「知っているようで知らないこと。」かば はるたろうさんの映画レビュー(感想・評価)
知っているようで知らないこと。
1985年。大阪西成のとある中学校。荒れる子供達と真っ正面から向き合う教師達。実在した蒲先生をモデルにあの時代のリアルを描いた力作。
新任女性教師に啖呵を切る不良少年。「ここには部落、在日、沖縄しかいない。お前は何だ」と。それはきっと魂の叫び。彼らこそ自分が何者なのかを知りたかったに違いない。差別の本質を知らぬ者に平等を語る資格などないと思い知らされる。私達はちゃんと知らなければならない。
重苦しいテーマのはずなのに先生達はいつも明るく決して焦らず本当の意味で子供達を見守っている。それでも要所要所に発せられる言葉の重みや沁みるエピソードに何度も涙が出た。教え子の未来の為に振り下ろした拳はいつからただの暴力にすげ変わってしまったのか。ありがとうと声を詰まらせた母親の想いはいつからただの時代錯誤になってしまったのか。
ジャージに身を包んだチャー子が倒れこんだ生徒に立ち上がれ!と檄を飛ばす。立ち上がってこの差別にまみれた世界に自分の足で踏み出せと。
私は生まれてからずっと大阪で生きています。残念ながら今でも西成地区にはマイナスイメージを持っている人が多いです。正直私もそうです。ここには私の知ってる西成がありました。そしてそれ以上に私の知らない西成がありました。
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