「舞台ミュージカルを映画の世界観で自由奔放に表現した楽しさと人形アネットの斬新さ」アネット Gustavさんの映画レビュー(感想・評価)
舞台ミュージカルを映画の世界観で自由奔放に表現した楽しさと人形アネットの斬新さ
完璧主義の耽美的な映像を得意とする寡作監督レオン・カラックス監督のユニーク且つ独創的なロック・オペラ・ミュージカル映画。舞台ミュージカル「アネット」上演が観客席の垣根を越え、街に躍り出て歌い踊り芝居をするカラックス独自の世界観が楽しい。狭い舞台では表現できない自然の息吹と街に巣くう人間の吐息を映像化した野心作にして、ストーリー自体が凡庸なのが勿体ないくらいで、もうひと捻りあれば文句なしの傑作になったであろう。しかし、この映画の面白さは、カラックス監督の映画愛に裏打ちされた野心にあり、それはアネットを操り人形で演じさせた挑戦に価値がある。人形が持つ独特な生命感と神秘性を生かし、最小限の動きだけでアネットの名演を生み出している。予想通り最後は人間の少女に替わったが、人形程の存在感が無いのがそれを証明している。
主演のアダム・ドライバーとマリオン・コティヤールの役になり切っての熱演も素晴らしい。カロリーヌ・シャンプティエの撮影は、夜のシーンが特に素晴らしく、カラックスの世界観を美しく表現していて見事。演出も含め嵐に遭遇するヨットの海のシーンの舞台劇的な表現と孤島に上陸した後の幻想的な絵画の色調の趣もいい。ヘンリーが住む家のプールの使い方の巧さも印象的。初めて聴くスパークスの音楽は台詞を重要視したもので、ロックの派手さより演技に寄り添った音楽の印象を持った。日本の古舘寛治が産婦人科医師役で出演しているが、何故そこにと思ってしまい可笑しくなってしまった。
最初のタイトルバックの録音スタジオから街に繰り出すスタッフ・キャストが期待感をもたせ、最後はカーテンコール宜しく森の中を皆が行進する。登場したアネットの人形たちも皆に抱えられている。悲しいストーリーのミュージカルでも、人形が活躍する斬新さと巧さが観ていて楽しいミュージカル映画でした。舞台の面白さ、音楽の素晴らしさ、そして映画の楽しさが一つになったレオン・カラックスの秀作。
Gustavさん、こんばんは。
Perfect Daysで頂いていたコメントありがとうございます。昔のTVコマーシャルはお洒落で大人の世界を感じるものが多かった印象があります(自分が子どもだったから当然ですが)。それに今より静かだったようにも思います
共感ありがとうございます。
ありありと映画が再現されて、感動が蘇って来ました。
ミュージカルと演劇に詳しいGUSTAVさんの審美眼に叶った
映画でしたね。
そのユニークな独創性・・・カラックス監督作品をまた観れるとは!
破滅的な愛の物語なのに多幸感を感じました。