劇場公開日 2021年9月3日

モンタナの目撃者 : 特集

2021年8月23日更新

眼前には山火事 背後から暗殺者 この腕のなかの
少年を守らなければ… 最悪×究極の状況が壮絶な
緊迫感を生む、唯一無二の怒涛サバイバル・サスペンス

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久々に脳髄がビリビリと痺れる映画に出合った。9月3日(金)に日本公開を迎えるサバイバル・サスペンス「モンタナの目撃者」だ。

目の前には巨大な山火事が迫る。そして背後からは冷酷な暗殺者が追いすがる。そんな状況下で、主人公はこの腕のなかで震える少年を守りきらなければならない――監督は「ウインド・リバー」で世の映画ファンを心の底からうならせたテイラー・シェリダン、待望の新作である。

この特集では、本作がどう優れているのかを、①物語 ②創出される緊迫感 ③最高の脇役たちの3点からご紹介する。次にどの映画を観ようか迷っている人は、ぜひとも鑑賞の参考にしてもらえればと思う。(構成、文/編集部・尾崎秋彦)


【予告編】

【物語】状況が修羅場すぎる… 巨大な自然災害と
冷酷な暗殺者の“挟撃”から、少年を守れるか?

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まずは物語と、最大の見どころであるシチュエーションについて詳述していこう。


●あらすじ

森林消防隊員ハンナ(アンジェリーナ・ジョリー)は、過去に壮絶な現場を“目撃”したことで心に大きなトラウマを抱えている。ある日の勤務中、目の前で父親が2人組の暗殺者に殺されるのを“目撃”した少年コナー(フィン・リトル)と出会う。

コナーは父親が命懸けで守り抜いた秘密を握る唯一の生存者であるため、暗殺者に追われる身となっていたのだ。傷を抱える者同士、心のつながりが生まれ、ハンナはコナーを守り抜くことを決意する。

しかし2人の行く手を阻むのは、暗殺者だけではなかった。モンタナの大自然に、未曾有の山火事が広がっていく――。

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●見どころ…とにかく絶体絶命すぎるシチュエーション

最大の特徴は、私たちの予想を遥かに超える絶体絶命の“修羅場”。眼前にすべての生命を等しく飲み込む無慈悲な山火事が迫り、なりふり構わず任務遂行を目指す冷酷な暗殺者も追ってくる……あなたは、自分が生き残る姿が想像できるだろうか?

巨大な災害に人間が翻弄される姿を描いた作品は多いが、そこに暗殺者が絡んでくるものは例がない。また、暗殺者に追われる作品も数あるが、そこに山火事が組み合わさる作品となると、類似作が思い浮かばない。つまり本作の主人公らが放り込まれる状況は、唯一無二といっても過言ではないのだ。

他作品と大きく差別化されたシチュエーション。この要素にピンときたならば、鑑賞して損はないだろう。

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【映画体験】想像を絶する強い“緊迫感”が特徴
「ウインド・リバー」名手が放つ、没入と興奮の100分

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次に、鑑賞時に得られる感情を別の切り口から語っていこう。映画館へ足を運ぶべき理由がここにある。


●極限×最悪の状況に、“普通”のアンジェリーナ・ジョリーが巻き込まれるという面白さ

ユニークなのは、主演アンジェリーナ・ジョリーの存在だ。「トゥームレイダー」などで超人的なヒロインを演じその地位を確立してきた大スターが、本作では心に痛みを抱える一般人に扮している。超人ではない“普通の女性”が、ララ・クラフトですら生死を保証できない極限状況に放り込まれる……面白くないはずがない。

そして、今回のジョリーはなにやら不思議な魅力を放っている。どこか憑き物が落ちたような、どこか胸のつかえがとれたような……自分がなぜここにいて、何をすべきかがハッキリとわかっているように見えるのだ。そんな迷いのなさみたいなものが、状況に翻弄されながらも “少年を守る”と決めた主人公ハンナという役に、特別な説得力を付与している。

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●描かれるは、酔いしれるほどの緊迫感 監督・脚本は「ウインド・リバー」の名手

