劇場公開日 2021年9月17日

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「「シネマ de 憲法」としても優れた一本。」偽りの隣人 ある諜報員の告白 talkieさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0「シネマ de 憲法」としても優れた一本。

2023年7月11日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

<映画のことば>
「無念に死ぬ者がいない世界。指導者が慢心しない世界。すべての権力が、国民によって行使される世界。そんな世界を、皆さんと共に作っていきます。」

本来は敵対側である諜報員が、対象者に感化されていくというストーリーは他作『善き人のためのソナタ』にもあったと思いますが、それだけでなく、随所に笑いを散りばめながら、その実はシリアスに現実(一頃は軍事政権が支配した韓国)の不条理、非道さも、一本の線として描き出す…。
なかなかどうして、侮り難い一本だったと思います。

そして「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基づくものである。」と現行憲法がその前文で高らかに宣言したうえに、「われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。」とまで、念には念を入れたことの「本当の重み」を再認識するには好個の一本である点において、「シネマ de 憲法」として、素晴らしい一本でした。

ちなみに「落語」というのは、もともとは滑稽噺から始まって、人情噺に展開してきたと聞き及びますが。実際、最初から湿っぽい話、教示的・教条的な話をされると大抵は引いてしまいますが、滑稽がまじっていると、笑いで心の扉が開いたところへ、教示的・教条的な話でもすっと入り込むようで、その点が話術としての落語の「威力」なのだそうですけれども。
そういう言い方・見方をするのであれば、一見すると、気楽に観られる娯楽作にも見せかけながら、衝くべき点はちゃんと衝き(そして、その摘示は正鵠を得ている)、笑いの場面を通じながら、それが抵抗なく受け入れられる「つくり」になっているという点では、とても優れた一本であったと思います。評論子は。惜しみなく。

むろん、秀作であったと思います。

<映画のことば>
なぜ私は銭湯が好きだと思う?
ここでは、人の優劣などないからだ。
出身地がどこだろうと、与党だろうと野党だろうと。
裸になってしまえば、どうでもよくなる。

<映画のことば>
「先生、もう時間がありません。明日は危険です。」
「君には君の仕事があって、私には私の仕事がある。それぞれの仕事をすればいい。いつの日にか、きっと、一緒に食事をしよう。」

talkie