「突っ込みどころが山ほどある」ノイズ といぼ:レビューが長い人さんの映画レビュー(感想・評価)
突っ込みどころが山ほどある
藤原竜也と松山ケンイチのコンビが好きです。『劇場版デスノート』で、主人公の夜神月とそのライバルであるLを演じたコンビですね。『劇場版デスノート』は公開当時めちゃくちゃハマって、初めて「同じ映画を二回見る」という経験をした思い出の映画です。
そんな二人が15年ぶりに共演する本作。期待するなと言う方が無理な話です。
公開日初日に、仕事終わりのレイトショーで鑑賞いたしました。
結論としては、正直ツッコミどころの多い映画でしたね。予告編から感じた印象と本編の展開はだいぶ違って、予告編だけ見ると「島民が力合わせて殺人隠蔽、でも裏切り者がいるっぽい!」みたいな印象だったんですけど、裏切り者云々は終盤ちょっと出てくるだけで、ほとんどは切れ者の刑事である畠山から死体を隠す展開が続きます。
鑑賞前からハードル上げ過ぎてしまったので「期待していたほどではなかった」という印象です。でも、普通に楽しめたので観といて損はないと思います。多分。
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愛知県沖に浮かぶ猪狩島という小さな島。過疎化と高齢化に悩む島だったが、若手農家の泉圭太(藤原竜也)が育てている黒イチジクがテレビで取り上げられたことで話題となり、観光客も増え、5億円もの地域創生特別交付金の支給が内定したことで徐々に活気づいていた。そんな中、出所したばかりの殺人犯・小御坂(渡辺大知)が働き口を求めて猪狩島にやってきたことで事態は一変する。島を徘徊していた小御坂を不審者として注視していた圭太と幼馴染の田辺純(松山ケンイチ)と島の駐在警官の守屋真一郎(神木隆之介)は、圭太の娘の失踪をきっかけに小御坂と揉み合いになり、殺害してしまう。この殺人がバレてしまえば、正当防衛であっても悪評が広まり、島の復興計画は水泡に帰す。そこで、3人は島のために殺人を隠ぺいすることを決めるのだった。
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島にやってきた殺人犯と揉み合って殺してしまう。何とかそれを隠そうとするも、その殺人犯と一緒に島にやってきた人の死体が発見されたことで捜査が始まり、島に多くの捜査員が押しかけてくる。その捜査の目をかいくぐりながら、死体の隠ぺいを行う。
私は車に関わる仕事をしているのですが、細かいところですが、それぞれのキャラクターが乗っている車の描写が良かったですね。
島民が乗っている車はほとんどが軽自動車やコンパクトカー。島の狭い道路を走るのに適した車になっています。そして島民の車のほとんどが既に販売が終了している古い型式のものばかりです。確か主人公の圭太が乗っている軽トラのナンバーが「2013」だったんですけど、多分これは希望ナンバーで「2013年式」という意味だと思います。つまり10年くらい前のそこそこ古い車ですね。純が乗っている車はジムニーでした。細くて未舗装の山道を走るのに適しているため、ハンターに人気のある車です。私の知人に猟銃を5丁所有するハンターの方がいるんですが、その方の愛車もジムニーです。
一方で本土から来た愛知県警の畠山が乗っている車はトヨタのマークX。やっぱり愛知だからトヨタなんですね。島の細い道に似合わないつやつやと黒光りするマークXは、外部からきた畠山が「異質な存在である」ということを示しています。
車の描写は細かくて良かったんですけど、正直それ以外は微妙な描写が多かったような気がしますね。
特に違和感を感じたのは、本土から来た愛知県警の畠山と青木の描写。何かこの映画、切れ者の刑事であるはずの畠山と青木の行動は凄い違和感ありました。外部から殺人犯の捜索に来た彼らが、村社会的な島民たちから理不尽に罵倒をされて嫌悪感を示すシーンが何度かあり、「排他的な村社会への批判的な描写にしたかったんだろうな」と感じましたが、この描写がイマイチでしたね。
本作の劇中で村の外からやってくるのは、島の平穏を脅かす殺人犯だったり、令状も無しに家宅捜索を行なって鍵を破壊して冷蔵庫を開けるオッサン刑事だったり、自殺現場で机の上の物を触っただけで銃を取り出すような女刑事とかなんですよ。島の外からやってくる他所者がそんな奴らばっかりなんで、「外部の人間を拒む島民たちの意見の方が正しくない?」って思える描写になっているんです。
圭太に銃を構える場面を撮影された画像を見ながら「圭太に銃を撃とうとするなんて!」と怒る島民に対して、「お前らなんなんだ!」と畠山がスマホを奪い取りながら激昂するシーンがありましたが、知り合いが理不尽に警察に銃突きつけられて脅されたら、怒るのは普通でしょ。私だって友達が警察に銃を突きつけられている写真見たら「なんだこれは!」って怒りますよ。「お前らなんなんだ」はこっちの台詞ですよ。
結構中盤までは緊迫感のある展開が続いて、「面白くなりそう」って感じていたんですよ。小御坂が殺して「隠ぺいしよう」と三人が結束する場面で画面にゆっくりと映画タイトル『ノイズ【-noise-】』と出てくるシーンでは「この後どうするんだろう」っていうワクワク感が最高に高まっていたのに、村長が死んだあたりから突然失速した気がします。冒頭だけ全力疾走で後半バテバテになるという、競争馬「ツインターボ」を彷彿とさせる映画です。
ラストの展開も正直「なんじゃこりゃ」って感じでしたね。なんか「衝撃の展開」みたいな感じで描写されていましたが、あれだけしつこいくらいに純が加奈に対して固執している描写があったので全然驚きはありませんでした。原作と結末を変えているらしいですが、この結末はどう考えても改悪だったように感じます。
役者陣の演技のおかげもありますが、128分という長い上映時間を退屈せずに観ていられたので決してつまらない映画ではないと思うんですけど、いかんせんツッコミどころが多すぎるのと事前の期待値が高過ぎたので、正直がっかりしましたね。