偽りの隣人 ある諜報員の告白のレビュー・感想・評価
全41件中、1~20件目を表示
金大中が1985年に軟禁された史実に着想を得て、韓流らしいエンタメに昇華させた
イ・ファンギョン監督の映画は「7番房の奇跡」(今年7月時点で韓国映画観客動員数歴代7位)と本作の2本しか観ていないが、これらには明白な共通点がある。韓国で実際に起きた出来事に着想を得つつ、欧米の類似ジャンルの名作からエッセンスを取り込み、オリジナルの物語に昇華させる脚本の力。それに、ケレン味あふれるドタバタや泣かせる場面と、シリアスなシーンを巧みに配分する演出力だ。
先に「7番房の奇跡」に少し触れておくと、同作には派出所所長の幼い娘が殺害され、逮捕された男性が無期懲役判決ののち誤認逮捕だったことが明らかになった実際の事件がモチーフになったという。また、「ショーシャンクの空に」「グリーンマイル」の2作に似た要素が認められる。
そして本作「偽りの隣人 ある諜報員の告白」では、1973年に東京で拉致された事件により日本の一定世代以上にも知名度の高い政治家・金大中と彼の身に降りかかった出来事(1971年の交通事故を装った暗殺工作、1985年の軟禁など)が、野党政治家イ・ウィシクのモデルになっている。軟禁されたウィシクを隣家から盗聴する主人公ユ・デグォンが、敵対する立場であるはずの相手の暮らしぶりや内面に触れるうち共感を覚えていくという展開は、アカデミー賞外国語映画賞を受賞したドイツ映画「善き人のためのソナタ」を想起させる。
日本でこの手の実話をベースに劇映画を作るなら多分シリアス一辺倒になる気がするが、そうしないのがイ・ファンギョン監督流。前半は、ウィシクの子供たちが突然訪ねてきたり、ウィシクが外出したすきに隣家へ侵入したりする場面で、盗聴班の面々のドタバタぶりが大いに笑わせる。後半はサスペンス要素が強くなるが、立場の違う者同士が心を通わせるという、韓流が得意とする情緒的なシーンもしっかり用意されている。
ウィシクのモデルになった金大中をめぐる状況は、「KT」や「KCIA 南山の部長たち」でも描かれていた。これら2作もあわせて観ると、70年代から80年代にかけての韓国の政治状況を知るのに役立つだろう。
緩急織り交ぜたタッチが徐々に効いてくる
軍事政権下の韓国を舞台にした映画は数多いが、本作があえて史実ではなく、フィクションとしてこの物語を紡ぎ出しているのは興味深い。大統領候補も、彼を盗聴する主人公も、全て架空の人物。しかし人々が当時、自由や平等、腐敗の撤廃、そして正義を、必死に希求した流れは変わらない。そこで描かれる構図は時として、とても簡略化されすぎる(悪役などの描写は特に)きらいはあるものの、その分、主人公らが自宅の敷地を越えて次第に心を通わせていく展開の重ね方はとても繊細かつ丁寧。「盗聴」や「監視」という行為が、その人権を踏みにじる悪質さとは裏腹に、本作では他者の内面をより透過して共振していくためのギミックとして際立っているのも面白い。加えて、この物語で特徴的なのは、語り口がコミカルとシリアスの狭間を行き来し、どちらに転がるか予想がつかないところ。寄せては返す波のように感情の振れ幅の広い社会派ドラマを味わうことができた。
諜報員てお給料はいくらくらいなんやろ?
上層部のやることなすこと、ホンマにえげつない。
こんな社会が本当なら生きていても楽しくないやろなと思う。
諜報機関で働くていやな仕事ではないんやろか?
陰で他人の生活や秘密を暴くような事ばかりやっていたら自分自身も人間不信に陥ったりしないのだろうか?
今回はその答えが後半にうずまいていたのではないか?
デグォンたちの行動が素晴らしかった
娘の不幸な死は必要だったのか?
重体でなんとか助かって「幸せに暮しましたとさ」に終われなかったのか?
ちょっと残念な展開も最後はうるっとさせる。
デグォンたちはその後、どんな人生を歩んだのかなあ?
