劇場公開日 2021年10月8日

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「現代人に訴えかけるもの」ONODA 一万夜を越えて 藤崎修次さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0現代人に訴えかけるもの

2021年10月24日
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小野田少尉の野戦記。

今、映画化される意味って何なのだろう?
戦後76年、帰還から47年、没後7年・・・
全て中途半端。あえて節目ということで言えば来年が生誕100年にあたるということぐらいか。

それはともかく、多様性であるとか個人の尊厳が重視される現代、特に本作が制作されたフランスにおいては滑稽に思えるほど、それこそ、中世の封建時代的な時代錯誤の思考回路を持った兵士が、ごくごく最近まで存在していたという日本という神代の国の特異性を(当時の日本でも小野田さんは稀有な存在だったであろうが)揶揄する意図も多分にあるのでは? と思ったが、少し考え過ぎか?

おそらく、今の日本でなら企画段階でボツになるのだろうし、海外だからこそ映画化されたのかな、とも思う。

とは言え、史実に忠実に丁寧に描かれていることもあって見応えはあり、三時間弱の長編でありながら飽きずに見られた。
特に、今まで映像作品で触れられることの無かった陸軍中野学校の様子が詳細に描かれているのが良かった。

出来ることなら、小野田さんを発見した冒険愛好家・鈴木紀夫氏が小野田さんに興味を抱いた過程も盛り込んでくれると更に良かったかも。

それにしても、優男のイメージの津田寛治がまさかの小野田少尉役。でも、日焼けした肌にこけた頬、ギラギラした目付きは正にジャングルで生き延びてきたコマンドーのそれで、見事な役作りだと思った。

藤崎修次