「エスプレッソ飲む漁師の太い指とか、何でもないものが心に残る」場所はいつも旅先だった デブリさんの映画レビュー(感想・評価)
エスプレッソ飲む漁師の太い指とか、何でもないものが心に残る
松浦弥太郎さんのエッセイを映像で読んでいるような感覚になる。臨場感がありながらリアリティより情緒が勝ってる、他にあんまり見た覚えがない映像で、面白かった。小林賢太郎さんの、上手いんだろうけど、上手い感じに聞こえない語りも気持ちいい。
本当に自分が旅したときみたいに、街の人が言ったこと、取ったそぶりが不思議と記憶に残っていく。「わたしたちは生では食べないわ」と笑われたり、もう話すことはないというように窓に視線を戻されたり、自分がしたかのように。
説明が細かいところとないところがあって、そのランダム感も好ましく感じる。わざとなところも多々あるんだろう。例えばレインボーフラッグを映して、店内の描写があって、年配男性と若い男性の2人客に「2人はパートナー?」と聞いたという語りが入っていて、そういう界隈かそういう店かなんだろうなあと分かって、もうしばらくその店を見る。
舞台挨拶があって、松浦さんは何回も「ありがとうございました」と言って深々と頭を下げておられた。足をくじいたそうで心配だ。プロデューサーの名前はもう忘れないであげてほしい。編集などで何度もこの映画を見ていてラストシーンで感極まるとおっしゃっていて、私でもちょっとそんな感じはあった。
隣の人は舞台挨拶中も上映中も寝ていて、寝息と小さないびきが聞こえており、起きたと思ったらマスクの中にハンカチを入れていた。よだれかな。金曜の夜なので、今日この映画まで働いて、やっとパルコの8階に来たんだったら、そこで思わず休息を取ってもそれはしょうがないのかも。人生や日々が旅だというなら、そういう旅もまたありなのだ。という程度には優しい気持ちになった。嫌味っぽく書き記す程度に優しくないけど。だって、いびきはさ。
朝ごはんがどの町のも美味しそうだった。バーの赤っぽいピンクのお酒も美味しそうで帰りにピーチネクターを買って一気飲みした。缶がそんな色だったので。