劇場公開日 2021年10月8日

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「「負の連鎖」が生み出した、人間の愚かさと不幸を鮮明に描き出した作品」ONODA 一万夜を越えて きのぴよさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0「負の連鎖」が生み出した、人間の愚かさと不幸を鮮明に描き出した作品

2021年10月17日
PCから投稿

小野田さんのことは本やテレビで聞いたことがあった。

「1974年まで戦争を続けた兵隊がいる」
という事実がどうしても私の記憶から離れなかった。

なぜ? 戦争は1945年で終わったはずなのに…

私からみてもそう遠くない時代に、
太平洋戦争が続いていたという衝撃。

正直いうと、よく知りもしなかったから、

「マヌケな兵隊がいたものだ」

くらいに思っていた^^;

この映画を観て、その事情を知り、
ものすごい寒気がした。

ところで、この映画はフランスの映画制作チームが主体
(キャストは日本人)

批判的でも擁護するでもない、
客観的な視点で1人の男の生き方を鑑賞できる。
また、フランス映画らしいアーティステックな描写が観ていて気持ちいい。

小野田さんが29年間、ジャングルに潜んだのは、

「とうの昔に意味を失った命令」

のせいだったかのように語られているが、

それは多分そのとおりなのだけど、

おそらくは、残った仲間同士での
「集団心理」も働いたのだろうと想像できる。

状況を冷静に考えれば、
戦争が終わっていることは分かっていたはずだが、
自分自身に嘘をつき続けるしか無かったのだろう。

そんな微妙な人間心理も興味深い。

たった1つの勇気や行動が、
その後の彼らの生と死を変えることになる。

ところでこの
「頭では分かっているのに、引くに引けない」
という、まさにコンコルドの誤謬ともいうべき状況、

この状況は現代の日本においても、
「コロナ」「ワクチン」「SNS」「メディア」「フェイクニュース」

… 様々なかたちで我々の身近に存在するのではないだろうか?

しかし、忘れてはいけないと思う、
「命令を出した上官すら忘れた命令」 のために、
小野田さんらは罪もないフィリピンの人々を恐怖に陥れ、
たくさんの人を殺害したことを。
(映画では語られてないが、小野田さんだけでも30人殺しているそうだ)

その事実にも目を背けてはいけないと思う^^;

この1人の男の人生から、貴重な教訓を学び、
似たようなことを繰り返さないためにどうすべきか、
ひとりひとりが考えるべきだと感じた。

最後にこれから観る方へのアドバイスを。

3時間はたしかに長かったが、「長い」と感じたら、

「小野田さんはこの状況で 、10000日を 過ごしたのだ」

と思うと良い。
苦痛も和らぎます(笑)

きのぴよ