アネットのレビュー・感想・評価
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ミュージカルっぽくないが格好良い一作
スパークスの音楽をちゃんと聞いたことないのですが、原案・楽曲を担当しているだけあって、ばっちりあっていてめちゃくちゃ格好良かったです。そして、ミュージカルっていうふれこみなんですが、ミュージカルを作ったことがない人が作ったんだろうなぁって感じがWELCOMEなんです。ミュージカル物が苦手な僕が飽きずに見ていられるくらいに「へぇ〜」と感心するようなノリが多いんです。全体にポップでそれも良し。ミュージカル的なHシーン・・・・生涯初めて見た気がします(笑)。
さてさて、ストーリーですが根幹部分はそこそこにベタな気がします。全く詳しくないので完全なる推測ですが、シェイクスピアの戯曲にありそうな感じです。でも、なんだか面白いんです。きっとそれはアネットのカラクリの効果かなぁって思います。そのカラクリが出るまでの途中まで正統派な感じですが、急に異端な展開を見せてくれます。「なんで?」って「?」が100個くらい付きますし、それはラストまでずーーーっと引きずります。きっと。のアネットのカラクリ。ポカーンとなる時間帯ありますよ。でも、でも、「なるほどー!!!」の大団円ラストに繋がってるんですよ、これが。ポカン展開の効果ありです。
結末についてはいろんな解釈があると思います。いろんな捉え方ができるのではないでしょうか?そういうの楽しいですよね。僕の説は「アネット=(親の)パペット=ステージママ(パパ)への皮肉」かなぁなんて思ってます。
しかし、安定のアダム・ドライバー。芸達者な方ですねぇ。それと、今作でレオス・カラックス監督の作品を初めて観ましたが、日本への造詣が深い方なんでしょうかね?非常に日本リスペクトを感じる場面多かったんです。ちなみにエンドロールは最後まで見てくださいね。ナイスな演出ですよ。
全体を俯瞰すると結構ワチャワチャしていますがこれがスパークスの作りたかった物なんでしょうね。後日「スパークス・ブラザーズ」を鑑賞したらその点はさらに納得しました。
多分、好き嫌いが分かれる作品なんじゃぁないかなぁ?って思います。僕は気に入りました。
アダムドライバーのファンだけが観れば良い作品
インパクトのあるポスター画に騙された?
オープニングやエンディングで明示されているように、これは、リアルなドラマではなく、作り話であり、寓話である。そして、そのことを補強するのが、ミュージカルという手法と、タイトルロールが人形という仕掛けであろう。
特に、人形については、この映画のテーマを表象するもののように思われ、最も重要な役割りを演じているのではないかとも考えられる。例えば、親からしてみれば、子供は自分の言いなりになる人形としてしか見えていなかったということであり、子供にとっては、自分の考えをしっかりと持つことで、親の操り人形から一人の人間へと成長することができたということを言いたかったのではないか?
あるいは、それは、勝手な深読みで、単に、映画の中身と同じような「子供の才能の搾取」となることを避けるため、子役を起用しなかっただけなのかもしれない。
いずれにしても、そうした考えを巡らす時点で、すでに監督の術中にはまってしまっているということだろう。
カラックスの異質な世界になじめるかなじめないか、でしょうね。
刺激に満ちているけど、アネットの表現を受け容れられるかどうかで評価が分かれそうな一作。
レオス・カラックス監督作品を劇場で鑑賞する体験は久しぶりでした。カラックス監督としては、確か初めてとなる全編英語、かつミュージカル映画ということで、予告編の段階から期待に胸をときめかせつつ、果たしてどんな映画になるんだろう…、という心配も少しありました。
オープニング早々のミュージカルシーンは、予告編で見たとおりの力強さ、かっこよさ、そして荒々しくも美しさに満ちていて、実に素晴らしいと感じました(カラックス本人も娘とともに登場。また演奏しているミュージシャンは本作の音楽を担当したバンド、スパークス)。そこから中盤まではおおよそ予告から予想できる展開となるのですが、中盤以降は大きく方向性が変化します。
物語の分岐点となり、本作のイメージとしても使われている嵐のダンスシーンは、美しくも演劇的であるため、心象風景を映像としているのかと思ったら、本当に嵐のまっただ中のダンスだったとは!カラックス監督の、観念的なようで実はものすごく具体的な状況を美麗に描く映像感覚が、まさに怒濤の勢いで迫ってくる場面でした。
