劇場公開日 2022年1月28日

「保護司という職務ではありながら、一線を越えてしまうほどの佳代の優しさが心の傷を癒す!!」前科者 バフィーさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5保護司という職務ではありながら、一線を越えてしまうほどの佳代の優しさが心の傷を癒す!!

2022年2月17日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

「ビッグコミック」で連載されている漫画の実写化作品ではあるが、漫画自体が東野圭吾の短編のようなテイストであることから、映像化しても、ほとんど違和感ないし、地味眼鏡スタイルを最近よく観る有村架純にはハマり役。

ドラマ『前科者 −新米保護司・阿川佳代− 』の3年後という設定ではあるが、基本的な情報は冒頭で説明が入るため、観ていなくても理解することはできる。ただ、 佳代のモチベーションや信念が構築された過程や、主要キャラクターのバックボーンほ知るうえでは、観ておいた方が良いだろう。

特に佳代が保護司になって、一人目の対象者みどり(石橋静河)との友情関係に深みは増すだろう。

今作では、ドラマの中では直接的に描かれず、断片的にフラッシュバックするだけに留まっていた佳代の過去も描かれている。連続殺人事件が並行して起きることで、ドラマと比べて、全体的にサスペンス色やエンタメ色が強く、その中で佳代の過去に経験した事件のことにも大きく触れていくことになる。

こちらもざっくりとしか語られていなかった、佳代が保護司になった理由にも、直接的にリンクしていく。

公務員という枠組みではありながら、同時にボランティアの立場である保護司。ほとんどが年配で、生活に余裕のある人が行うことでありながら、佳代の場合は、コンビニでアルバイトをしている。

あくまで職務という立場上でも、どうしても感情移入してしまい、介入し過ぎてしまう、境界線がゆるい佳代ではあるし、そこは若く保護司としての経験も薄いということも作用しているとは思うが、ドラマの3年後という設定においても、その境界線のゆるさはそのままである。

その職務では無い優しさを感じるエピソードの数々が重なりあっている作品でもある。

工藤誠(森田剛)の物語がメインであり、もう一人の主人公と言っても過言ではない。工藤を通して、救えたはずだったのに、行政や警察の手から漏れてしまった人たちの行く末を描いて、保護司は必要だと感じさせる一方で、保護司の元に辿り着く前に、救えるような社会にならなければ、負の連鎖は終わらないことも痛感する作品だ。

ネタバレはできないが、連続殺人の被害者には、ある共通点があって、その理由も心をえぐられるようなものだが、特にリリー・フランキーが演じている男を殺そうとするシーンに注目してもらいたい。

非情に人を殺していた犯人が、ためらい涙を流すシーンは、どんな関係性であっても、子どもは親のことを怨み切ることができない悲しさが一瞬で伝わるシーンとなっている。

バフィー吉川(Buffys Movie)