それにしても韓国のこの時代は怖いなあ
ひどい作り
最近の韓国映画の質の高さを買いかぶりすぎてた。どれでもいいわけではなかった。月曜ドラマランドかと思うレベルの低さ。悪役の深みのなさ、あまりのお涙頂戴、不要なところでのコメディ、なんで諜報局の上層部が自ら殺人トラック運転してんのよ。脚本も編集も地底レベルだからムダに長いし。最後ムダに肉体美披露したのはもしかしてこれアイドル映画だったの?今後は韓国映画ちゃんと調べてから見るようにします。人生の貴重な2時間をドブに捨てました。
絶妙なバランス…
フィクションではあるが軍事政権下の韓国の世相を描きながら、シリアス路線一辺倒にはならずにコメディ要素も含みつつ、涙ありと、見応えあった。悪役でも脇役でも何でもこなすオ・ダルスが名演。ロシアにおけるナワリヌイを思い出し、改めて恐ろしい。
【”私達はお隣さんだろ。何時か食事をしよう。”と民主家思想を持つ政治家は穏やかに彼を監視する私に言った。軍事政権下の韓国に置いて諜報員が自身に下された任務に疑念を抱き民主的思想を得る姿を描いた作品。】
ー 1980年代の激動する韓国の民主化闘争及び国家状態を描いた作品としては、光州事件を描いた傑作「タクシー運転手 約束は海を越えて」や「1987、ある闘いの真実」「国家が破産する日」や「工作 黒金星と呼ばれた男」「KCIA 南山の部長たち」など秀作揃いである。
これは、韓国近代史における民主化を求める民の声に対する武力国家が行った事に対する韓国映画人の”負の時代を闇に留めない!”と言う矜持を示していると思う。
今作も、その一作である。ー
◆感想
・1985年、軍事政権下の韓国。愛国心の強いデグォン(チョン・ウ)は、米国から帰宅しながらも、自宅軟禁された政治家・ウィシク(オ・ダルス)の家に盗聴器を仕掛け、24時間態勢で監視することに。
だが、家族を愛し、国民の平和と平等を願うウィシクの声を聞き続けるうちに、デグォンは上層部に疑問を持ち始める。
ー この、自宅軟禁された政治家・ウィシクはどうみても、金大中氏である。
当時の大統領はご存じの通り、朴大統領を暗殺した一派の全斗煥であり、彼が大統領になってから起こした民主化を求める若者達を虐殺したのが、金大中の基盤でもあった全羅道の主要都市である光州で起こした光州事件である。-
・デグォンが臨家に住む盗聴をするウィシクと銭湯で交わす会話が良い。二人揃って牛乳を飲んだ後に二人ともにお腹が緩いために、トイレに入って交わす会話。
ウィシク”こうやって、牛乳を飲むと、乳業農家が困らないだろう・・。”
・そして、徐々にデグォンが自らの軍事国家を維持する事に拘るキム室長(キム・ヒウォン)の姿勢に疑問を持って行く姿。
ー そして、彼はウィシクを殺害するための情報を察知し、彼を止めようとするが彼の犠牲になったのは、ウィシクの娘で有った・・。-
<今作は、民主国家を名乗りながら軍事国家であった韓国の体制に、コミカル要素を絡めつつ、強烈な怒りを込めた作品である。
日本は、戦後民主主義国家を列強から指示され、その路線を歩いて来た。
だが、安倍政権時から、その路線が、きな臭くなってきたのは周知の事実である。
今は時を待たないとはいけないと思うが(凶弾に斃れた方を鞭打つ気はない。)、何故にあのような事が起こってしまったのかを、キチンと掘り下げ真実を何時かは提示して欲しい。
「新聞記者」が大手シネコンで掛かった際の様な驚きと、邦画映画界の矜持を韓国同様に見せて欲しい。
その監督は、藤井道人監督か、大島新監督だと思うのである。>
「シネマ de 憲法」としても優れた一本。
<映画のことば>
「無念に死ぬ者がいない世界。指導者が慢心しない世界。すべての権力が、国民によって行使される世界。そんな世界を、皆さんと共に作っていきます。」
本来は敵対側である諜報員が、対象者に感化されていくというストーリーは他作『善き人のためのソナタ』にもあったと思いますが、それだけでなく、随所に笑いを散りばめながら、その実はシリアスに現実(一頃は軍事政権が支配した韓国)の不条理、非道さも、一本の線として描き出す…。
なかなかどうして、侮り難い一本だったと思います。
そして「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基づくものである。」と現行憲法がその前文で高らかに宣言したうえに、「われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。」とまで、念には念を入れたことの「本当の重み」を再認識するには好個の一本である点において、「シネマ de 憲法」として、素晴らしい一本でした。
ちなみに「落語」というのは、もともとは滑稽噺から始まって、人情噺に展開してきたと聞き及びますが。実際、最初から湿っぽい話、教示的・教条的な話をされると大抵は引いてしまいますが、滑稽がまじっていると、笑いで心の扉が開いたところへ、教示的・教条的な話でもすっと入り込むようで、その点が話術としての落語の「威力」なのだそうですけれども。
そういう言い方・見方をするのであれば、一見すると、気楽に観られる娯楽作にも見せかけながら、衝くべき点はちゃんと衝き(そして、その摘示は正鵠を得ている)、笑いの場面を通じながら、それが抵抗なく受け入れられる「つくり」になっているという点では、とても優れた一本であったと思います。評論子は。惜しみなく。
むろん、秀作であったと思います。
<映画のことば>
なぜ私は銭湯が好きだと思う?
