いなく神様扱いの監督だったもんなぁ。ポンヌフの恋人から30年、映画とは共感を得る為の物じゃなく、違和感、事件なんやと久々に嬉しかった。
掛かり気味
レオン・カラックス作品初鑑賞です。いきなり飛び込むにはハードルが高いと言われていましたが、そんな事はないだろうと思い切って飛び込んでみました。
いや〜頭のおかしい作品でしたね。やりたい事全部詰めの渋滞映画でした。
最初のロックオペラは音楽の好みもありとてもワクワクするものになっていました。このテンションなら楽しんでいけるなと思いましたが、そうはいかず…。
アダム・ドライバーはつくづくすごい俳優だなと実感させられました。直近の「最後の決闘裁判」といい「ハウス・オブ・グッチ」といい、嫌ーな奴を演じさせたら右に出るものはいないと思えるくらい良いキャラクターをしていました。ただ、物語に活きていたかというと微妙な感じでした。スタンダップコメディは一つも面白くありませんでしたし、嫌ーな奴くらいで止まるなら良かったのですが、つまらないサイコパスの領域に達してしまったが故に物語を停滞させているようにも見えました。ずっとオペラを歌っているのも鼻についてしまいました。
あと意図的なものだとは思いますが、娘アネットの完全に人工的なもので作られておりとても奇妙でした。ここまで感情の起伏がなく目が据わっているのなるとこうも怖いんだなと思いました。
終盤に差し掛かるまではつまらないなと思っていましたが、終盤になりアネットが父ヘンリーの殺人を暴露して獄中にぶち込まれたあたりからだんだん面白くなってきました。アネットが父親を突き放す会話をするあたり子離れ、巣立ちのメタファーのように思えてフフッと笑えました。
OPとEDでスクリーンの壁を打ち破って観客に語りかけてくる演出はわりと好きでした。
鑑賞日 4/17
鑑賞時間 19:45〜22:10
座席 D-9
酔っ払いって怖いよね。
スタンダップ・コメディアンのヘンリーとオペラ歌手のアンが結婚して子供を生んで徐々に変わっていくミュージカル。
スタンダップ・コメディが日本には馴染みのない文化もあって、ヘンリー、なんかこの人怖い・変だなと思ってたらちゃんとその感覚合ってて安心した。足くすぐるイチャイチャとかアダム・ドライバー身体でかいし、変なおどけ方で怖いのよ。
そしてヘンリーの暴力性がついに全面に出るシーンも、酔っ払って制御の効かない大男の怖さ。この"際どい男"を演じるの『最後の決闘裁判』に続き、上手いなぁアダム・ドライバー。
このポスターのシーン、見る前は男女が普通に踊ってるかと思いきや、よく見たらちゃんとアンが引っ張られてるように見える。男性の暴力がいかに傍から見て隠されているのかわかるし、劇中でもヘンリーって殴る蹴るのあからさまな暴力は振るわないけど何故かすごく暴力的に見えるのよな。
あと、ヘンリーが落ち目になってきて妻を殺したジョークを披露して観客にキレられるシーン、めっちゃウィル・スミスの件思い出した(笑)こういうブラックジョークって扱う人の感覚と受け取る側の感覚の擦り合わせみたいなもので、それが少しズレるとすぐアウトになる。ここにも一種の"際どさ"みたいなのがリンクしてるように感じた。
最初のショーで、銃で撃たれる演出ほぼ誰も笑ってないけど1人だけ笑ってる人がいて、これがスタンダップ・コメディの本質なんだろうな。そのジョークで笑える人も笑えない人もいて、そのジャッジはその場の雰囲気が決めている。あまりにもクリーンすぎるコメディしか見てない日本人には難しい文化だ。
「アネット」というギミック
ミュージカル映画ということぐらいしか知らずに鑑賞しましたが、まぁアバンからカッコいいのなんのって。第74回カンヌ国際映画祭のオープニング作品として上映されたとのことですが、まさにオープニングにうってつけの作品だと思います。
プロットは全般古典的な内容ですが、アダム演じるヘンリーのあふれ出る「不穏さ」と、マリオン演じるアンのどこか「儚げ」な感じ。そして、二人の愛の結晶である「アネット」のギミックがシュールで最後まで目が離せません。
観ているとあるシーンで福島リラさんと古舘寛治さんが出演。また別のシーンでは水原希子さん(出来れば彼女のソロも聴きたかった!)。他にも山川真里果さんと日本人キャストが4名も。そう言えば、カラックス監督は以前、日本との合作オムニバス映画『TOKYO!』の第2部『メルド』で監督していますが、あれはかなり変わった映画でした。
ヘンリーに時折「第四の壁」である鑑賞者(我々)を意識させつつも、全く対照的な「存在感」のアネットを微妙な表情だけで我々を理解させる不思議なバランスが絶妙で、どこかクセになる一本です。
ストーリーを見るのか、演劇作品として見るのか…
ストーリー的に言えば、自己顕示欲の強い男はDVに走りがちだから嫌い!
