「「負の連鎖」が生み出した、人間の愚かさと不幸を鮮明に描き出した作品」ONODA 一万夜を越えて きのぴよさんの映画レビュー(感想・評価)
「負の連鎖」が生み出した、人間の愚かさと不幸を鮮明に描き出した作品
小野田さんのことは本やテレビで聞いたことがあった。
「1974年まで戦争を続けた兵隊がいる」
という事実がどうしても私の記憶から離れなかった。
なぜ? 戦争は1945年で終わったはずなのに…
私からみてもそう遠くない時代に、
太平洋戦争が続いていたという衝撃。
正直いうと、よく知りもしなかったから、
「マヌケな兵隊がいたものだ」
くらいに思っていた^^;
この映画を観て、その事情を知り、
ものすごい寒気がした。
ところで、この映画はフランスの映画制作チームが主体
(キャストは日本人)
批判的でも擁護するでもない、
客観的な視点で1人の男の生き方を鑑賞できる。
また、フランス映画らしいアーティステックな描写が観ていて気持ちいい。
小野田さんが29年間、ジャングルに潜んだのは、
「とうの昔に意味を失った命令」
のせいだったかのように語られているが、
それは多分そのとおりなのだけど、
おそらくは、残った仲間同士での
「集団心理」も働いたのだろうと想像できる。
状況を冷静に考えれば、
戦争が終わっていることは分かっていたはずだが、
自分自身に嘘をつき続けるしか無かったのだろう。
そんな微妙な人間心理も興味深い。
たった1つの勇気や行動が、
その後の彼らの生と死を変えることになる。
ところでこの
「頭では分かっているのに、引くに引けない」
という、まさにコンコルドの誤謬ともいうべき状況、
この状況は現代の日本においても、
「コロナ」「ワクチン」「SNS」「メディア」「フェイクニュース」
… 様々なかたちで我々の身近に存在するのではないだろうか?
しかし、忘れてはいけないと思う、
「命令を出した上官すら忘れた命令」 のために、
小野田さんらは罪もないフィリピンの人々を恐怖に陥れ、
たくさんの人を殺害したことを。
(映画では語られてないが、小野田さんだけでも30人殺しているそうだ)
その事実にも目を背けてはいけないと思う^^;
この1人の男の人生から、貴重な教訓を学び、
似たようなことを繰り返さないためにどうすべきか、
ひとりひとりが考えるべきだと感じた。
最後にこれから観る方へのアドバイスを。
3時間はたしかに長かったが、「長い」と感じたら、
「小野田さんはこの状況で 、10000日を 過ごしたのだ」
と思うと良い。
苦痛も和らぎます(笑)