「なにこれ」機動戦士ガンダムSEED FREEDOM パジャマさんの映画レビュー(感想・評価)
なにこれ
SEEDが大好きでこれまでに何度も繰り返し見ています。
DESTINYもリアタイ時は「?」でしたが、時間をかけて繰り返し見て自分の中に落とし込むことで、今では結構好きです。
ただ、この映画がそうやって昇華できるものかと言われるとかなり難しい…
まず、ストーリーと設定があまりにもこれまでの世界観を逸脱しています。スパロボの世界線?なんでもあり?後付けの超能力設定で、作中のリアリティラインがぐっっっと下がって、戦争や人間関係の生々しさと真摯に向き合ってきたこれまでの作品とは別物になっています。辻褄合わせのために都合よく超能力を使うので、SEEDやDESTINYで描かれてきたことが陳腐化しており、既存作品のファンとしては辛かったです。ぶっちゃけ、超能力を使える人間を自由に生み出す技術や若返り技術があれば、コーディネイターの出生率問題も「調整」通りに生まれてこない問題も解決できると思うし、アル・ダ・フラガはクローンなんて作らなかったと思います。高校野球を見に球場に行って、超次元サッカーが始まるくらい世界観が変わっています。
また、キャラクターの「こんなやつだったか?」感がすごく強いです。演じてる方からそういうコメントが出るのだから手に負えないです。小説版も読みましたが、故人である脚本家の方と、監督と、映画脚本に携わっている小説家の方とで、キャラクターの解釈にズレがあり、しっかり擦り合わせが行われないまま、あるいはストーリー展開の都合で、勢いで押し切っている感があります。SNSで絶賛している感想を見ると、キャラクター同士のカップリングが好きな人たちばかりなので、キャラクターの恋愛にしか興味がない人にはいいのかもしれませんが、作中ではDESTINY後1年ほどしか経っていないのに、あまりにもこれまでのキャラクターと性格が変わっていて、戸惑うばかりです。
さらに、不必要なお色気シーンがまあ多い。昭和?平成初期?のような、時代錯誤の下品なサービスシーンが多く、なんだか恥ずかしく居た堪れない気持ちになります。監督がDプリンセスを意識したドレス、というようなコメントをしていましたが、D作品ちゃんと観たことあるのでしょうか?日曜朝の女児向けアニメの方がまだセンスがいいです。
褒められるところといえば、テレビシリーズで散々バンクアニメ、動かない、と揶揄され続けたアニメーションです。画面の端に小さく映っている背景のようなキャラまで、とにかく細かく動いています。唇の動きも、かなりセリフに合わせて動いていたんじゃないかとおもいます(そのせいで却って不自然に見えるところもありますが…)。MS戦はCGですが、迫力のある画になっていました。初めのカナジ戦は、本当に興奮しながら観れました。
作画の統一感のなさは、テレビシリーズを踏襲しているのか。キラが自宅に帰ったシーンまでは、キャラクターデザインの平井さんらしいとても綺麗な作画でしたが、中盤以降は個性的な作画が目立っていました。最近の上質な作画のアニメを見慣れていると気にはなりますが、「SEEDだなぁ」と"らしさ"を感じられて個人的には特に印象は悪くはなかったです。
音楽も個人的には良いなと思うものが多かったです。DESTINYを象徴する、大好きな「出撃!デスティニー」が流れるシーンは映画の中で数少ない好きなシーンです。ただ、おそらくファンの間でも神回と言われる「舞い降りる剣」をアップデートしたかったのか、ミーティアを流すシーンはあまりにも戦場にそぐわず、ギャグシーンにしか見えませんでした。初めて観た時も、呆気に取られてしまいました。このシーンの後の戦闘はおよそSEEDとは思えず、スパロボの世界線と思っています。戦争とはいえ、「人を殺す」ということを、あまりにもライトな演出で扱うので、これまでのシリーズとの温度差で困惑します。
この映画は故人の両澤氏が残したプロットに沿っているから、正統な続編、というコメントをみました。でも、プロットはあくまでプロットにすぎません。当初立てたプロットから、取捨選択、設定の見直し、辻褄合わせ、キャラクター間の関係性、シーンの繋がり等ブラッシュアップを重ねて、最終的な脚本が出来るものです。プロットと完成したものとで内容が大きく変わっていることは珍しくありません。プロットはプロット。脚本とは違います。根拠にはなりません。
…それでも、SEEDはわたしの青春でした。
ずっとずっと、待ち望んでいた映画でした。
期待を裏切られても、続きを作ってくれたことだけは感謝したい。そう思って、公開日から毎週映画館に通いました。正直なところ、特典目当て&意地で、4DXやDolbyを含め、30回、鑑賞しました。
円盤も、予約しました。
でも、観るかと言われると、、もう十分かな、という気持ちが強いです。できるなら、無かったことにしたい作品です。
2024.09.20追記
よせばいいのに特別版上映ということで再度劇場に足を運びましたが、久しぶりに観てびっくりするぐらい退屈に感じました。早く終わって欲しいとすら思ってしまいました…星を0.5減らしました。追加されたエピローグも、あまりにも幼稚でバカバカしく、正直気持ち悪かったです。福田監督が描く男女の関係は情緒的なものが一切感じられず、安直なため、両澤さんが大切に描いてきた人間関係の機微が完全に失われており、デスティニーまでのキャラクターのイメージを著しく損なう醜悪なものでしかありませんでした。