劇場公開日 2021年10月8日

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「【今の若い奴はダメ】」ONODA 一万夜を越えて ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5【今の若い奴はダメ】

2021年10月14日
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賛辞も、批判も抑えたフラットな視点で制作された作品だと思う。

朝日新聞が制作サイドの主要なメンバーだったので、実は批判的な視線が多いのかと思っていた。

ただ、右寄りの人たちからは、小野田寛郎さんに対する賛辞が少ないと批判はあるようだ。

小野田寛郎さんは、帰還後に現地に対して寄付などしていたが、そのかなり極右的な言動や、右翼政治団体の顧問に就任したことがあって、どんな事情があったにしろ、かなりの現地の人間を殺害したことに本当に謝罪の意があったのか疑問が残るとの批判も多くなっていた。

この作品は、極力そうしたことを想起させる凄惨な場面は避けて、戦争の洗脳が、戦後もどのように残っていたのか、仲間とのやり取り、どのようなモチベーションでサバイバルしたのか、帰還を説得しようと島を訪れた人達に疑念の目を向けたり、時には滑稽にさえ見える(仮想)敵の作戦や日本の戦術行動の妄想、それでも日本語が流れるラジオを楽しみに聞いてみたり、孤独にさいなまれるようになると旅行家・鈴木紀夫さんの前に比較的簡単に姿を現したり、洗脳の不条理と人間性とは何なのかを考えさせられるように構成されているように思う。

批判する対象は戦争や洗脳で、それ以外は、この作品はフラットな視線で見つめる映画ではないかと思うのだ。

帰還後の小野田寛郎さんと風呂をともにしたルポライターに「今の若い奴はダメだな」と言っていたエピソードを読んだことがある。

いつの時代も、同じセリフなんだなと思って苦笑したと同時に、小野田寛郎さんが「今」と比較したのは、いつの時代のことだろうと考えて、ちょっと背筋が寒くなったことも思い出した。

鈴木紀夫さんは、その後、雪男に会うためだろうか、海外の雪山登山に何度かチャレンジして、その途中、遭難、命を落とされている。

小野田寛郎さんは、彼は友人だとして、非常に悲しんでいたと伝わっている。

ワンコ