「緊迫の追跡劇の中での燃え狂う炎の迫力。CGではなく実際に森に火をつけて撮影したとしか思えない迫真のものでした。」モンタナの目撃者 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
緊迫の追跡劇の中での燃え狂う炎の迫力。CGではなく実際に森に火をつけて撮影したとしか思えない迫真のものでした。
本作を手掛けた監督は、「ウインド・リバー」など、辺境の地を舞台にした硬派な犯罪劇で名をはせたティラー・シェリダン。スター女優アンジーと組み、スケールのでかい娯楽活劇に挑んだ今回は、やや大味な仕上がりなのかもしれません。それでも主人公の再起のドラマと雄大なロケーション、アクションを融合した手腕はさすがだと思いました。
森林消防隊員として、1年前に大規模な山火事の沈下作業にリーダーとして参加したハンナ(アンジェリーナ・ジョリー)は、風向きの判断を誤り、仲間を火に囲まれることにしたばかりか、3人の少年を見殺しにしてしまったことを、今もずっと罪悪感を抱き続けていたました。森の監視塔に籠もって、監視活動を続けているうちに、暗殺者に目の前で父親を殺されて森の中を逃げてきた少年コナー(フィン・リトル)と出会います。コナーの父親は会計士で、とある企業の不正経理の証拠を握っていて、自分にも危機が迫っているとしって、その証拠をわが子に託したのでした。
ハンナはかつて少年たちを見殺しにした贖罪感から、コナーを守ることを強く決意します。けれども、2人のプロの暗殺者は執拗にハンナたちを追い詰めます。逃げようにも、彼らが引き起こした大規模な山火事が立ちはだかり、行く手を塞ぐのでした。
スパイや殺し屋役で数々のアクションを披露してきたアンジーが11年ぶりに挑んだ敵は、背後から迫りくる暗殺者と目の前に立ちはだかる炎。極限状態の中、20メートルほどの監視塔から飛び降りたり雷に打たれても立ち上がったり、何が起きても諦めないハンナの強さに説得力を持たせられるのはアンジーだけでしょうね。アンジーのアクションは円熟を極めたといっても過言ではないでしょう。
ハンナのかっこよさは言うまでもありませんが、事件に巻き込まれる保安官夫妻の人間模様なども描き込まれ、暗殺者の際立つ冷酷と対をなしてドラマに引き込む要素になっています。
さらに父から託された秘密を守ろうと、ハンナにもかたくなな態度のコナーと心を通わせていく過程には心が温まりました。ともに心に傷を持つ2人だけに、極限状態での戦いのなかでつながっていくわけですね。
緊迫の追跡劇の中での燃え狂う炎の迫力。その人間の意志が及ばない巨大な炎の迫力の映像は、CGではなく実際に森に火をつけて撮影したとしか思えない迫真のものでした。これに日々取り組んでいる森林消防隊員は大変な仕事だなと感じました。
大自然のニューメキシコ州ロケ。飛行機から火の海めがけてのパラシュート降下シーンも圧巻です。なので大きなスクリーンで見ることをお勧めします。(公開日:2021年9月3日/上映時間:100分)