映像は緑や青が印象的に使用されており、それぞれが「生」や「死」を画面全体で表象しています。また物語全体は聖書や寓話の引用に満ちていて(原案は音楽担当のスパークスによるアルバム)、さらに映画を俯瞰的(メタ的)に見る視座も含まれています(ラストのメッセージははあからさま過ぎて笑うけど)。
一回の鑑賞では容易に全貌を掴ませない重層的な魅力に満ちた本作は、さすがレオックス監督作品です。
独善的な生き方の果てに
冒頭と末尾で示されていたように、これは監督の娘さんへの懺悔なのかな、と強く感じる作品でした。
人は「親になりました〜!!」と宝くじにでも当たるような気分で親になり、子供のことを"生きている人間"と思えない日々があるのかもしれない。子供が自分の意思で話して初めて、当たり前のその事実に向き合うのかもしれない。
サスペンスで誤魔化されていましたが、もし可能ならアンも生かしたままで、2人がそれぞれ「親になる」ことに向き合う筋書きも見てみたかった。
ヘンリーみたいに思い通りにならないとすぐキレて他者を害して、自分の尊厳を守ろうとする人っていますよね…アンが"告発"を知ってなお、自分を守るために離別を選べなかったのは、彼女も同じく現実感がなかったせいなのかな。
超人気前衛的コメディアンとされるヘンリーの面白さがわからなかったので、成功と凋落の差が感じられず、そこは文化の違いで惜しい気持ちがあります。見る前からうすうすわかっていましたが、笑いって共有するのが難しいんですね、やっぱり。
最後の「誰かに薦めてね!」に一番笑ってしまいました。こんなに友達に薦めにくい作品もないだろうに!!
孤独と名声
古舘寛治
ヘンなミュージカル!(褒め言葉)
2022年劇場鑑賞89本目。
変わったミュージカルということと、すぐ人を裏切る役といえばのアダム・ドライバー主演という事だけの情報で鑑賞。
冒頭から観客に死ねと言ってくるところにもう狂ってんなと思わせられます。直後にてんかん持ちを本当に殺しにかかる激しい光の点滅の後メタ表現あふれた歌が始まり、やっと物語は始まります。セリフとして喋るシーンは全編通してほぼなく、普通のセリフも全部歌なのと、前半意図的な似たシーンの繰り返し(ちょっとずつ話は進んでいる)で結構睡魔が襲ってきました。
気づいたら主要人物が退場していてセリフで何があったかは分かったのですが痛恨のミス。
しかしそんな眠気もふっとぶ奇跡か起こります。タイトルのアネットとは赤ちゃんの名前なのですが、この赤ちゃん、理由あってCGと人形を使って存在させられています。このCGと人形のクオリティがプレステ2並の出来で正直気色悪いです。しかし今までの演出を考えるとこれもわざとなのかもしれないです。
最初から最後まで既存のミュージカル映画とは一線を画した異色作なのでミュージカル好きは必見ではないでしょうか。
もっと没入できたら楽しかったと思えた
破天荒
破天荒なミュージカル映画だなあ〜とずっと最初から最後まで楽しみながら観ることが出来た。
始まり方から終わり方まで奇想天外だし、一方で描かれる物語やその結末は一筋縄ではいかない感じがして、最初はノリと勢いを楽しみながら観ていたが、やはりレオス・カラックスの映画はそんな簡単に終わるわけないかという展開を見せてくれた。
とは言ってもレオス・カラックスの作品は「ポンヌフの恋人」しか見た事ないので、改めてこの監督の他の作品も観たいと思わせてもらえた。
「ポンヌフの恋人」でも感じたが、レオス・カラックス作品の編集がとても好きだ。物語を紡ぐことにおいて、これから何が起こるんだ?と思わせられる繋ぎ方をしてくる。特徴的な技法でアクロバティックに。そんな編集を味わう度に、映画を観ていることを感じられる。
アネットがなぜ生まれたときから父親が逮捕されるまでの間、ずっと人形として描写されていたのか。
アネットはずっと父と母の操り人形として存在していて、父も母も失う=開放されるという意味で、面会のシーンで初めて人の姿になったのだろうか。そのシーンでアネットはキッパリと「あなたは私を愛せない」と言いきっているので。
ではなぜ、生まれてすぐのタイミングから人形の姿だったのか。その時はまだ父も母も幸せそうだったのに。
そもそも子どもという存在自体が、父と母のエゴから生まれた操り人形という皮肉なのだろうか?
