インド映画といっても、14の言語が存在しているインド。グローバル色の強いヒンディー語圏内のいわゆる「ボリウッド」とは違い、今作はタミル語のインド映画。
インドの地図でいうと下の端っこにあるタミル・ナードゥ州の州都チェンナイ(シャー・ルク・カーン主演の『チェンナイ・エクスプレス』の舞台にもなった)にあるコーダンバーッカムが拠点であることから「コリウッド」といわれている。
つまり今作は「コリウッド映画」なのだ。
一括りに「インド映画」とは言えないぐらい、地域によってかなり色が違ってくるのもインド映画のおもしろいところだ。
勘違いしがちだが、日本においてインド映画のイメージを定着させたのは、「ボリウッド」ではなく、「コリウッド」ということだ。
その中でもタミル語のスターといえば、日本でもよく知られているラジニカーント。日本においては『ムトゥ 踊るマハラジャ』から始まり、『ロボット』など良くも悪くもインド映画のイメージを定着させた。
そんなラジニカーントも今では、シルヴェスタ・スタローンやアーノルド・シュワルツェネッガーと同じく70歳超えのおじいちゃん。
スタローンもシュワルツェネッガーも現役のアクション・スターではあるものの、歳ということを設定に反映させているのに対して、ラジニカーントの場合は、おじいちゃんの役ではなく、おそらく40代あたりの役を演じているのが凄いところだ。
若い役を演じていることで、より目立ってしまうこともあり、どうしても動きはおじいちゃんを感じてしまうのだが、そこは上手い具合にカメラワークや演出でごまかしてある。
おじいちゃんがイケイケで腰を振ってるという画的なインパクトもあるし、2021年の11月にインドで公開される新作『Annaatthe』で相変わらずだ。
今作では、2019年においては7作にも出演している「コリウッド」のスター女優ナヤンターラ演じる、おそらく20-30代の女性リリーに猛アタックするシーンは、コミカルであり、ラブコメ要素もあるものの、忘れてはいけないのは、本当はおじいちゃんということだ。逆にこういう役どころもやってのける点もスーパースターと呼ばれる要因なのかもしれない。
今作は正に、アクション、恋愛、コメディ、サスペンス、ミュージカルをごった煮した「マサラ映画」であることに間違いないのだが、ストレートなアクション映画として上手くまとまっている。
悪人を裁くという核の部分は揺るぎないとはいっても、事件解決のためなら、チンピラレベルも殺しまくる、疑わしきは罰する姿勢のとんでもない汚職警官。
作品が違えばヴィランとして扱われてもおかしくないような独裁者的なキャラクター構造でありながら、茶目っ気でごまかし、部下からの信頼も強い。
裏社会から怨みをかっても自業自得な感じがしないでもないが、ひとり娘への愛は本物で、友達関係のようでもある。そんな娘が襲われてしまい、そのための復讐に立ちあがる…とチラシだったりに書いてあるのだが、実は娘が襲われるのは、上映開始2時間後あたりの展開。
リリーとの恋模様が後半では、ほとんど描かれなくなるが、細かいことは気にしないで、約2時間40分のラジニカーント・ショーを楽しんでほしい!!