すごい作品。大作。まいった! まず、これはベストシーンになるが、ネッドウィークス(活動家ラリークレーマーを演じる。役者はマーク ラファロ〜)と兄(アルフレッド・モリーナ)との関係が切ない。 ネッドは兄に、『私はあなたと同じ人間だ』と言え、と怒鳴ったが、兄は言えない。まだ自分のことを病気(ゲイだから)と考えているのと?1982年のニューヨークで、豪邸に住む、成功している弁護士の兄は、なぜ、弟のネッドを、自分と同じ人間として(The Normal Heartを持っている)認められな
いのだろうと不思議に思っていた。1982年だからねえ。何ともネッドの叫びが耳に残るようで辛かった。1982年、エイズが蔓延して、原因もわからず、免疫に問題のある癌だったから? いいえ、エイズじゃなくても、ホモセクシャルを受け入れられないんだよ。兄が受け入れようと努力しているように全く思えなかった。二人が待ち合わせて、抱擁する時、ネッドは嬉しいあまり、キツく抱擁するが、兄の方は両手をアマラしている。キツく抱いてあげられない。悲しいねえ。
しかし、フィリックス(マットボマー)がネッドの兄の法律事務所を最後の力を振り絞って訪れた時、(遺産をネッドに残すため)、兄は死を迎えているフィリックスに、もっと早く会っていれば良かったと。兄はここで異性同士の愛も、同性の愛も変わらないということを感じ取ったのに違いない。そして、弟ネッドに会いたいとフィリックスに伝える。 兄とネッドが初めてわかり合う時がきた。フェリックスの死が二人を固く結びつけた。 泣けるね。
私は、個人的に近い親戚や、知り合いにレスビアンがいるし、教え子にもトランスジェンダーもいるので、同性、異性の愛というのをあまり意識していない。しかし、当時はエイズが大流行で、エイズやHIVはホモセクシュアルの病気であるし、私の記憶では接触すればうつる伝染病と考えられていたようだったし、デマも多く理解に苦しんだ。今は、予防薬も治療薬もあるが、当時はまだしらぬエイズにうつらないようにするために、本当か嘘か知らない、科学的かそうじゃないかもわからない方法で、予防した時代があった。私も、当時エイズを恐れたが、この映画のような人権意識や医療機関の苦労や政府の対応も知らなかった。こういう私のようなもののために意識に入れることができて良かった。
それがまるで2020年から続いている、パンデミックのようで、本当に、CDCを信じていいの、今もなお、トランプ大統領のいうことを鵜呑みにしているような時代であるし、そしてそれが正しいのかも何もわからない。レーガンが大統領の時のエイズに対する援助とは違って、現在のコロナには資金を費やしているが、二つの伝染病の経過がオーバーラップする。
それに、演技が光るジュリアロバーツ、ブルックナー医師役。彼女がまた、免疫の問題であるポリオである。現在、ポリオは特別な地域で発生しているが、ワクチンがあるから、問題になっていない。そのポリオで、車椅子に乗っているこの医者が、エイズの問題点を一番理解していて警告を呼びかけている。不思議なことに、ポリオにならなければ、エイズが理解できないのかと当時の政府や医療機関に言いたかった。
ブルックナーとネッドは共通の使命を持っている。ブルックナーは免疫の病を経験しているから医者としてゲイの命を救おうとしている。ネッドはライターで運動家としての自分の分野で声を大にして攻撃的な言動をとるが命を救おうとしている。ほかのゲイの運動家も同様だがネッドとは手段が異なる。ネッドもブルックナーも一匹狼だ。この類似点と相違点がこのドラマの原動力であり称賛を得ている点であると思う。
ブロードウエイショーは見ることができなかったが、配役はジムパーソンズとジョーマンテロが映画と劇の両方に出ている。ジョーマンテロがマークラファロの役をしている。