ここでは、人の優劣などないからだ。
出身地がどこだろうと、与党だろうと野党だろうと。
裸になってしまえば、どうでもよくなる。
<映画のことば>
「先生、もう時間がありません。明日は危険です。」
「君には君の仕事があって、私には私の仕事がある。それぞれの仕事をすればいい。いつの日にか、きっと、一緒に食事をしよう。」
笑いのテンポがいいのと、結構泣いてしまった
主人公が東野幸治とか大泉洋とかに見えてしまったのは置いておいて、
めちゃくちゃど素人な感じの手際悪い諜報員たちに笑いました。かなりシリアスで辛くなるシーンが沢山あるのに、めちゃくちゃ笑えるシーンも沢山あって、メリハリがよくて夢中で観られました。
私は韓国の事情をよく知らないのですが、映画で家族愛の深さを感じることが多く今回もそうだった。
軟禁されている大統領に立候補したいお父さん、知識や教養に優れた人なのが少しずつ明らかになって主人公が困惑していく過程が良かったです。
人を非難せず人の心を温かくする行いは自分の味方を増やすことにつながるんだなと、反省(?)しました。友情も大切にしなきゃと思えた。
どんな時でも周りの人を思いやれるこのお父さんに尊敬。
しかし子供がかわいそうだ。
子供が振り回されるのはかわいそうだ。
後悔点:何か食べながら観る映画ではなかった!!(トイレのシーンとかあってちょっと汚い)
良かったです!
この時の韓国の政治的なことなどは頭が悪くてわからないですが民主主義に変わる前の時代なのですね
2人の国を家族を思う気持ちが最初はすれ違っていても愛国心が友情を芽生えさせていったのかなって
娘さんがすごく可愛い子だったので殺された時
流石むごい韓国映画ようしゃないなぁって💦
父への愛父への尊敬の為に命までかけた娘さんにも涙でした。 クライマックスで主人公が殺されるぞ!家族殺されてもいーのか?と聞かれ だから行くんだ家族と幸せに暮らす為に行くんだ!! もう震えました
ラストの銭湯を経営したのも銭湯では皆対等だと言っていた大統領の言葉の意を継いでるのだなぁって
そこに訪れる大統領 コテコテなのに
号泣しました感動🥲 水虫の足を互いにコショコショ動かして可愛らしく微笑ましく 観てよかったです
最初の方の盗聴シーンがちょい長くて
星3.5にしました!
史実から作られた勧善懲悪で良い娯楽映画
実際の話にヒントを得ているものの、完全なフィクションで作られている。
韓国映画らしい、コミカルさと軍事政権下の策略や腐敗政治の汚さが程よく混ざりあっていた。庶民である主人公が最後には正義のために行動して悪を滅ぼすあたりも、気持ちよくみていられた。
1985年、国家による弾圧が激しさを増す中、次期大統領選に出馬する...
1985年、国家による弾圧が激しさを増す中、次期大統領選に出馬するため帰国した野党政治家イ・ウィシク(オ・ダルス)は空港に到着するなり国家安全政策部により逮捕され、自宅軟禁を余儀なくされた。そこから隣人を盗聴した相手との交流が始まり、大統領になるまでを描く。オダルス淡々とした演技で大統領を熱演。
ノーベル賞平和賞→必要ですか?