木々にプロパンガスを仕込むことによりリアルな山火事を再現し、炎がまるで猛獣のように襲いかかる“極限状況”を創出。肺が焼けるほどの熱気の一方、暗殺者の存在により背筋が凍る――スクリーン上ではヤバすぎる状況がのべつ幕なしに展開され、観ているこっちは快感を覚えるほどの尋常でない緊迫感にさらされることになる。

監督・脚本を担ったのは、「ボーダーライン(2015)」で脚本を務め、「ウインド・リバー」(第70回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で監督賞を受賞)のメガホンをとったテイラー・シェリダン。辺境の地で起こる異常事態、それに対峙する人々、そこに見いだされる崇高な精神のきらめきを描かせたら右に出るものはいない“名手”である。

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ストーリーテリングが異常に巧みなので、冒頭から観客の体は前のめりになり、物語に驚くべきスピードで没入していく。そして前作「ウインド・リバー」は静寂と冷気が支配する雪山が舞台だったが、本作「モンタナの目撃者」は真逆の山火事が主な題材。映像の派手さや迫力は前作と比べるまでもなく、だからこそ、できる限り大きなスクリーンでの鑑賞をおすすめする。

また、ただ緊迫感がみなぎるだけでないのが本作の優れたポイント。描かれるドラマの興奮と感動も、他の作品にはない妙味を湛えている。究極の状況にさらされたハンナは、過去の“救えなかった”トラウマと向き合い、「今度こそ助ける」ことを固く誓う。ろくな武器はないが、ただ“なすべきこと”に突き動かされ、灼熱の森林で暗殺者と対峙する様子は、名状しがたい感情を観客の胸に宿らせるのである。

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【映画ファンは絶対に好き】登場人物にフォーカス!
暗殺者に最強妊婦…主役以外にも最高キャラが多数登場

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最後に、筆者がこの映画を語る上でどうしても外せないと感じた要素をお伝えしたい。魅力的なキャラクターばかりだが、なかでも特に筆者が興奮した二組の登場人物に言及していく。マジで最高なやつらが活躍しており、映画ファンであればあるほど好きになると思う。


●2人の暗殺者…プロ中のプロが、プライドを捨てて襲いかかる

ジャックとパトリックの2人組の暗殺者。普段は証拠も何も残さず手際よく任務を完遂するが、今回は違った。コナーの父親の執念に負け、目撃者であるコナーを取り逃がしてしまう。組織の上司と思しき男に「後がないぞ」と釘を刺され、少年を殺害するため手段を選ばず襲いかかってくる。

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平時は本当にスマートなプロフェッショナルが、自らのミスで逆に追い詰められ、ほとんどパニック状態(彼らは気がついていないが)で追いかけてくる、というのがとても良い。存在感はひたすら不気味で、この1年で鑑賞した映画のなかでは最も優れた悪役に思えた。悪役が素晴らしいと、相対する主人公たちも輝きを増していくと痛感させられもした。

経験豊富なリーダー格・ジャック役は、「ゲーム・オブ・スローンズ」のピーター・“リトルフィンガー”・ベイリッシュ役で知られるエイダン・ギレン。サポートに徹するが“爪”を隠しているように見えるパトリック役は、「マッドマックス 怒りのデス・ロード」でニュークスに扮し異様な魅力を放ったニコラス・ホルトが担う。

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●アリソン…究極最高キャラの誕生、妊婦なのに暗殺者とガチバトル

街の保安官イーサン(ジョン・バーンサル/「ウインド・リバー」では短いながらも鮮烈な存在感!)の妻で、妊娠中の女性。あることから事件に巻き込まれ、危機的状況に陥るが……。

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筆者はこのキャラの活躍を観て、ガッツポーズしながら雄叫びを上げそうになってしまった。鑑賞中にとっていたメモを見返すと、「アリソン最高! 最高! あー! 最高!!!!!!!!」とだけ書いてある。語彙力が終わっている。

演じたのはメディナ・センゴア。ロサンゼルスを拠点に活動する女優だが、日本ではまったくの無名である。しかし今後、彼女の名前と顔を見る機会が増えるかもしれない。そう直感するほど、このアリソンというキャラはすさまじかった。

どうすさまじいのかを詳述すると野暮なうえにネタバレになってしまうので、これ以上の具体的なことは何も言及しないでおく。ぜひ映画館へ足を運び、アリソンの雄姿に驚き、筆者と同じように「最高だ」と感じてもらえればと思う。

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