「コンビニ店長だってシフトの穴埋めが大変」前科者 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
コンビニ店長だってシフトの穴埋めが大変
森田剛はかつて『人間失格』(2009)で中原中也を演じたことがあったという意外性。調べてみると、宮本亜門の舞台『金閣寺』では主役の溝口も演じているという。どちらも阿川佳代(有村架純)の自宅の本棚や中学時代の図書館で登場してくる書だ。「殺す、殺す」「お前はなぜ生きてるんだ」と走り書きがしてあった中原中也詩集が妙にインパクトがあったのです。ちなみに彼女の本棚には志賀直哉全集が収められていたり、その下段の「星の王子さま」の隣に江戸川乱歩の「怪奇四十面相」!!何か意味があるに違いない。
全国で52500人と定められた保護司の仲でで20代女性とは珍しい。しかもコンビニ店員というユニークなところが面白いドラマ。wowowドラマ版では概ね3人の元受刑者の物語があり、最初に登場する斉藤みどり(石橋静河)が更生し、そのまま3番目の薬物中毒の田村多実子のエピソードでも活躍する。対象者には必ず「おかえりなさい」と出迎え、心に寄り添う保護司として活躍するのですが、特に田村パートは泣けたなぁ。石橋静河がとにかく最高!
ドラマから引き続き、牛丼とラーメンは使われてましたね。人とのコミュニケーションで何かといい触媒となる食事。しかし、阿川佳代の過去が映し出される度にラーメンはかなりきつい思い出となっていた。保護観察対象者にとっては聖母のような存在ともなる若い保護司。成長物語ともとれるドラマ版から、彼女の苦悩と生きがいを感じる出来映えとなっていました。
人を生き返らせると佳代が言う「更生」。うまくいかないときは「あ”ーーっ」と叫びながら走る佳代。低音から優しい高音までを使い分ける有村架純の演技はこれまでの作品の中でも最高峰ではないのか?と思わせてくれた。それはまた強さと弱さの二面性をバランス良く表現している。弱さがあるからこそ元受刑者が頼ることができる・・・
容疑者となってしまった工藤誠の物語だけではないのも魅力の一つ。佳代の初恋と、凄惨な過去。自分を生かせてくれた人にどう償えば良いのか。人は強い動物じゃないのだ。どんな職業を選んだところで必ずピンチは来るものだ。自分の信念・使命によって足を踏ん張って立ち向かうことが必要となることを教えてくれる。命をもらった恩人に対しても、犯人を更生させていたら死なずに済んだこと。だから、保護司になって誰も死なせない!贖罪とも思えるほどの天職となった佳代ではあったが、初恋の相手でもある刑事(磯村)との関係がまたややこしい。体を許すことだけじゃ償えない。それでも落書きを消したことで、ある意味救われていたのだ。第四の殺人を阻止したこと。弁護士(木村多江)にも気持ちが伝わったこと。全てがその確執を消し去ったのだと信じたいラストだ。感涙。
TVドラマ『真犯人フラグ真相編』ではヅラ疑惑を明らかにした正名僕蔵でしたが、それもやっぱり詐欺行為でした・・・よね。で、気になってドラマ版の本棚シーンを見直してみたのですが、「怪奇四十面相」は見当たらなかった。やっぱり獄中からの手紙とか、そんな意味が含まれていたのかも。
Kossyさん、こんばんは初めまして。
こちらこそたくさん共感いただきましてありがとうございました。
ご丁寧にコメントもありがとうございます😊
Kossyさんのレビューこそ多方面からの視点で書いてくださって何度も頷きながら拝読しました。
実際どうなのかは知りません。
どなたかのレビューで、若い女性の一人住まいに男性が入り二人きりになる事の安全性は大丈夫なのか?というのを目にしました。私も気になっていました。
疑う事になるのかどうか?ですが、
自宅に二人だけ、というのは疑問が残ります。
この作品は、森田剛扮する役柄の人物を
とことん信じ逸れそうだったら逸れさせず罪を犯させないという信念を持ったエネルギー溢れる保護司との交流をしっかりと見ていく作品なのですね。これがテーマだから、若い人にしたのでしょう。
ありがとうございました。
また今後ともよろしくお願いします🤲
今晩は。
私はTVドラマは観ないのですが、(除く:BSの時代劇)”全国で52500人と定められた保護司“は、初めて知りました。
流石でございます。では、又。
kossyさん
お気付きかもしれませんが、あのページの詩は『汚れちまった悲しみに』だったんですよ。
あまりにも悲しい事件が、佳代にとっては汚れ=穢れとしてあのラストまで拭えなかったのだと解釈しました。
私はあの図書館が、いつか返ってくるという図書館利用者たちへの信頼から、背表紙の番号と本棚のスペースを空けて待っていたのが(真相はただ気付かなかっただけ⁈だったとしても)、意外と心に響きました。
冷静になって考えれば、いつまで空けておくんだというクレーマーもいたかもしれませんが…😅