オバマも、佐藤栄作もこの映画の主人公の金大中も。
どこがいったい平和に貢献したのか?まったくアホみたいな賞だ。
スウェーデンが、中立国だとは名ばかりだった・・・それをやっと知った昨今。
世界はまやかしで、平和というお題目は、現実を見ない者のための精神安定剤に過ぎない。
最初に《この映画はフィクションです》と、わざわざ断っています。
舞台は軍事政権下の1985年の大韓民国。
アメリカから帰国して、次期大統領選に出馬すると警戒されているイ・ウィシク。
(後にノーベル平和賞を受賞した金大中元大統領がモデルと思われます)
帰国したその足で、イ・ウィシクは自宅軟禁されて、
隣家には監視のため諜報機関の4人が、盗聴を24時間体制で始める。
前半はコメディです。
盗聴班のリーダーのユ・デグォン。
演じるチョン・ウ。
大泉洋と谷原章介を足して2で割ったような好感度のあるイケメン。
監視するうちにイ・ウィシクの人間性に惚れ込んで行く様子が、
エピソードを多々交えて、面白・可笑しく描かれます。
しかし中過ぎからは、ウィシクの美しい娘に政治活動や思想の嫌疑が掛かったり、
家族全員を「煉炭自殺」に見せかけて殺そうと企てたり、
「交通事故死」を狙って、ダンプカーを激突させるシーンは、
《本当に恐ろしい!!》
それをチョン・ウがことごとく邪魔するのですが、
(これ事実なら一発退場・・・殺されてますよね!!)
半分コメディに見せかけた映画ですが・・・、
後半はサスペンスです。
まあ他国の事で、大きな事は言えない日本国民ですが、
当時の韓国の三権分立。
これ、機能不全みたいです。
軍事政権が裏で手を回して、警察も司法も買収して好き勝手をしてる。
金大中元大統領は、
民主化思想で2度の投獄、2度目は死刑判決まで受けています。
思想犯で死刑判決(?!?)
1985年当時、韓国は軍事政権だったとは言え、到底まともな国家とは思えません。
そして外圧やら政策変更とやらで恩赦されて、大統領にまで上り詰める。
2000年。金大中さんは、ノーベル平和賞を受賞。
受賞理由は、
韓国および東アジアの民主主義と人権のために努力した功績。
特に北朝鮮との平和と和解に尽力したこと。
(命懸けで民主国家樹立に頑張ったかもしれないが、罪の方が大きい)
それにしても同じ民族が2つの国に分かれている。
敵対する国家の民には、同じ血が流れている。
本当に同じ血なのか?疑問だ。
一言「そっち、あっち、ええ!」。
タイトルから予想した内容と、若干違ってました。
韓国映画あるあるで。
前半は、盗聴対象者の隣に、諜報部員が本部を構え。
「あれ、盗聴してるってバレるのでは?」なコミカルさで進み。
後半はガラッと180度展開のシリアスシーンの連続。
民主派の大統領候補予定者の、暗殺を目論む軍部の動き。
「きったねーな!」を連発したくなる軍部が、憎たらしいのなんの。
諜報部員は軍部の所属。だけど前半で触れ合ったことを踏まえて。
「俺は一体、何をしたらいいんだ?」と主人公が悩み動くところが胸熱でした。
冒頭にフィクションとありましたが、思想的なところはクロスしてそうな。
政治物だけど、時に家族的なところもあり。
「観たなー」と背伸びした1作でした。
⭐️今日のマーカーワード⭐️
「私たちは“お隣さん“だろ」
とてもよかった
自宅軟禁されている議員がとても暖かい人柄で見ていて癒される。屋上で煙草を求めるやりとりがすごくいい。
笑いと感動と愛と勇気みたいな、素晴らしい作品だけど、ただ娘さんが死んでしまうとか、悲しすぎる。
なだぎ武なだぎ武なだぎ武
もう1人似てる芸人さん思いついてたんだけど名前出てこなくて上映中ずっと考えちゃってました。あと大学生の娘さんがかわいい。帰国した大統領候補も魚もいい味出してた。前に見た警察が隠れ蓑に料理屋出したら大繁盛して云々の韓国映画にテイストが似てる。
韓国映画の男の友情は胸が熱くなる
自宅軟禁なんて緊迫した雰囲気からはじまるのに、お隣さんなんてゆる〜い関係に距離が縮んでいく。
国家の圧力とお隣さんの人間味に揺れ動く、監視役の主人公の打算の無い人柄が更に良い関係を作り出す。
あんなに通じ合ったら、どんな事してでも助けたいよな。
韓国映画の男の友情は胸が熱くなる。
笑いあり、涙ありでとても面白かったです。もっと韓国の歴史について予...
笑いあり、涙ありでとても面白かったです。もっと韓国の歴史について予備知識をいれておけばもっと楽しめたと思うのでそこだけが残念・・・。チョンウさんの演技がすばらしくてちょっとした立ち姿などもかっこいいのに、面白い。オダルスさんもさすがの演技力で二人のシーンをもっともっと見たかったです。
全41件中、1~20件目を表示