「シリアス×スライディング土下座」ノイズ ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
シリアス×スライディング土下座
この手の邦画サスペンスは当たり外れ、特に外れ気味の作品が多い印象で、今作も期待半分不安半分で鑑賞してきました。ありがたいことにムビチケが当たったのでそちらで。
今作、だいぶ批評的には否寄りになっていますが、自分はとっても楽しめました。128分とは思えないくらいあっという間の時間で、観終わった後の頭の中はノイズでいっぱいでした。
まずなんといっても役者陣の圧倒的な演技力。「デスノート」で敵対した藤原竜也さんと松山ケンイチさんが今度は親友というポジションにおさまるというのも妙にニヤついてしまいますし、その2人の嘘をつきながら普通に生活をするという演技がとにかく凄かったです。挙動の怪しさを見せず、家族とも島の住民とも普通を過ごしている姿に狂気を感じました。淡々と、それでも内心島という呪いにかかっているように執着・依存していく姿がとても悍ましかったです。その2人の演技合戦ももちろん素晴らしいのですが、神木隆之介さんもさらに光り輝いていました。嘘をつき続ける状況で、嘘をつき続けれないと気を病んでしまった島唯一の警察官がこちらも淡々と狂っていき、予想だにしない結末を迎えるという読めた展開でありながらも、そうなって欲しくないものになってしまったという恐怖がそこにはありました。渡辺大知さんの行動だけで分かるヤバいやつ・嫌なやつな雰囲気も最高でしたし、柄本明さんのイカれ爺さん具合も最高でしたし、余貴美子さんの脳裏に何度もよぎる狂った町長もまた最高でした。永瀬正敏さんの渋い刑事が事件の状況を冷静に見ていて、観客側の視点とマッチしていたのも見事です。
中身は誤って殺してしまった元受刑者をどうにか隠蔽しようという中々シンプルなものですが、このシンプルさがまた良い味を出していて自分好みでした。特に村社会の悪さや何かへの依存を強く描いているのも面白かったです。集団意識で部外者を追放しようとしたり、神みたいに主人公を崇めたりと、とにかく不気味でした。段々と嘘が多くの人にバレていき、「島を守るため」に動いていたはずなのに、最終的には何も守っていなかったという絶望。リアルにここで涙が出てきてしまうほど胸がキューっとなりました。その後の展開もまた恐ろしく、親友の部屋に主人公の奥さんの写真がビシーッと貼られまくったシーンはゾクゾクしました。どこからが伏線だったのか。原作と映画をまた見返して確認したいと思います。
鑑賞日 1/28
鑑賞時間 15:50〜18:10
座席 G-14