要注意って言ったじゃんって感じ。
映画作品全体として言えば、どこまでも演劇で寓話的な新しいミュージカル。
エンドロールの映像が、これがみんなで作り上げたものであることを物語っている。
監督は「ポンヌフの恋人」「汚れた血」の人か…
どちらの作品も素晴らしかったけど、なんか嫌な感じが残った記憶がある。
なんとなく納得。
『スパークス・ブラザーズ』とニコイチで鑑賞したい、安易な感情移入を拒否するどこまでもキテレツで絶望的に切ないミュージカル
かなりキテレツな物語。スタンダップコメディアンのヘンリーとオペラ歌手のアンの燃え上がるような恋物語かと思いきや、二人の間に娘アネットが生まれてから生活は一変。ヘンリーの人気は急下降、優雅な生活に翳りが見え始めたかと思えば物語は坂道を転がり落ちていく。観客の感情移入を拒否するかのように高らかに歌い上げられる物語も異様ですが、アネットの姿が全く可愛くないパペットで表現されているのも異様。劇中歌には周囲の雑音も一緒に取り込んだライブ録音のようで、何もかもが奇妙で不細工で赤裸々。所々でひょっこり現れるロンとラッセルの飄々としたユーモラスな佇まいも相俟ってまさにスパークスの楽曲が映像化された世界は『スパークス・ブラザーズ』を観ていなければついて行けないくらい唯我独尊で、それは物語を一人で引っ掻き回すヘンリーを演じるアダム・ドライバーの怪演と見事にシンクロしています。ヘンリーが振りかざす一方的な父性に黙々と応えるアネットの健気さは昨日観たばかりの『ハッチング -孵化-』の主人公のそれと重なって見えましたが、父親像が完全に対照的であるところに全く異質の狂気を見ました。
全くもって万人向けの作品ではありませんが、娘を持つ父親であれば終幕の切なさに激しく胸を掻きむしられること請け合いの堂々たる異色作です。
ちなみに日本からは水原希子と古舘寛治が出演。特に水原希子の役回りがタイムリーすぎてビックリすると思います。
私は歳を取りすぎたか
10代の時に「ポンヌフの恋人」に出会い、私を映画好きにした張本人。レオス・カラックス。
カメラは相変わらず美しく詩的な感じはしたのですが、何というか、レオスの作品を鑑賞した後の何とも言えない感傷を本作では感じられませんでした。無垢な凶暴さが、無かったなあ。
私が歳を取りすぎて、あの若い時に感じた感傷を感じられなくなってしまったのか?もう一度鑑賞したら、感じられますかね?本心としては、手放しで絶賛したいです。
レオス大好きっ子だった私と同じ感じ方をした方は、いらっしゃいますか?
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