なんにせよアネットは最後自ら決断し、自分で歩けるようになる。それがこの作品の結末なのだろう。
観といてネタにはなる作品
アメリカのスタンダップコメディ
わからなかった
はじめてカラックスの映画観たけど、おもしろさが全然わからんかった。
最初から最後までずっとスベってるって印象。
オープニングのナレーション、スタジオから歌いながら飛び出して行った時点で不安になったけど、そのままずっとその感じで、指揮者の人出てきたところでおもしろくなりそうな感じしたけど結局エンドロールまでノレへんかった。
おもしろいことしてまっせ感が鼻について楽しめへんかった。
でもファンも多いし、絶賛してる人も多いから、私がわからんだけなんかなって感じ。
合わへんだけとか。素直じゃないからか、学がないから楽しめへんかっただけなのかもしか。
【甘美な愛が、”成功格差”により崩壊して行く過程を描いた唯一無二の独創的な、ダークファンタジーミュージカル。幼きパペットの表情が切なくて・・。】
- 冒頭から、印象的である。キャリア半世紀の兄弟ロックバンド「スパークス」の演奏シーンから始まり、そのままコメディアンのヘンリー(アダム・ドライバー)と国際的オペラ歌手アン(マリオン・コティヤール)が、バイクと車で夜の街に走り去る。ついでに、観客には、"劇中は息をしないで"と告げられる・・。-
◆感想<Caution! 内容に触れています。>
・今作品は撮影現場で役者がライブで歌ったというだけあり、大スクリーンで観ると役柄の思いが深く伝わって来る様に感じた。台詞よりも歌の力だろうか・・。
ー ご存じの通りミュージカル映画では、先に音を収録し、演技を合わせるのが一般的である。-
・全編の台詞がほぼ歌であるが、曲調はロックだったり、ポップであったり、オペラであったり。
- 音楽担当の「スパークス」の力と役者の歌の力を感じる。アダム・ドライバーは「マリッジ・ストーリー」で美声を披露しているし、マリオン・コティヤールは「エディットピアフ 愛の讃歌」で歌の上手さはお墨付きである。(と、思い込んでいたらエディットピアフの音源を使用していたと分かった。けれど、マリオン・コティヤールは物凄いヴォイス・トレーニングをしたんだよね。役者魂を感じるよね。)
今作でも、アダム・ドライバーは天鵞絨のようなテノールを、マリオン・コティヤールはオペラシーンで、美しきソプラノを聞かせてくれる・・。-
・二人はベッドシーンでも、出産シーンでも歌い続ける。
- 凄いなあ。大変だっただろうなあ・・。ついでに産婦人科医は古舘寛治である。ビックリ!-
・ヘンリーのコメディアンとして、絶頂期の舞台での観客との韻を踏んだような、楽しき遣り取りも見事だし、マリオン・コティヤールに至ってはもう・・、ディーバである・・。
ー が、舞台での失敗、パワハラを告発されてヘンリーの人気は失墜、一方、アンは順調にキャリアを積むが、ヘンリーの嫉妬、疑念から二人の関係は悪化し、修復するために幼子と旅に出るが・・。-
・二人の子供のアネットがパペットである事も効果的である。
- 二人の愛が、崩壊し、嵐の海にアンが落ちた後、島に着いたアネットとヘンリー。月光に照らされたアネットが歌い出す幻想的なシーン。
そして、父ヘンリーが犯した二つの罪を、哀し気な表情で見ている。-
・アンを愛していたピアノ伴奏者で、その後指揮者になった男(サイモン・ヘルバーグ)は彼女の死に疑念を抱き、ヘンリーの家を訪れるが・・。
ー ヘンリーの常軌は逸脱していた・・。-
<光が当たると、歌い出すベイビー・アネットのラストショーのシーンで、ベイビー・アネットが涙を流しながら大観衆の前で言った言葉。
そして、獄に繋がれたヘンリーを訪れた成長したアネットは、もはやパペットではなく冷たき言葉を父に言い、獄を去る。
今作は、唯一無二の独創的な、ダークファンタジーミュージカルである。>
レオス・カラックスといえば、ノーヘルでバイク(憧れ)
鑑賞動機:地方でも中小規模公開作品の需要がないと思われたらますます観る機会がへるという危機感9割、ドライバーとコティヤール1割。
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