「小野田少尉を演じた遠藤雄弥と津田寛治がとにかく圧巻!!」ONODA 一万夜を越えて けいちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
小野田少尉を演じた遠藤雄弥と津田寛治がとにかく圧巻!!
小野田少尉を二人の俳優が演じたのですが、これが大変素晴らしいものでした。青年期を演じた遠藤雄弥さんは映画の中ではどこか若い頃の三上博史に眼光が似ており、成年期から壮年期を演じた津田寛治さんは映画の中では20年くらい前の奥田瑛二さんに見え、それでいて本物の小野田少尉にも見えました。また遠藤雄弥さんから津田寛治さん移るのは非常に自然で何も違和感はありませんでした。僕はこの二人の俳優と、この難しい題材(特に日本では)を映画化したフランス人監督アルチュール・アラリ氏に拍手を送りたいです。
僕は幼少期にTVで小野田少尉がルパング島から帰還した際の報道は繰り返し見ており、さらに2年前、たまたま興味を持って彼の著書と関連本を数冊読んでいたので、かなり毀誉褒貶相半ばする人物であると認識していました。おそらく帰国後に美談に仕立てられた部分もかなりあると思いますので、彼を主人公にした映画を本当に作製して良いのか?とか、どのように作っても、右側と左側から攻撃されるだろう、と日本人プロデューサーなら考えてしまい、おそらく企画しても制作に移せないと思います。それゆえにフランス人監督だからこそ作り得たのかもしれません。これをカンヌ映画祭で観た欧米の人々はどのように感じたのかも非常に興味が湧きます。
娯楽映画では全然ありません。ただ3時間という長編映画ですが、それほど長くは感じなかったのは、途中で退屈するような場面はなかったからでしょう。セリフが聞き取りづらいのは残念な点で、特に前半は字幕を入れてほしいくらいでした。
お勧めかと聞かれると・・・小野田少尉のことを知らない若い人の方が興味が湧いて映画として楽しめると思います。一方で、彼に関する報道や著作を色々と読んでいる人や、帰国後の小野田さんの政治活動などを知る人は、ちょっと素直には小野田寛郎という人物を受け入れることは難しいと思いますので、素直には映画を楽しめるものではないかもしれません。
とはいえ彼は23歳でフィリピンで玉砕せず敗戦を迎え、しかし自決も復員もせず52歳まで密林で最後まで諦めずに耐え抜き、それから帰国して、結婚して91歳まで長生きをしたという生き様は、仕事に疲れた40-50代の現代社会の男性にとっては、ある意味励みになるかもしれません。